<NEXT鼎談②: 客室の“商品力”向上に 何が求められるか>

 市場環境が上向き始めてきたとはいえ、レジャー・ラブホテルの利用者人口の減少は続く。将来に向けて、レジャー・ラブホテルは、どのようなホテルづくりが求められるのか。経営・運営・デザインの視点から総合的に考えていく連載企画。今回は、客室をテーマに検討していただいた。

客室の商品力は低下していないか

――レジャー・ラブホテルの商品は客室。近年、その商品力が低下しているのではないでしょうか。
品川 どのような客室が集客力があるのか、正直なところ、いま見えなくなっています。これまで改装時には、私自身、どのような客室にするのかテーマをもって臨んできたのですが……。当社ホテルは、インバウンドやビジネス客ではなく、あくまでカップルユースが主体。それでも、年齢層によるニーズの違いに加えて、現在のカップルは草食もいれば肉食もいる。ちなみに恋愛にまったく興味のない絶食という人種も……。ターゲットやニーズを絞り込み、方向を見定めることが難しくなっているような気がします。
嶋野 一方、コストを抑えて老朽化対策をしようと、地場の工務店等に表装変更を依頼し、マンションの一室のようになってしまうケースも見られます。カップルが足を運んでお金を支払って利用するのは、やはり非日常空間だから。それが失われているホテルが多くなっているのは確かだと思います。
関口 ここにきて改装コストは増加傾向といえますが、それでも従来のような全面改装はほとんどない状況です。コストをかければ圧倒的な商品力のある客室はつくれます。でも、そのコストを回収できる売上が見込めるかどうか。事業ですから、改装の目的は収益。商品力向上を優先させたいが、そのリスクはまだ大きく、費用対効果を重視した取組みをせざるをえないというのが現状だと思います。

次の注目ポイントはベッド・寝具の質

――現在、客室の改装の方向は。
関口 インバウンドを意識したシティホテルなどに“和”を採り入れる傾向は見られますが、大きなトレンドというほどの傾向ではない……。レジャー・ラブホテルでは、デザインの前に、機能性に問題のある客室が意外に多いというのが現実。改装時にベッドとソファ・テーブル、テレビの位置関係といった基本的な部分から見直すことが少なくありません。
 改装の内容自体は、やはり客単価がポイントです。5,000円前後なら、表層がキレイで機能的であればいいと思います。一方、7,000~8,000円以上なら、特別感につながるクオリティが必要。そうなると使用する素材の質も含めてどうしてもコストがかかってしまいます。でも、1室70万~80万円の売上を狙うには低単価・高稼動では無理、高単価が必要です。現在、立地を見誤らなければ、改装の内容次第で高単価・高売上は可能だと思います。ただし、郊外立地では、まだ慎重に確実性を重視すべき状況だと思います。
嶋野 カップルユースのラブホテルとはいえ宿泊施設。いま、ベッド・寝具へのこだわりが重要だと感じています。高品質ベッドがテレビ等で宣伝され、ベッドをセールストークにするシティ・ビジネスホテルも増えています。従来のような高回転が望めない時代、インバウンドで補完できるのは極めて限られた立地と施設。そうなると単価を確保できる宿泊客をどれだけ獲得できるかがカギ。となればベッド・寝具のアピールは重要です。
品川 当社ホテルも単価重視です。立地によっては低価格・高回転で収益をあげる方法もあるでしょう。経営者としては、収益をあげることが最重要テーマですが、やはり仕事の面白さや喜びがなければ、24時間365日の仕事はできません。お客様からのお褒めの言葉があるから、私自身、一所懸命に働くことができています。ですから、お客様に喜んでもらえる客室づくりやサービス、これが原点です。
 そのためには、カップルが楽しく過ごせる客室、とくに一緒にお風呂に入る、映画を見る、食事をしてお酒を飲む……そういった他の宿泊業態にはない内容の向上を常に考えています。とはいえ、現在の高単価志向ホテルは、すでに設備も揃っている、内装も整っていて清潔感もある……。差別化が難しいなかで、次に求められるのは、私も“快眠”だと思っています。ヘブンリーベッドやエアーウィーヴ等の高品質マット。価格が高いのと、低反発と高反発とで好みが分かれるという問題もあり、躊躇しているのですが……。
嶋野 一般的に、筋肉質の人には高反発、痩せている人には低反発ですね。
品川 男性は高反発、女性は低反発、一緒に寝るとなると……。入室してから好みによって選択してもらうことはできないし……。
嶋野 何を選ぶかは難しいところですが、「快眠を考えて、こんなベッドを採用しています」という告知は、訴求力になると思います。
品川 確かに、シティホテル等で「ヘブンリーベッドで気持ちがよいから、寝過してチェックアウトが遅れないように気を付けてください」といったPOPなどを見ると、ベッドに入るときにワクワクしますよね。

