[税務・経営最新情報]第14回:95%ルールの改正

 消費税に関する平成23年度税制改正のうち、今回は、年商5億円超の事業者に影響が生ずる取扱いについて、お届けしたいと思います。

[改正内容]
 課税売上割合が95%以上の場合に課税仕入れ等の税額の全額を仕入税額控除する制度については、その課税期間の課税売上高が5億円(その課税期間が1年に満たない場合には年換算)を超える事業者には適用しないこととする。(消費税法第30条関係)
(注)上記の改正は、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から適用する。(附則第22条関係)

 これは、いわゆる95%ルールというものの改正です。
 日本の消費税の納税計算は、課税売上に係る消費税から仕入税額を差し引いて計算します。この場合の仕入税額とは、原則、課税仕入のうち、課税売上に対応しない課税仕入部分は含められない仕組みです。実際に仕入税額を計算する際には、個別対応方式か一括比例配分方式のいずれかを適用して計算をします。
 個別対応方式とは、課税仕入を課税売上にのみ対応するもの、その他の売上にのみ対応するもの、共通して対応するものとに区分して仕入税額を計算します。そのため、事務負担が重いのが特徴です。一方、一括比例配分方式の場合には、課税仕入に係る消費税額に対して課税売上割合を乗じて仕入税額を計算するため、個別対応方式に比べて事務負担が軽いのが特徴です。
 
 95%ルールとは、簡単にいうと、ほとんどの売上が消費税の課税売上ならば、仕入や経費の課税仕入もほとんど課税売上に対応するものになるでしょうから、事務負担の軽減を考え、課税仕入の全額を控除をしちゃいましょう、というものです。この“ほとんどの売上が消費税の課税対象”のボーダーラインが95%です。

 95%ルールを適用した場合、仕入税額として課税仕入が100%控除できてしまうため、課税売上に対応しない課税仕入部分まで差し引けてしまう(一般的に“益税”と呼ばれています)問題が発生してしまいます。

<例>
 課税売上 4,000(税抜)
 非課税売上 200
 
 課税仕入 3,780(税込)
  (課税売上に対応する課税仕入 3,675)
  (その他の売上に対応する課税仕入 105)

 本来の計算方法:
  仕入税額…(個別対応方式を適用した場合)3,675×5/105=175
  消費税 … 4,000×5%-175=25

 95%ルール適用の場合:
  課税売上割合… 4,000÷(4,000+200)=95.23… ∴95%ルール適用可能
  仕入税額  … 3,780×5/105=180
  消費税   … 4,000×5%-180=20

 本来は25である消費税の納付が95%ルールを適用すると20になります。つまり、5の益税の恩恵を受けていることになります。

 この益税を事務負担軽減のため仕方がない、と割り切れる数値か否か、という点に着目した場合、どうお考えになるでしょうか。今後2桁台へと消費税率が上がったとすれば、さらに益税が増えることになります。果たして許容できると言い切れるのでしょうか。

 このような益税の問題に関して、以前より複数の学者などから指摘がなされてきました。そして今回の改正で、この制度の趣旨である“事務負担の軽減”の対象となるものの規模を限定することになり、その規模は5億円をボーダーラインとして改正されました。

 この改正の適用開始は、平成24年4月1日以後に開始する課税期間からとなります。
 改正後、5億円超の課税売上高の事業者は、仕入税額は個別対応方式か一括比例配分方式かいずれかの方式を用いて計算することになります。特に、一括比例配分方式を選択適用した場合には、2年間強制適用になるため、適用するか否かの検討は十分行う必要があるでしょう。

※写真は、宮城・石巻での震災復興ボランティア活動の模様。

PROFILE

小森裕史(こもりゆうじ)
1974年、東京都生まれ。
府中市の本村会計事務所に勤務。
税理士・中小企業診断士として、中小企業の経営を支援。
<本村会計事務所 http://www.motomura-tax.jp/