「神田村対談」vol.4

<KOGA設計の「設計・デザイン力」とは>
(株)KOGA設計 代表取締役 古賀 志雄美 vs 店主 湯本 隆信

 1970年代から始まった業界の「設計・デザイン」の“必要性”は、
 1985年のいわゆる“新風営法”施行まで、その「デザイン」は自由奔放に闊歩した。
 もちろん、その自由さを受け入れた背景には、人々の“性の解放”という時代であり、経済の右肩上がりは無視できない。
 しかし、85年の新風営法の施行をきっかけに、「デザイン」は大きく対極へと向かう。
 それを遠い九州から見ていたのが、「KOGA設計・古賀志雄美」だ。
 85年以降の彼の「設計・デザイン」は一挙に開花し、今日までも継続されている。
 「KOGA設計」を俯瞰しながら、今後の集客のための「デザイン」を探っていくことにする。

KOGA設計の系譜 

湯本 業界の“不況”は、多くの設計・デザイン事務所を直撃していますが、いかがですか。

古賀 確かに大変な時代ではありますね。私も、約30年、この業界の「設計・デザイン」をやらせて頂いておりますが、これほどまでに業界が沈んでいる時代もなかったように思います。「失われた10年か20年か」とも言われていますが、むしろ直近では、2008年のいわゆる「リーマンショック」から始まり、「政令改正」問題、そして3・11の「東日本大震災」と続いたこの流れは、業界に大いなる打撃を与えたことは、間違いないですね。

湯本 この現状を打破するためにはいくつかの方法があると思いますが、基本的には、「需要と供給」のバランスが崩れた。つまり、施設(ホテル)数の過多ということになりますか。

古賀 それも否定はできないでしょうが、この業界の歴史をみれば、ゼロにはならないでしょう。ということは、何らかの方法がある、ということですし、現実に高売上をキープしているホテルもあるわけですから、あまり悲観的になる必要もないということですよ。「創意と工夫」が求められていると思いますがね。

湯本 そんな中、業界の気になる問題の一つに「設計・デザイン」があるように思います。
 簡単に業界の「設計・デザイン」について流れを振返りますと、1959年(昭和34年)に「モーテル」の第一号が誕生したと言われています。もちろん、郊外ですね。町中では、「逆さクラゲ」・「連れ込み旅館」といわれていた時代です。まだまだ、「設計・デザイン」というには、程遠い時代です。この時代からモータリゼーションに向かうわけですね。業界が「設計・デザイン」の必要性をより以上に意識したのは、1973年前後でしょう。この年に「目黒エンペラー」が誕生しているわけです。その「設計・デザイン」「装置」は「奇抜さ」を増し、よりエスカレートしていって迎えたのが、85年の「新風営法」の施行ともいえます。この85年を起点に、「奇抜さ」は対極ともいえる「高級感」「本物志向」等に移行します。いうなれば、「シティホテル」や「リゾートホテル」の設計・デザインに向かい、「政令改正」が施行されて今日を迎えているわけです。レジャーとしての、ラブとしての「空間の魅力」さが失われ、シティやリゾートホテルとの差別化がなくなっている。
“新風営法”から26年、「政令改正」も施行され、4号営業ホテルは、警察庁の発表によれば、6,450店舗(震災及び取下げで実際はもう少し少ないか)といわれている。この4号営業店を、より魅力のある、集客の上がる店舗にするためにはどうするべきか、そこを、伺いたいのですが。

