[リニューアル効果の検証]利用者視点で細部まで見直し 地方郊外のビル型店舗を再生

「HOTEL SEEN~OCEAN TERRACE」(愛知県武豊町)
K’sグループ 代表取締役 近藤政人
スタイルアソシエイツ 代表 唐鎌孝行

愛知県下で12店舗を展開するK’sグループは、知多半島東部に位置する武豊町に立地するホテルを取得、2015年4月に「HOTEL SEEN~OCEAN TERRACE」としてリニューアルオープンし、事業計画を上回る好調な売上で推移している。地方郊外の新法ビル型ホテルをどのように再生したのか。同社代表取締役・近藤政人氏と、改装を担当したスタイルアソシエイツ代表・唐鎌孝行氏に伺った。

的確なマーケティングで商圏の実需を把握し具現化

――改装の経緯からお聞かせください。
近藤 このホテルを取得したのは2013年。1995年に新築された地上5階建て30室のホテルで、取得時の売上は1か月1室10万円以下に落ち込んでいました。立地する武豊町は人口4万人強。しかし隣接する市町を含めると商圏内人口は約25万人います。そこにレジャー・ラブホテルは4店舗・150室。運営を強化し改装を施せば、中長期的に収益が確保できるホテルと判断して取得しました。
 取得後は、運営の変更だけで1室約30万円に売上が回復。事業収支上は十分な数字でしたが、お客様のアンケートをみると、やはり設備が古いといった指摘が多かった。中長期的な売上と一生懸命働いている現場スタッフのモチベーションも考えて、改装に踏み切りました。

――改装の方向は。
近藤 スタイルアソシエイツさんへの改装依頼は2店舗目。前回、2013年の東郷町ホテルの改装時、内容を検討するなかで、私の発想と180度違う提案がいくつかなされ、それが納得できる内容。その結果、従来の当社ホテルとは異なるテイストに改装でき売上も好調に推移しています。その実績から今回も依頼。ただ、地方郊外という商圏の状況を考慮すると、大規模改装をしても70万~80万円といった高売上は不可能。改装後売上を40万円と想定した計画で、改装費2億円強のなかで、どのような改装をするか、検討に入りました。
唐鎌 衣浦港に面したロケーションを活かし「大人の隠れ家リゾート」をコンセプトにという共通認識で、近藤社長と細部を詰めていきました。建物は、配管は活かせましたが、空調、ボイラーの変更、浴槽の入替えは必要事項とし、他の部分でコストをいかに効果的に配分するかを重視しました。
 まず、外装は、壁面の塗装、照明のライトアップ演出、幹線道路から視認できる部分のグラフィック演出等で、コストを抑えながら、ひと目で改装したことがわかる変更を施しました。
近藤 客室に関しては、周辺ホテルではシンプルなユニットバスが多かったこともあり、浴室を重視。できるだけ大きな浴槽を入れたいと思い、唐鎌先生と1室ずつエプロンをどうするか、洗い場の面積が狭くならないか等々、見た目の印象と使い勝手を細かく検討していきました。
唐鎌 さらに、1室にベランダを活用し光る浴槽を採用した半露天風呂を設置。また、面積の広い3室に岩盤浴を追加し、2室にあったサウナを岩塩サウナに変更。そのほか洗面にはハリウッドライトを採用し、水周りはリゾートイメージにつながる魅力的な内容になったと思います。

――客室の内装デザインは。
唐鎌 客室全体をリゾート風に演出すると、素材も含めコストが膨らんでしまいます。入室時に目線が行くベッドヘッド周りに演出を集中し、間接照明とグラフィックを活用することで、コストを抑えながら視覚的に好印象を与える内装をデザイン。また、客室入口の段差をなくして床面をフラットにすることで狭い客室の圧迫感を解消。もう1つ、K’sグループは飲食サービスも大きな魅力。見栄えと飲食時の使い勝手を考慮し、ソファ・テーブルはできるだけ大きなサイズを採用しました。

開放的なリゾート感とプライバシー確保を両立

――地方郊外におけるロビー・フロントの重視点は
近藤 インパクトのあるラグジュアリー感とリゾート感を提供しながら、プライバシーも確保できるロビーを検討。地方郊外では、戸建や連棟式がまだまだ強い。とくに中高年のお客様にはビル型でもプライバシー確保の配慮が不可欠です。
唐鎌 ロビー自体は面積が広く、出入口は2方向。そこで、中央にウォーターパールの噴水を設けてラグジュアリー感を打ち出すと同時に、お客様同士がバッティングしない動線を設定。ウエイティングスペースも開放的ながらお客様同士の目線が合わないようにハイバックの仕切りを設けました。
近藤 また、唐鎌先生の提案で、ロビーでウエルカムアイスクリームサービスを実施。ドリンクバー導入のホテルはあってもアイスクリームバーはまだほとんどありません。ディッシャーの清潔な置き方などの工夫も必要ですが、季節に関係なく好評なので、各店舗での導入を進めています。

――改装後の状況は。
近藤 改装後1年、1室売上は50万~60万円と、事業計画を上回る状況で推移しています。現在の市場環境は二極化が進行し、改装をして運営も充実しているホテルにお客様が集まる状況です。ただ、改装といっても老朽化した部分を改修し単に綺麗になったというだけでは売上回復は難しい。原点に返って、あくまでお客様視点で、選ばれるホテルづくりが必要です。それが市場の活性化にもつながると思います。同時に、地方郊外でも商圏の実需を捉えて臨めば、事業計画を満たす売上は確保できると思っています。
唐鎌 設計デザインの立場で言えば、改装の目的は、あくまで経営者の収益の確保。商圏とホテルの現状を見極め、改装費を最大限に有効活用できるコスト配分が重要と考えています。そのなかでポイントとなるのは、やはりお客様の肌が直接触れる、水周りやベッドの魅力強化だと思います。
近藤 改装後は、新規客も増えています。同時に、中部国際空港が近いこともあり、インバウンド客も増加しています。昨秋から海外予約サイトへの掲載をはじめたのですが、今春から増加傾向で、現在、1か月で30組程度の利用があります。ホテルとしては電気錠を開放しiPadで外国語に対応しています。とくにインバウンド客を増加させるための施策は行なっていませんが、レジャー・ラブホテルの経営者として、海外からの旅行者に「日本のラブホテルを利用したらとても良かった」と思ってもらいたい。シティ・ビジネスホテルよりもベッドも大きく浴室も広く各種設備も充実している。外国人のカップル旅行者に訴求力は大きいと思います。また、現場スタッフも、ルーティン業務のなかでの刺激となり、接客が面倒だとは感じておらず、モチベーションアップにつながっています。

《掲載LH-NEXT vol.28(2016年4月30日発刊)》
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