「神田村対談」vol.3

<ホテル売買の現状>
㈱トータルプランニング 代表取締役 脇田克廣 vs 店主 湯本隆信

 レジャーホテル・ラブホテルの売買が増加している。
 その背景にあるのは、やはり“不況”ということか。
 さらに、先の「政令改正」によって、「4号営業ホテル」が、ある存在感を増している。それは「4号」の設計・デザインということだが……。
 レジャーホテル業界に長く携わり、現在はホテルの売買についても実績のある、㈱トータルプランニングの代表取締役・脇田克廣氏に、現状を聞いた。

ホテル経営から不動産部門を 

湯本 ホテル売買の現状を伺う前に、御社の業界との係わりを、説明願いますか。

脇田 そうですね。私も他のレジャーホテル・ラブホテルのオーナーさん同様、ホテル経営から入っております。昭和64年、平成元年ですね。ホテルを経営しているうちに、どういうわけか皆さん方から、オープンのやり方や運営についての相談が増えてきたわけです。なぜなら、昭和60年に「新風営法」が施行されて、規制がかかっていたわけですね。あまりにも相談事が多いので、メンバーズシステムにしたのですが、それでも間に合わず、「コンサルティング」部門を立ち上げたということです。

湯本 当時は、新しい規制枠の中での新規オープンとなると、今回の「政令改正」同様、各地域によって、行政の対応にだいぶ違いがありましたね。条例はともかく。

脇田 そうです。今回の「政令改正」でもそうですが、地域間の温度差が激しいですね。ある地方・地域では簡単に旅館業法に則って営業のための許可が出るのに、ある地方・地域では、「小規模ホテル イコール ラブホテル」と烙印を押されてしまう。これは、ある種の偏見ですね。

湯本 次に「運営受託」部門を立ち上げていますが……。

脇田 平成に入ると、「バブルの時代」を迎えるわけですね。ここには、いわゆるホテル経営の経験者とは違った、投資家の方々も多く参入してくるわけです。そこで、「運営受託」という部門が必要になった、ということです。

湯本 「運営受託」と一言でいいましても、いくつかの方法があると思いますが。

脇田 大きくは、「家賃」「歩合」「固定」といったところでしょうか。いずれにせよ、「貸し手」と「借り手」の信頼関係がなければ、長続きはしないですし、「運営受託」会社にそれなりのノウハウがなければ、ビジネスとしては成立しないですね。ことに経済が、景気が右肩上がりであるならば問題はないのですが、売上が下がっている今日では、ノウハウがない限り、必ず問題を起こすといっていいでしょうね。

湯本 そうしますと、今現在で直営店舗が何店舗で、運営受託店舗は何店舗になりますか。

脇田 直営店舗は11店舗、運営受託は7店舗、合計18店舗です。

湯本 さらに、これまで「コンサルティング」は何店舗ぐらいされたわけですか。

脇田 「コンサルティング」の場合、明確に何店舗ということは難しい問題がありますね。といいますのは、形態が画一ではないということです。あるホテルでは、オープンのための企画だけ。あるホテルはオープンのための従業員教育・指導。あるホテルでは、オープンから数カ月という具合で、千差万別ですね。したがって、「一般労働者派遣事業許可」も取得しております。

湯本 それらを含めると、どの位になりますか。

脇田 全国、100数十カ所でしょうね。大変な数です。

今後「ホテル売買」は増加傾向

湯本 これらの経験が、今度は「ホテル売買」という不動産業も加わった。

脇田 そうですが、実はその前に、今から12、13年前に「レジャーホテル・ラブホテルの証券化」ということがありましたよね。その時に、「宅地建物取引業許可」を取得しております。そして「第二種金融商品取引業登録」もしております。

