[特別インタビュー]「金融円滑化法」終了の影響と 今後の融資環境は どうなるのか?

 「金融円滑化法」(中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律)は、2008年のリーマンショック以降の景気悪化に対して、中小企業の資金繰りの安定を目的に09年12月に施行された。
 融資返済の猶予から“モラトリアム法”とも呼ばれ、当初は2年間の時限立法だったが、中小企業の業績は改善されず東日本大震災の影響もあり、1年間の延長となった。それが2013年3月31日で終了となる見込みだ。
 この金融円滑化法の終了によって、どのような影響が予測されるのか。またその後の融資環境はどのように変化するのか。レジャー/ラブホテル分野への融資にも積極的に取り組む、あすか信用組合の融資推進統括責任者である業務推進部部長・木村弘氏に聞いた。

不良債権処理の進行で新しい融資の動きも

――金融円滑化法が来年3月で終了の見込みですが、その影響は。
木村 金融円滑化法が来年3月で終了するのは、ほぼ確定的だと思います。金融庁は、終了に伴う対応について「出口戦略については、各金融機関で責任を持って取り組んでください」というスタンスですので、各金融機関とも終了を前提にした対応を策定していると思われます。
 そもそも金融円滑化法は「金融機関が融資返済の猶予等で中小企業の再生をサポートしなさい」という目的でした。各金融機関はその目的に沿って対応してきたわけですから、法の施行期間が終了したからといって、すべてとは言えませんが、即座に対応を変えるということはないと思います。
 しかし、債務者のなかにはどうしても事業継続等が難しいというケースも出てきています。それらに対しては金融機関は相応の処理をせざるを得ないということになります。
 とはいえ、とくに当組合をはじめ、信用組合や信用金庫は、地域金融機関として地元の事業者と密着して取引しており、金融円滑化法が施行される以前から、事業者の状況に合わせて返済条件の変更など個別の対応をしてきています。ですから法の終了によって、極端に対応が変わることはないと思います。
――本来、不良債権化する物件が処理されないまま残ってしまった、との見方もありますが。
木村 金融機関にとって、金融円滑化法の施行期間は、不良債権の処理がしにくいという側面があったといえます。それらのケースも含めて、終了に伴って不良債権が表面化してくることが予想されます。サービサーとも話をしますが、来年からは例年と比較すると任意売買や競売となる不動産が増加してくると思われます。
――金融円滑化法の終了に伴い、融資の環境は変わりますか。 
木村 一般論としては、金融機関にとっては、不良債権の処理が進むことでそれらにかかるコストや時間が削減され、その分、新しい融資への動きがしやすくなるともいえます。
 ただし、各金融機関の状況や体力、および方針によるところもあり、一概には言えません。ある金融機関では、不良債権の処理が順調に進み、積極的に新しい融資に取り組むところもあるでしょう。反対に、不良債権を数多く抱え込み処理が進まず、前向きに動けない金融機関もあると思われます。
 これも一般論ですが、金融機関は資金供給をすることが社会的な役割と考えております。資金を提供しさまざま事業が活性化され、雇用が生まれ、それに伴って税収が増えていく。その社会を活性化するサイクルの入口にあるのが、金融機関の役割と考えております。当然、当組合もその使命は果たしていかなければならないと考えております。

レジャーホテルへの融資は過去の融資経験の差も大きい

――貴組合における金融円滑化法への対応状況は……。
木村 ホームページでも公開していますが、これまでに受付けた貸付の条件の変更等の申込みに対しては、原則的にはお客様の申込みに沿う方向での対応を行なってきております。
 業種別のデータは公開しておりませんが、レジャーホテル事業者の取扱いは比較的少ないと思います。従前からレジャーホテルの融資に対しては、回収の面からみても非常にリスクが低い融資先と認識しています。
――レジャーホテルは一般の金融機関からは融資を受けるのが難しい状況が続いている……。
木村 一般的な金融機関の取扱いとしては、4号営業店舗については、やはり風営法該当施設ということで、融資が難しい状況にあると思われます。しかし、旅館業法の店舗であれば、通常のビジネスホテルやシティホテル、旅館と同じ範疇とも考えられます。それでもなかなか取扱いが難しい状況なのは、金融機関の担当者が旅館業法のレジャーホテルについても、実態としては4号営業のホテルと同等であるとの認識をしている側面があるのかと思われます。
 その一方、現在、金融機関においても融資の競合が激しくなってきています。今後、旅館業法のレジャーホテルに対しても目を向け、良好な融資先との理解が進むことで、融資に参入してくる金融機関が増えてくる可能性はあると思います。
――貴組合は、レジャーホテルにも積極的に融資に取り組んでいますが、融資の際の基準というのは。
木村 基本的には、まず売上げです。売上げから経費を引いたキャッシュフローで返済が可能かどうかが、判断の前提です。返済期間は、建物の状態や事業計画によって異なります。
 また、ホテルの価値は不動産価値と、収益価値の2つを合算して判断しています。不動産価値については土地建物の価格を外部の不動産鑑定士に依頼します。一方、収益価値については、独自の審査シートを用いて、売上げや経費の数値に売上低下の想定や期待利回り等を加えて算出します。いわばホテルの実態価値といえます。現在、当組合では不動産価値よりも収益価値の考え方を優先しております。
――一般的には、不動産価値で判断されるケースが多い……。
木村 他の金融機関が実際にどのような取組み方をしているのかはわかりませんが、一般論として、経験値の低い業種に対してはやはり慎重にならざるをえません。当組合でも初めての業種に対しては、やはり慎重な取組み方となります。
 当組合の場合、レジャーホテルについては、これまで数多くの案件に融資を実施してきましたから、その経験をもとに、ホテルの見方から審査の各種ポイントまでまとめたレジャーホテルへの融資マニュアルができています。それだけに、実態価値を判断しやすく前向きに取り組めるといえます。
――4号営業については。
木村 当組合では連棟型の4号営業への融資実績もありますが、結論から言えば、入口は難しい状態と言わざるをえません。しかし最初から入口を閉ざしているのではなく、個別に相談させていただき判断しております。
 やはり金融機関としては、融資案件に対してさまざまなケースを想定しており、4号営業の場合、売却に伴い旅館業法による営業形態に変更した際にはどうなのか、また、そのためにどの程度の費用がかかるのか、そういったことも検討します。同時に、業歴や売上げ、融資金額や返済期間なども含めて総合的に検討して判断していくことになります。

健全な財務内容と明確なヴィジョンがカギ

――融資を受けやすいレジャーホテルとは……。
木村 まずは財務内容が健全であること。そして経営者が明確なヴィジョンをもって経営に臨んでいること。もうひとつが法令違反がないこと。許認可等に関わる問題はなくても、雇用等における違反などがあると金融機関の対応は難しくなってしまいます。
 また、レジャーホテルへの実績の少ない金融機関から融資を受けようとする場合、家業的な経営よりも、やはり人事管理や施設管理も含め組織的に企業としての経営に臨んでいるほうが、金融機関としては取り組みやすいと思われます。
――最後に、2013年の融資環境の見通しは。
木村 個人的な見解ですが、金融機関の不良債権処理が順調に進めば、各金融機関とも現在よりも積極的に融資に取り組んでくると思います。また、翌14年には消費税が増税されますから、増税前の駆け込み需要もあるでしょう。
 ともあれ、金融円滑化法の終了後、融資の動きが活発化し、レジャーホテル業界はもとより、各種事業の活性化につながってほしいと、私も期待しています。

<季刊『LH-NEXT』vol.14(2012年10月31日発刊)に掲載>