設計デザイナーに聞く――いま集客に直結する訴求力とは

㈱ユニックス 代表取締役 近藤俊大
㈲デラックスダブルデザイン 代表取締役 二石誠也 

 利用者数の減少が続くレジャー・ラブホテルが、まだまだ多い。現在の利用者が“このホテルに行きたい”と思う魅力とは何か。リニューアル時に付加すべき訴求力とは何か。㈲デラックスダブルデザイン代表取締役・二石誠也氏と㈱ユニックス代表取締役・近藤俊大氏に語っていただいた。

事業への取組み方が生んだ店舗格差

――現在の市場をどのように見ていますか。
近藤 きつい言い方になりますが、1強9弱といった状況に向かっているように思われます。厳しい経営環境下でも、売上を伸ばし事業を拡大している企業もあります。そういった企業は、不況の中でどうすれば集客できるか、売上がつくれるか、従来以上にさまざまな経営努力をされている。融資もどうすれば受けられるのか懸命に取り組んでいる。この数年の事業への取組み方の差が、現在の店舗格差につながっているのではないでしょうか。

――直近の状況はいかがですか。
近藤 現在、売上をつくる要素として、運営力の占める割合が高まっています。スタッフもキレイに掃除をするだけでよいという時代ではない。しかし、売上低下にともない経費削減のために人件費を抑えようとするホテルが少なくありません。他業種では、お洒落なカフェなどは時給1,000円以上、パチンコ店は1,600円。時給を上げて優秀な人材を確保する方向です。しかし、ホテルは、仕事の質が年々高くなっているのに、いまだに800~900円。経営者と改装の相談をしていると、改装内容よりも優秀なスタッフをいかに確保すべきかといった議論になってしまうことも多いですね。
二石 とくにこの数年、追加投資を控え経費削減を優先した結果、20年前に戻ってしまったようなホテルも少なくない……。ネットの書き込みには、「客室が汚い」「ゴミが落ちている」等々。これでは、やはりお客様が離れてしまいます。こういったホテルが増えていることもあって、追加投資ができて確実な運営ができているホテルにはお客様が集まっています。売上も前年比増を示しています。
近藤 改装をしたくてもできないホテルも多い。融資が難しいと言われていますが、融資を受けるためには定期預金をする、きちんとした決算書を用意する等々、計画的な取組みが必要。突然、融資を申入れても、それは難しい。
二石 運営力の重要度が高まっているとはいえ、基本的には装置産業。継続的な追加投資がないと、老朽化に加え設備面でも時代遅れになってしまう。テレビやネット環境など一般家庭のほうが進んでしまっています。いま圧倒的に時代を先取りするパワーがない状況……。資金の問題もありますが、何をしたいのか、経営者に明確な意思が必要だと思います。

限られた予算を最大限に活かすには

――最近のリニューアルの傾向は。
二石 全面改装ではなく数室を改装して様子をみたいという経営者が多い。数室の改装では、売上は大きくは回復しませんが徐々に上向く。それを確認して1年後に他の客室も改装する。そういったケースが多くなっています。ただ、築後20~30年の建物では劣化した設備配管等への対応が必要となり、限られた予算では内外装や設備導入など新しい魅力の追加まで手が回らないこともあります。

――限られた予算での重視点は。
近藤 客単価1,500円の3回転と、4,500円の1回転、売上は同じです。値下げは後でもできる。改装時には当然ですが適正な単価で集客できる内容を目指します。そのためには、浴室・洗面・トイレの水まわりを新しくすることが不可欠。客室の表装がキレイになっても水まわりが老朽化したままでは、お客様は評価してくれません。
二石 新・旧が入り混じると、旧が余計に目立ってしまうことも多い。浴室はコストがかかるし“まだ大丈夫”と。でもそれは経営者の見方であり、お客様はそうは思わない。客室は商品なのですから“まだ使える”“もったいない”の発想では売れません。あくまでお客様がどう見るか感じるか、それが基準です。浴槽を取替えても数十万円。総予算が限られていても、予算配分を検討すれば捻出できない金額ではないはずです。

――とくに重視している設備は。
近藤 テレビは60インチ以上。それにVOD。家庭にない魅力がひと目で分かる設備でしょう。
二石 最近のホテルは、設備も同じ、改装時の予算のかけ方も同じ。その結果、横並びになってしまっている……。限られた予算内で、優先順位を決める際に、その地域で、そのホテルで、お客様が何を求めているのか、明確に把握して臨むことが、やはり重要です。

4号営業ゆえの演出と郊外立地の対策

――政令改正以降、4号営業が主流に。4号営業ゆえの演出については。
二石 コンセプトルームとして4号営業だからできる空間演出も行なっていますが、以前からラブとビジネスといった区分けは考えていません。その地域、そのホテルに必要な客室空間は何かということだけです。基本的には、お客様の多様な嗜好に応えるために、1つのホテルの中に多彩なバリエーションは必要だと思っています。
近藤 私は、4号営業なら、鏡張りやSM的な設備など“エロさ”の演出を積極的に取り込みたいという考えです。照明も工夫して、浴室のピンクのスポットライトやベッド上の色の変化する照明などで“エロさ”の雰囲気を出したい。地域の条例によりますが、変更届で4号営業ゆえの空間演出が可能な地域は、かなりあります。“エロさ”を好むお客様はどの地域にも必ずいて、そのニーズは根強い。しかし、すべてのお客様が望んでいるわけではありませんから、マーケットの状況をよく捉えて臨まなければなりません。

――郊外立地のホテルは厳しい状況が続いていますが……。
近藤 郊外立地は厳しいと言われますが、反対に、いまがチャンスだと思っています。周辺ホテルも10~15年にわたり改装していない地域もある。そこで改装ができれば、確実にお客様を獲得できます。ただ、実施時期の見極めは重要。数年前に郊外立地のホテルから改装の相談があり、現地に行ってみると商圏内の数軒のホテルが改装した直後。そこで改装をしても効果は薄い。5年待って改装しましょうと。それで昨年改装したところ、大幅な売上向上につながった実例もあります。

――エリアの人口自体が減少している地域もありますが……。
近藤 親から受け継いだホテルを維持し、さらに子供に継がせたい……気持ちは分かります。しかし、マーケットの状況は大きく変わっています。既存店の存続にこだわらず、業態転換や売却して別のホテルを取得するといったことも選択肢のひとつとして考えるべきではないでしょうか。
二石 業界全体の市場規模は縮小しても、レジャー・ラブホテルのニーズは決してなくならない。いまの問題は、老朽化が進み、お客様に“汚ない”というイメージをもたれてしまっているホテルが少なくないことです。その結果、チェーン展開のビジネスホテルが新規オープンすると、そちらにお客様が流れてしまう。今後、ビジネスホテルはさらにカップルユースを重視してくる。そういった状況を考えれば、今後、デザインや設備など、ビジネスホテルにはないラブホテルの魅力をさらに充実させていくことが求められます。その魅力があれば、他の宿泊業態には絶対に負けないと思っています。

(季刊『LH-NEXT』vol.17掲載)