女性デザイナーに聞く―女性視点のホテルデザイン/㈲デコラボ 代表 佐々木智美

コストを抑えながらも「古臭さ」を排除しアラフォー世代が「女の子」に戻れる空間を

■いま求められるデザイン
 この数年、リーマンショックや政令改正問題から改装を見送り、老朽化が進み集客力が低下するホテルが増えているように思われます。今年に入り改装の動きが活発化してきましたが、厳しい経営環境下、低コストかつ高い効果が改装の大きなテーマといえます。
 集客施設である以上、老朽化の対策は不可欠です。ホテルとして、ストレスなく利用できる空間・設備を備えることは基本ですが、とくに女性客に支持されるためには、見た目のイメージも重要です。古臭いイメージを排除し現代的なセンスを感じさせることが必要。コストを抑えながら、それを実現するには、予算配分つまりコストのかけどころがポイントです。
 まず、低予算であっても、コンセプトの再構築は重要です。明確なコンセプトがあれば、ハード・ソフトの両面から効率よく訴求力の創出ができます。そして、ホテルの顔であるファサードは重要。外装全体を改装できなくても入口周りのイメージアップは図るべきです。カラーリングと照明を変更しただけでもイメージは一新します。注意したいのは看板等のホテル名。昔の書体やロゴマークは古臭いイメージを与えるので、この見直しは必要です。
 客室内の低コストでのイメージチェンジも、カラーリングと照明がポイントです。ただし、客室のバリエーションは、リピーターの集客力につながりますから不可欠。明確なコンセプトを設定し、何色かベースカラーを決めて臨めば、ホテル全体の統一感と各客室のバリエーションが両立できます。

■現在女性への訴求力
 高額な素材や華美な造作デザインを施さなくても、女性に好印象を抱いてもらうことは可能です。安心や優しさを感じてもらえる空間は、時代の変化や利用者の年代に関わらず求められる要素でしょう。
 また、ファサードから客室まで、動線に沿ってコンセプトに基づいた統一感のあるストーリー演出は、女性の好感度アップにつながる要素です。ポイントとなる場所に、コンセプトに沿ったアイキャッチを施す。大がかりなオブジェではなくても「素敵、可愛い」と感じるちょっとした演出があれば、女性の印象に強く残ります。
 客室内では、古臭さや汚さという印象につながりやすい、薄暗いイメージの解消が必要です。ただし、照明の照度が高ければいいという問題ではありません。最新のコンパクトで綺麗に発光するLEDの照明器具や、柔らかな間接照明を使うことで、嫌な薄暗さではなく心地良い低照度の空間になります。コストを抑えた内装デザインの手法としては、客室内の壁3面はシンプルに、ベッド頭部側の壁面だけにワンポイント的なデザイン演出を施すといった手法も有効です。シンプルといっても、すべて真っ白な空間では清潔感はアピールできても空間の “表情” がなくなってしまう。私は “色” を重視しますが、色の使い方は空間の表情をつくるうえで重要です。ビビッドな色を複数使ってもコーディネートされていれば、ドギツサではなく心地良さを感じさせます。客室の印象は、什器・備品やファブリックも含め、客室を構成するすべての要素がどのようにコーディネートされているかで決まります。小物やファブリック等を変更する際は、男性の経営者や支配人は、ぜひ、女性スタッフの意見を聞いて、女性の感性を活かしてほしいものですね。
 また、現在の日本ではアラフォー、アラフィフの女性が元気です。今後、この年代の女性への訴求力が重要になると思います。女性は何歳になっても女の子の気持ちを内包しています。たんに落ち着いた雰囲気ではなく、この年代が「可愛い」と感じ、「女の子に戻れる」ような客室デザインに取り組んでいきたいと思っています。

(季刊『LH-NEXT』vol.16掲載)