新業態<ビジ・ラブ>へのチャレンジ/HAYAMA HOTELSグループ 代表取締役 土井文博

一般客とカップル客の融合に独自の工夫。開発から出口戦略まで新たな可能性が拡大

 九州を中心に西日本で42店舗を展開するHAYAMA HOTELSグループは、2016年11月、福岡市の繁華街・春吉に「HOTEL 凛」(24室)を新築オープンした。一般旅行客と従来のカップル客の融合集客を目指す“ビジ・ラブ”ホテルだ。同グループ代表取締役・土井文博氏に、そのメリットとは何か、成立させるには何が必要なのかを伺った。

ラブホテルのノウハウは一般客獲得に有効

――“ビジ・ラブ”開発の経緯からお聞かせください。
土井  近年、レジャー・ラブホテルの宿泊稼動の低下が進んでいます。一方、シティ・ビジネスホテルは高稼動。さらに多くがデイユースも実施。しかしデイユースは実際にはそれほど集客できていません。今後の高収益の宿泊施設を考えれば、両者の“いいとこ取り”で、旅行やビジネスの一般客の宿泊を予約で獲得し、同時にカップル客の休憩利用も獲得できる業態が求められことになります。
 ただ、従来のラブホテルでは、楽天やじゃらんなどのOTA(オンライントラベルエージェント)予約が利用できない。さらにイメージの問題もあって一般客の獲得は難しいというのが現実です。一方、ラブホテルの常識的な設備やサービス、例えば、大画面TVに無料VOD、広い浴室にジェットバス、豊富なアメニティ、客室内での食事、ウエルカムドリンク等々は、ビジネスホテル利用者にとって大きな魅力ポイントです。それらのラブホテルの魅力を活かし、ビジネスホテルの集客手法を採用できる業態、ということです。
 利用者の視点からみれば、高級シティホテルなら一般客もカップル客も内容的に満足するでしょうが、1泊3万円以上では手軽に利用できない。一方、1泊1万円前後のビジネスホテルでは客室は狭いし設備も満足できない。この不満足を満たせば、その需要は確実にあると思います。

――今回の「ホテル凛」の概要は。
土井  福岡市の繁華街・中州のラブホテル集積地の一角のビルを取得し、24室のホテルを新築。ファサードはカップル客と一般客の両方への訴求力を考慮し、お洒落ながら遊郭的なイメージを併せ持つデザイン。客室は、表装のデザインはバリエーションをもたせましたが、一般的なラブホテルのように面積や設備の差でのランクは設けていません。全室均一料金が前提。予約宿泊を基本に休憩回転を組み込みやすくするためです。予約自体も、同じ客室が朝食の有無やチェックイン時間により異なる料金になる。そこに客室タイプが加われば膨大なプラン数になってしまい選ぶ側が混乱してしまいます。
 また、コンピュータは今回はラブホテル仕様を採用し、複数のサイトからの予約にスムーズに対応するためサイトコントローラーも採用しています。

――チェックイン・アウトの方法は。
土井  予約の一般客には即座に対面接客することが必要。一方、ウォークインのカップル客にはできるだけ対面時間を短くしたい。そこで、フロントが監視モニターを見ながら対応の仕方を変えています。ウォークイン客用に客室選別機も備えていますが、小型のタッチパネル式モニターでフロントカウンター上にさりげなく設置。客室ドアは電気錠、精算はチェックアウト時にフロント精算機で行なう仕組みです。ただ電気錠は一般客に不評で、4月にカードキーに変更する予定です。

――稼動してみて、難しいところは。
土井  宿泊予約を埋めながら、どこまで休憩稼動を組み込めるか。また、集客力と単価に関わってくる料金変動の仕方。これらは経験がない部分なので、データを蓄積・分析し、そのノウハウの確立を進めています。
 その他、予約の一般客からは、フロアの指定や荷物預かりなど細かな要望もあり現場判断でのフレキシブルな対応が求められます。また、外出時の傘の貸出や傘立ての設置など、細部での想定外の改善点もありました。

データを収集・分析し効率のよい運営を模索中

――稼動状況は。
土井  1月中旬頃から平日でも宿泊が満室になるようになり、3月時点で宿泊1回転・休憩0.5回転といったところ。客単価は1万円強です。
 現在の客層は、平日でカップル客が約6割(観光客が多い)、1人利用のビジネス客が4割。週末はカップル客が約8割を占める状況。インバウンドは週に2~3組程度です。
 現在は、19室の宿泊を予約で販売し、5室はウォークイン客用として夜間の休憩利用とその後の宿泊に対応するようにしています。満室で帰るウォークイン客数・時間帯などのデータを分析し、最も効率のよい比率で臨んでいこうと思っています。
 また、料金の変動に関しては、じゃらんが毎月提供する、エリアのイベントカレンダー(コンサートや学会の開催、韓国や台湾の休日の情報、等)等も参考にしながら調整を図っています。ラブホテルでもこのような料金変動は有効、地域の協会等で取り組んでいくことが必要ではないかと思います。

――事業計画は。
土井  客室面積を約20㎡とラブホテルとしては狭め(ビジネスホテルとしては広め)にして、建築費も抑制し、採算分岐点の売上を850万円/月(1室35万円)に設定して臨みました。安全性重視の計画です。ただ、目標は1,200万円/月(1室50万円)。採算分岐売上はクリアできているので、今後、休憩稼動を伸ばし目標達成を目指します。
 立地を考えれば、通常のラブホテルであれば、この目標以上の売上が見込めます。ただし、ビジ・ラブという業態なら、営業売上以外にさまざまなメリットがあります。まず、ビジネスホテルはラブホテルに比べて流動性が高いことから金融機関の評価額が高い。同規模で2倍程度の違いがあるケースもみられます。また、融資も低金利・長期返済で受けられます。さらに土地所有者が建築する、ファンドを活用するといった開発方法も可能になるでしょう。立地は限定されますが、ラブホテル事業とは異なるビジネスモデルで、新しい事業展開の可能性が広がるといえます。

――今後の展開は。
土井  時期と立地はまだ決定していませんが、2号店を計画中です。今回より広い30㎡前後の客室で70室前後の規模で取り組みたいと考えています。
――“ビジ・ラブ”は、ラブホテルという業態の進化形の1つといえ、ビジネスホテル側からよりもラブホテル側からのアプローチが成功につながるように思われます。今後の「HOTEL 凛」の実績に期待します。

[HOTEL凛・概要]
所在地:福岡市中央区春吉3-14-14
オープン:2016年11月1日
規模:地上4階建・24室
デザイン設計:(株)玄子空間デザイン研究所
建築設計:(株)イスラ
URL http://www.rinhakata.jp/

掲載:「LH-NEXT」vol.32(2017年4月30日発刊)