――高品質ベッドの耐久性は。
関口 ダブルマットではギシギシ音が出るケースもあるようです。でも、特室に採用すれば確実に特別感につながります。同時に、高品質ベッドを採用するなら、ぜひシーツ等のリネンも高品質で触感のよいものを選んでほしいですね。魅力が倍増します。
品川 枕はどうですか。個人的にはこだわりがあって10種類以上を購入して試しているのですが……。
嶋野 低反発と高反発を用意して貸出している店舗もあります。貸出の枕は気持ち悪いと拒絶される懸念もあったのですが、結構、利用されています。また、標準装備の枕は、ある程度の大きさが必要ですね。小さいと見栄えが悪くて、客室自体がチープなイメージになってしまいます。

遊びの提供の仕方が大切美容・健康アイテムも注目

――客室内の遊びのアイテムが少なくなってきていませんか。
品川 アミューズメント要素としては、音楽とVODの映画……。ただ、当社の一部店舗では、バラエティやアニメ、海外ドラマをリクエストビデオ的にVODに加えて提供していて好評です。
嶋野 遊びのアイテムは導入すればいいというのではなく、どのように遊んでもらうのか、提供の仕方が大切だと思っています。映像で独自のコンテンツを追加するのもいいですね。またVODと大画面テレビを採用しているなら、リクライニングソファでポップコーンを食べながら映画を鑑賞できるような環境をつくって提供する。それが大切だと思っています。
関口 そこで音響にもこだわりたい。音響がよいと同じ映画でも楽しさが違います。浴室も同様ですね。面積があるなら、ソファ・テーブルをおいて楽しく寛げる空間にして提供したい。
嶋野 浴室は、紙パンツと水鉄砲を置くだけでも、遊べる空間になります。遊びの提供の仕方で、客室の楽しさは大きく変わってくるはずです。また、アミューズメントではありませんが、美容・健康系の機器も、楽しい時間につながるアイテムだと思います。
品川 家電量販店や東急ハンズなどに行くと面白いアイテムがたくさんありますよね。当社ホテルでも、少し前はナノケアの美顔スチーマーが好評でした。いま美顔ローラーが注目されていますが、直接、肌に触れるだけに、どうしようかと迷っているところです。
嶋野 私も、同じ危惧がありましたが、実際に貸出すると、結構、利用されています。自分で購入はしないが使ってみたいという女性が多いのかもしれません。嫌だと思う人と使ってみたいと思う人がいるなら、後者優先で、世間で注目されているアイテムは貸出ラインナップに加えたいと思います。
品川 フットマッサージャーも注目アイテム。衛生面の懸念がありましたが、ソックスを一緒に提供するなど、対応は考えられますよね。
嶋野 その他にも、低周波の腹筋ベルトとか、テレビやネットで注目されている健康系・ダイエット系を充実させていこうと思っています。

――4号営業の客室に関しては。
品川 アダルトグッズは、持帰りよりも使捨て感覚なのか、低価格品のほうが販売数は多い。いま女性向けのショップやサイトもありますが、選択権は男女どちらにあると思われますか。
嶋野 女性受けするお洒落なデザインと、男性視点のエグいデザインと両方揃えています。商品自体というよりも、定期的に新商品を入替えることが販売につながりますね。ただ、電マなども提供の仕方を重視。ポーチに入れるなどでお洒落に、そして使いやすいように延長コードやロングケーブルタイプで提供するようにしています。一方、SM的な仕掛けや造作は少なくなってきていませんか。
関口 客室数が多いホテルでは、何部屋かにミラーや拘束器具を採用するケースもあります。ただ、ベッドから見えないスペースに設けることが基本。でも設けるのなら、しっかりと淫靡な雰囲気をつくりたいと思っています。
品川 そこは男女の感性の差ですかね。一般の女性にとっては、やはりソフトな雰囲気のほうがいいと思います。
――全面改装ではなくても、客室の商品力向上手法は数多くあることがわかりました。ありがとうございました。

PROFILE

VLGグループ 専務取締役 品川尚子
(しながわ・ひさこ)
「HOTEL VILLA GIULIA」など東京・神奈川で3店舗を経営。女性の感性を活かした積極的な経営で繁盛店づくりに邁進。
㈱トラスター 代表取締役 嶋野宏見
(しまの・ひろみ)
関東を中心に30店舗を運営管理。ホテル歴25年以上のキャリアを活かした運営力で顧客満足と利益確保を両立。
㈱Hale Design 代表取締役 関口達也
(せきぐち・たつや)
2004年に現設計事務所を設立し、堅実な設計と柔軟なデザインで数多くのレジャー・ラブホテルを手掛ける。一級建築士。
掲載 LH-NEXT vol.28(2016年4月30日発刊)