古賀 私が、この業界に参入したのは、今から30年程前です。1980年前後でしょう。九州で当時、主流となっていた、いわゆるコテコテの「ラブホテル」を設計していました。ものすごく違和感を覚えた記憶があります。何店舗かのホテルをやらせていただいて、東京に出てきたわけですが、都内で初めて設計したホテルが、五反田のホテルです。84年頃ですね。“新風営法”が施行される前です。そのホテルは、部屋を真っ白にし、よりお洒落にしたわけです。当時のラブホテルの逆をいったわけですね。物凄く反対されました。しかし、オーナーさんはOKしてくれたわけです。結果は、凄い集客で売上の多さにびっくりしたほどです。なぜ、業界の主流に反してこのようなホテルを設計したのかと言いますと、当時の右肩上がりに向かいつつある経済、それを予感させるテレビドラマがあったわけです。「トレンディドラマ」です。「トレンディドラマ」は88~90年が全盛ですが、その先駆けとなったのが、83年の「金曜日の妻たちへ」でした。ここに感じるものがあったわけです。その後、85年の「新風営法」となるわけですが、私の設計では、鏡の問題だけですかね。殆ど気にしませんでしたね。当時のキーワードは、「マンション」「自分の部屋」から「リゾートホテル」「海外旅行」「高級車」となり、90年代には「ラグジュアリー」となっていくわけです。
 レジャーホテル・ラブホテルの「設計・デザイン」の基本は、時代であり、経済であり、トレンドの読み方でしょう。この10年ほど、「テーマ性」の強いホテルがでてきましたが、テーマが強ければ強いほど、陳腐化の速度を速め、短命になっていることは、理解できるでしょう。奇を衒えば衒うほど、短命になるわけです。それと「テーマ性」の強いホテルは、大都会なら通用するでしょう、しかし人口減となっている地方では、新規客の掘起しができなく、一巡して終わってしまうわけです。
「住遊空間」の設計・デザインは、下地となる建物そのものをしっかりと造ることです。下地ができていれば、内装はいつでも変更することができるわけですから。ホテル業のビジネスは10年・20年と続くわけですからね。これは、基本中の基本です。

集客アップのためのデザイン力とは

湯本 そんな中で、4号営業ホテルの今後のデザインについては、どのように考えていますか。

古賀 集客減となっているホテルの共通項は、単に不況ということだけではなく、「改装」のスパンが空き過ぎていることも、憂慮すべきですね。以前なら、5~7年以内には「改装」、「メンテナンス」はしていましたが、最近では、10~15年になっているホテルも少なくありません。これでは、集客も覚束なくなります。

湯本 しかし、オーナーさんの意見としては、「ちょっと位の改装では、集客のアップどころか、維持するのがやっと」という声も聞きますが。

古賀 それは、何をどのように変えたかということになると思います。もちろん、単に金をかければよい、ということではなく、利用者を飽きさせない工夫が必要ということです。
 先日も中国の工場を見てきました。日本にはなんでもあると思いがちですが、日本に入っていない建材・素材はいくらでもあります。そういう物を使えば、安く、利用者を満足させる部屋創りができるでしょう。

湯本 具体的には、どういうことですか。

古賀 今回、中国で見つけてきたのは、一辺が3~4㎝の正方形のタイル状の物です。素材は硝子であったり、瀬戸物であったり、ミックスされていたりですね。これらを壁面や家具などにちりばめることも可能ですし、光を当てることによって、多様な空間にさせることもできます。おそらく、日本にはまだ入っていないでしょう。久しぶりに、面白い素材と出会ったと思っています。

湯本 しかし、高いのでは……。

古賀 それが、驚くほど安いですね。この素材を使えば、部屋の雰囲気は一変し、飽きの来ない部屋のデザインになります。もちろん、建物の下地がしっかりしていることは、重要ですがね。だいたい、ルーム当り50万から100万円ほどでイメージを変えることができるでしょう。さらに、集客のアップ、売上のアップのためには、「物」だけではなく、トータルの運営が必要ということです。

湯本 かつて、「設計・デザイン」力で集客の70、80%といわれていた時代がありました。今は、どのくらいですか。

古賀 あったとしても、20%でしょう。「装置産業」から、「サービス業」になりつつあるともいえるわけですが、如何に新鮮な感動を提供できるか、ですね。4号営業の場合は、特にそう思います。この閉塞感から脱却するためにも、攻撃的な営業が必要ということです。新法ホテルであっても、4号営業ホテルであっても、これからの「設計・デザイン」のキーワードは、以前経験しましたが、「ゴージャス」感と「ギラギラ」感です。ただし、時代に即応した建材・素材の吟味は必須ですね。

湯本 「政令改正」の枠のなかで、地域によって異なる条例の規制のなかで、時代を先取りした「4号営業ホテル」のニューデザインを、期待します。

(季刊『LH-NEXT』vol.10<2011.10.31発刊>掲載)