[特別インタビュー]現代女性のセックス観とは
今後のラブホテルにおいて、女性視点のラブニーズの具現化は、重要なカギとなる。1996年に、日本で初めて女性が経営する女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を立ち上げ、女性のセックス観に関する多数の著書もある、北原みのり氏に現代女性のセックス観を聞いた。
保守化が進む女性のセックス観
――『アンアンのセックスできれいになれた?』(朝日新聞出版)を昨年8月に出版。『アンアン』のセックス特集から、女性のセックス観の変化を社会的な背景も含めてまとめられました。この本を書かれたきっかけは。
北原 1989年の特集「セックスで、きれいになる」は、高校を卒業したばかりの私にとって本当に衝撃的でした。「セックスいいじゃん、きれいになるじゃん」という明るさ。セックスの話なのにきれいでお洒落。女性もセックスを利己的に楽しんでいいんだという女性目線。世界観が変わりました。
それから20年、2009年の特集を見たら、驚くほど保守化していた。男に愛されたるためのセックス、彼に喜んでもらうためのセックス……。性体験は低年齢化し、女は肉食化しているといわれながら、女性にとってセックスが楽しいものではなくなっているのではないか。いつからそんなふうに変わってしまったのか。それで70年の創刊号から読み返してみたのです。
――70年代以降の、女性のセックス観の変化とは。
北原 70年代は、いまよりもずっと処女が大切という価値観が強かったし、奔放なセックスに対する抵抗感もあった。そこでの「もっと自由にセックスしていいんだよ」というメッセージは、いま読んでも、信じられないほど斬新で刺激的。そして、80年代になると、時代の代弁者として読者目線でエロく明るくセックスを語りはじめて、「セックスで、きれいになる」につながっていった。
それが、97年に「愛あるセックスだけがあなたをきれいにします」という方向に変わってしまった。援助交際が社会的問題になりはじめ、東電OL事件が起きた年です。80年代の「女性も気持ちいいセックスをしよう」というメッセージが消えてしまった。それ以降、男に愛されるための「技術特集」になってしまった……。
――いまの若い女性は、自由を放棄してしまっている……。
北原 自由はいらない、と言っているのではなく、もっと保守的な価値観。ラブホテルでお金を使って楽しいセックスをするよりも、お金は将来のためにとっておき、家で彼とまったり過ごすほうがいいという価値観。刺激的に遊ぶ、自分の身体の欲望のままに楽しむ、そういう価値観がなくなってきていると感じます。
さらに、恋愛そのものが面倒くさいとセックスレス化も進んでいます。恋愛しない、セックスもしない、だからラブホテルにも行かない。歌舞伎町のホテル街を歩いても、若いカップルは少ないですよね。中高年のほうが多いように思います。
――若者のセックスレス化、業界でも危機感を抱いています。とくに草食系男子、生々しく肌を合わせるよりも、ネットでバーチャルで欲望を満たそうとする傾向。若い女性は……。
北原 そんな男と付き合いたいと思う女性はいないですよ。嫌ですよ。だからみんな韓流に走っちゃう。
でも、いまの20代の女の子のほうも、そんなにセックスをしたいとは思っていませんね。性欲の強い子もいますが少数派でしょう。どちらにしてもセックスにお金と時間をかける若者は少なくなっています。そもそもセックスが特別なものではなくなっている。ラブホテルに無理して行くという若者は少なくなっているし、そんな経済力もない。ラブホテルから足が遠のいていると思います。
大人の女性がエロくなれる空間を
――96年に、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を立ち上げられたきっかけは。
北原 女性向けのセックスグッズショップができて話題になっていたので見に行ったのですが、商品自体は従来のもの……。それで、女性向けって何だろうと考えたのがきっかけでした。女性にとってバイブは、ペニス型である必要はなく指型のほうが使いやすい。男のことは考えずに女性目線の商品を考えていこうと思ったのです。前年にインターネットのHP制作会社を起業していたこともあって、当初からネットショップでスタートしました。
――現在、女性向けを謳うセックスグッズショップも増えてきました。
北原 スタートしてもすぐ辞めてしまうケースもみられます。日本のセックスグッズのマーケットというのが、いま、よく見えないんですよ。
