対談:設計デザイナー&経営者 ㈲東和 代表取締役 加登啓司・㈲デコラボ 代表 佐々木智美

<郊外ホテルの改装>
お客様視点で定期的に追加投資女性視点のイメージ構築を重視

㈲東和 代表取締役 加登啓司 
㈲デコラボ 代表 佐々木智美

 昨年7月、千葉・富里でリニューアルオープンした「HOTEL Firstwood富里店」。郊外立地・12室の小規模ホテルながら改装後は、新規客も増加し売上も向上。経営者の㈲東和代表取締役・加登啓司氏と、デザイナーの㈲デコラボ代表・佐々木智美氏に、改装への取組み方を伺った。

老朽化した客室の提供はお客様に失礼

――加登社長のホテル歴からお聞かせください。
加登 ホテル経営は20年前からです。当時、コンビニを経営しており、多店舗化を図ろうと土地を探していた。そのなかでホテルの売り物件に出合い、ホテル経営者に紹介したところ、自分で経営すれば面白いよ、と。まったくの素人でしたが、その経営者のホテルを見させていただいたら、たくさんのお客様が入っている。これは面白い事業ではないかと思った。さらにコンビニも同様ですが、24時間営業という形態は商売として魅力があると思っていましたので、取得を決断。少々改装して営業をスタートしたところ売上は一気に2倍になった。当時は、改装の効果はすごく大きかったですね。

――その後、店舗数を増加されていく。
加登 1からのスタートで資金力もありませんでしたから、10~12室の小規模ホテルを取得し、その後にまた隣接する同規模のホテルを取得して2店舗を一体として営業するといった取組み方でした。現在は、千葉県内の3か所で5店舗となっています。

――その間の売上の状況は。
加登 平成19年の飲酒運転の罰則強化の影響からはじまり、風営法政令改正、東日本大震災、長引くデフレと、逆風が続き、事業を開始した当時と比べると売上はかなり低下しています。
佐々木 市場環境が厳しくなってきても、加登社長の店舗では、定期的な追加投資を続けてこられていますよね。
加登 私たちの商売は、綺麗な客室を提供することです。それができなければ、商売として、お客様に失礼だと思っています。

――改装等の追加投資の周期は。
加登 本当は3年に1度のペースで何らかの追加投資を続けたいのですが、現在は5年に1度のペースになってしまっています。ただ、維持管理をしっかりと行なっていないと5年は持ちません。さらに維持管理ができていても5年経てば、お客様は飽きてしまいます。その対策が必要です。

――定期的な追加投資の内容は。
佐々木 同じ千葉県内といっても、地域で客層も周辺ホテルの状況も違います。その都度、加登社長と相談しながら対処していきます。
加登 杖をついて来店されるご高齢のお客様のいる店舗もある。それならバリアフリー化をどのように図ればよいか……。そういったお客様の動向を見ながら検討していきます。

コストを抑えながら女性に評価されるデザインを

――「Firstwood富里店」の改装の経緯は。
加登 平成13年に取得し改装してオ
ープンした店舗です。その改装から佐々木先生に依頼するようになった。
佐々木 当時は、郊外ホテルによくある派手な色の外観。客室も従来のラブホテルイメージのギラギラ感のある内装。当時の私は、ホテルデザインの経験がわずかでしたが、もっと女性に好まれるデザインのほうが集客できるのではないかと思っていました。
加登 私自身も、いわゆるギラギラしたイメージを変えたいと思っていた。そこで佐々木先生の柔らかなデザインと方向が一致したのだと思います。

――昨年の改装内容は。
加登 最初の改装以降、イメージが大きく変わる改装はしてこなかったので、常連のお客様の飽きを解消し、新規のお客様も取り込めるような改装が必要な時期でした。
佐々木 まず、ロゴマークのデザインを変更し、ファサードのイメージも大きく変更しました。あまり余裕のない敷地ということもあって、入りやすさ出やすいさを重視して各種サインの見直しも行ないました。
 一方、客室は、既存部分を活用しながらコストをできるだけ抑えたイメージチェンジを進めた。例えば、ベッドヘッドの壁面はワンポイント的なデザインを施し、他の壁面はシンプルに。ただ、シンプルといっても、空間の表情をつくるために色の使い方の工夫は必要です。そして照明等の工夫で低照度でも心地良い空間を目指しました。

――ホテル側からデザインの要望は。
佐々木 加登社長と話をするなかでイメージをまとめてプレゼンし、そこから設備も含め細かな具体化をディスカッションしていく、という流れです。
加登 レジャー・ラブホテルのデザインというのは、女性に好まれることが一番大切だと思っています。佐々木先生の改装後は、スタッフの女性陣が真っ先に「綺麗になった!」と喜ぶのです。スタッフが魅力を感じるホテルということも重要だと思っています。

――4号ホテルとしての演出等は。
佐々木 客室全体は明るく清潔な雰囲気で、そのなかで天井にはミラーがあるといった、女性の嗜好を重視しながら、4号だからできる演出も取り込んでいます。
加登 取得したときはミラーを多用したホテルでした。それらは、いわゆるラブホテルのギラギラしたイメージにつながるので、私自身は好ましくないと思っています。でも、実際にそういった客室を好むお客様がいますから、すべて撤去するのではなく一部残して使用しています。

――改装後の状況は。
加登 新規客も増え、売上も20%以上アップしています。

――今後の取組みは。
加登 限られた商圏で集客する商売ですから、リピーターが重要です。刺激的なホテルは新規客の来店を促すことはできるでしょう。でも、2回、3回と続くかどうか。それよりも宿泊施設として快適で綺麗な空間を持続する。そのほうが幅広いお客様に長く利用していただけると思っています。
佐々木 今後、さらに高齢化が進むなかで、高齢者にとって利用しやすいホテルとは何か、デザイン面、機能面から考えていきたいと思っています。
加登 一方、若者層の利用は減少しています。少子化とか草食化といった要因もあるでしょうが、やはり若者の求めるイメージとそぐわなくなっているようにも思います。以前、アメリカで本格的なモーテルを見たとき、家族が旅行で訪れ楽しそうに利用していた。日本でも、そのような利用ができるモーテルをつくりたいという想いがずっとあります。これは息子の世代に託したい夢ですね。

〈掲載LH-NEXT vol.20(2014年4月30日発刊)〉