湯本 なるほど。これら一連の活動は「レジャーホテル・ラブホテル」をキーワードにすべて関連してくる。

脇田 結果的に、そういうことになりますね。

湯本 今、「ホテル売買」の動きはどうですか。

脇田 昨年だけの実績は、10数件になっております。今年は、もっと件数が増えるものと思われます。といいますのは、やはり“不況”がそのようにしていることもありますし、世代交代の相続の問題、従業員不足に見られるような運営・経営の難しさ、施設の老朽化等々によるでしょうね。一方、買い手側も少ない数ではないですね。

湯本 「ホテル売買」で仲介として難しい問題はなんですか。

脇田 多くの場合、買い手側は、ホテルを取得して、「ホテル営業」を続けるということです。単に、ホテルを買って更地にして、転用するということは、ほんの稀なことですね。
したがって、「ホテル売買」は単純な不動産売買とは違った意味合いをもってくるわけです。例えば、ホテルを営業していて、「売る」ということが従業員に知れた場合、現場のモチベーションは下がるでしょう。そうすると、ホテルの中の空気が緩んで、ホテル利用者・お客様に気づかれ、集客が落ちるわけです。

湯本 そうなると、売りづらくもなる。もう少し、具体的な例はいかがですか。たとえば、今、全国に「レジャーホテル・ラブホテル」は約8,500~9,000店舗あります。そのうち「4号営業ホテル」は約6,500店舗。つまり、70%以上が「4号営業ホテル」です。買い手側としては、「4号」と「新法ホテル」、どちらを望むわけですか。

脇田 多くは「4号」ですね。と言いますのは、さきほども言いましたように、買い手側は継続した営業がしたいがために、「4号営業ホテル」を希望するわけです。特に、ホテル経営の経験者の方ですね。ところが、ここに若干、問題が生じてくる場合があります。それは、融資をする金融機関は「4号営業ホテル」を望まない場合が少なくないわけです。そうなると「4号」を外して「新法ホテル」にした場合、特に地方の立地などは客の入りがまったく違ってきます。これが、悩ましい問題ですね。

湯本 「看板」を優先するか、「フロント対面」を優先するかと言った場合、立地・環境(周辺競合店舗)は大いに考慮する必要があるでしょうね。ところで、「4号営業ホテル」を買収する場合はM&A(株式移転)ということになるわけですか。先の「政令改正」時には多くの経営者の方々が新会社を設立しましたが。

脇田 そういうことになります。M&Aならば、不動産取得税・登録税等は必要ありませんから。「4号営業ホテル」はこの方法でしか、継続営業はできないでしょう。
湯本 そうなりますと、企業には目に見えない法的拘束力のある書類、たとえば債権・債務なども、存在する場合もあると思いますが。

脇田 それが、仲介業者のノウハウでもあるかも知れませんね。単に不動産の仲介者ではないとも言えるわけです。「4号営業」か否か。これだけとってみても、「風営法」の知識がなければ、後々、トラブルが発生した時に対応はできないでしょう。単に資格だけでは、円滑な仕事はできないということです。私どもも、成約するまでに、半年、1年と時間がかかる場合も少なくはありません。

湯本 「4号営業ホテル」にしろ、「新法ホテル」にしろ、買収してから営業を継続する場合、現在導入されているシステム・設備・機器等これらがすべてホテル所有者のものばかりであるならスムースに移行もできるでしょうけど、個々に所有者が分散されていたら、大変な作業になりますね。

脇田 そうです。ですから、トラブルなく営業を継続して行えるようにするためには、業界の事情を十分に知識として持っていることは、必須ですね。さらに、「ホテル売買」には競売やら任売といったような案件も少なくないわけです。これらの場合、多くは「人間の整理」なども入ってきますから、知識以上のものが必要になるわけです。

湯本 今後「ホテル売買」は、ますます増加傾向にあるということですね。それに伴って、トラブルも増えてくる可能性も少なくはない、ということ。十分に配慮する必要がありますね。
ありがとう、ございました。

(季刊『LH-NEXT』vol.10<2011.10.31発刊>掲載)