主要顧客が40代以上。日本のセックス産業でこういった年齢層がメインとなっているのは、これまでなかったと思います。いまの40歳前後より上の年代の女性というのは、20代からセックスに対する欲望を肯定的に捉えて、そのためにお金も使ってきた。それが40代になっても変わらないのです。
セックスグッズ業界全体でみると、バイブは全体の7割が3,000円以下。3,000~1万円は、ほとんど売れない。残りが1万円以上。3,000円以下で頑張るか、高級路線にいくか。それは、20代を狙うか、40代以上を狙うか、ということにもなる。私のショップは、40代以上のほうが自分が楽しむためにグッズを購入してくださっています。今後、若い人にどう手に取っていただくか、考えています。
――以前のラブホテルでは、セックスグッズがよく売れていました。
北原 みんなラブホテルで買っていましたよね。私も初めてバイブを買ったのはラブホテルでしたよ。
――それがいま、あまり売れなくなっている。ネットで手軽に購入できるからなのか、商品に魅力がないのか。女性に支持されるセックスグッズというのは……。
北原 簡単です。身体にいいかどうか、素材と安全性。そして使いやすいかどうか。台所用品と同じです。見た目のエロさじゃありません。男の欲望をそそる方向でつくられてきたから、グロテスクな形や色になる。実際に使う女性は、そんなことは求めていません。
海外のセックスグッズショーを見に行くとわかりますが、最近では日本のバイブが世界で通用しなくなっているんです。気持ち悪い、と。時代のニーズと大きくズレてきている。男目線でつくってきて、女の意見を聞かなかったからです。
――欧米で人気のセックスグッズとは。
北原 形や色がきれいで、音が静かで、壊れない、そういうのが主流ですね。日本のようなグロテスクなペニス型はほとんどみられません。
――ラブピースクラブでいま売れている商品というのは。
北原 膣トレグッズは人気がありますね。私のショップで発売したのは10年以上前。女性がセックスでもっと気持ちよくなるためにと発売したのですが、現在の若い女の子は、彼に喜んでもらうためにと使っているようです。
最近は、「気持ちよくオナニーしよう」よりも「もっとセックスしましょう」というメッセージを発信したいと思っています。そこで、カップルで使える商品、たとえば質にこだわったマッサージローションの提案などに力を注いでいます。実際に羽根とローションのセットなどはよく売れていますよ。
――最後に、女性が望むラブホテルとは、どんなホテルでしょうか。
北原 清潔で安心して使えることが一番。そして後ろめたさなく入れること。レジャーランド的な楽しさや過剰なサービスよりも、ゆっくり抱き合っていることに集中できるほうがいいですね。
ラブホテルというのは、大人が気持ちよくセックスできる場所です。大人の女性がエロさを感じて、そのエロさを楽しめる空間がほしいですね。ラブホテルは旅館業ですが、セックス産業の意識をもってセックス文化を先導する役割も担ってほしいと思っています。セックスを楽しむことを、プロフェッショナルとして提案してほしいですね。
――女性にとって気持ちのよいセックスとは。
北原 女性といっても一人ひとりみな違いますから、唯一の答えはないでしょう。ただ、言えるのは「男はもっと女の話を聞け」ということ。体験していないことはわからないから、本当に気持ちのよいセックスとは何か、カップルで一緒に探っていくことが大切です。ラブホテルは、そのための空間であってほしい。こんなラブホテルで楽しんでほしいというこだわりを提案していけば、もっと魅力のある存在になっていくと思います。
PROFILE
| 北原みのり (きたはら・みのり) |
ラブピースクラブ代表 1970年、神奈川県生まれ。津田塾大卒業後(卒論は性教育)、日本女子大大学院で教育心理学を学ぶ。 エロ本制作のアルバイト等を経て、95年にHP制作会社を起業。 96年に女性向けセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」を設立。 『アンアンのセックスできれいになれた?』ほか、女性のセックス観に関する著書も多数。 |
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| 掲載 | LH-NEXT vol.11(2012年1月31日発刊) |









