[リニューアル効果の検証]高売上ながら危険シグナルを察知、 今後10年を見据えた改装に取組む

「HOTEL mesa」(岡山市南区)
㈱アドバンスゴールド 代表取締役 竹田泰進
㈱カーサデザイン事務所 代表取締役 八河 洋

 昨年11月、岡山市にリニューアルオープンした「HOTEL mesa」。地方都市郊外立地ながら1室1か月約80万円の高売上を維持してきたなか、さらに本格的な改装を実施した。その意図と改装内容を経営者の㈱アドバンスゴールド代表取締役・竹田泰進氏と設計デザインを担当した㈱カーサデザイン代表取締役・八河洋氏に伺った。

宿泊減少を危険視し将来を見据えた改装

――「HOTEL mesa」の改装の経緯からお聞かせください。
竹田 当社は、岡山県内で6店舗を経営。「HOTEL mesa」は2007年に取得して改装オープンした地上2階建・21室の連棟式ホテルです。1989年に建てられ地域1番店を誇ったホテルでしたが、取得当時の売上は1室1か月40万円程度に低下していました。しかし、郊外とはいえ幹線道路沿いで、躯体が堅牢で客室も広く天井も高い。ポテンシャルの高いホテルであり、改装次第で魅力的なホテルに再生できると考え、全面改装を実施しました。
八河 老朽化が進みデザインも陳腐化していたので、現代的なシックでスタイリッシュな方向で、イメージの一新を図りました。
竹田 同時にアメニティや飲食サービスなども充実させ、その結果、集客・売上を大きく回復。翌2008年以降はリーマンショック、政令改正問題等で業界全体が厳しい逆風環境となりましたが、売上は順調に推移し、客単価約7,500円、1室1か月約80万円の売上を維持してきました。

――そのなかで、今回さらに改装に踏み切った理由とは。
竹田 売上は維持できていたのですが、宿泊が減少し始めてきたのです。ほぼ100%だった宿泊稼動が80%台に。これは、この先、売上が低下する明確なシグナルです。融資環境のよい今、今後の10年を見据えて改装すべき時期だと判断しました。
 周囲からは、現在の売上状況で本格的な改装をなぜするのか、と驚かれました。しかし、ホテルの売上は客単価×組数。両方が少しずつ低下していけば、売上はあっという間に半減してしまいます。現在、追加投資を抑え、借入返済を長期化するなどでキャッシュフロー確保、利回り重視の経営手法が多くなっているように思えます、しかし、それでは大胆な改装ができない、本当にお客様が喜ぶホテルづくりはできない。まず、お客様が行きたいと思うホテルをつくり、結果として売上が上がり、借入は短期間で返済していく。この取組み方が、長期的に好循環を継続するうえで重要だと考えています。

遮光・遮音に注力し未体験の非日常空間を追求

――今回の改装の内容は。
八河 五感に訴えるラグジュアリー感を向上させる、というのが基本の方向でした。
竹田 改善したい部分を要望書にまとめて、ひとつひとつ八河先生と検討しました。経営者が無理難題を設計者に提示して、そのせめぎ合いのなかからこそ、本当に魅力的なホテルが生み出されると思います。
八河 今回、目に見える部分での大きな変更は、まず、前回改装でやりきれなかった浴室への動線がよくない客室5室の改善。そして特室2室の全面改装です。
竹田 特室の1室は和室。高品質な建材を使い坪庭も設けコストが掛かりましたが、魅力的な現代風和室に仕上がりました。平日宿泊1万2,800円の最高額の客室ですが高稼動しています。
八河 そして、今回の最大のテーマ、五感で感じる空間の基礎となる、遮光と遮音を徹底的に見直しました。遮音は、壁に遮音ボード等を採用し天井裏に残っていたエアシュータや配線の穴を塞ぎサッシを入替え、エアコンのモーターも変更。遮光も、窓やカーテンをすべて見直しました。
竹田 光の一切ない真っ暗闇を体験できる「ダイヤログ・イン・ザ・ダーク」という施設で、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされる体験をして、ぜひホテルの客室でも、漆黒の闇と無音の空間を提供したいと思ったのです。
八河 まさに未体験の非日常空間です。
竹田 照明を落とせば真っ暗闇になります。完全な無音化は難しいですが、外部からの音はかなり遮音できました。お客様には告知していませんが、従来にない空間を感じてもらうことができていると思います。もちろんカーテン・窓を開ければ開放感もあります。
八河 他にも音にはこだわり、テレビは4K・58~65インチの大画面・高画質に加え高品質スピーカーを採用。ドアにもダンパーを採用して、無音開閉を図りました。
竹田 ただし、トイレや配膳口はドアの開閉が音でわかるように、ダンパーを採用していません。
八河 お客様の行動、心理を細かく分析した取組みです。奇抜な内装デザインは施していませんが、違いは確実にお客様に伝わると思います。

――また、進入路にも独自の工夫を。
竹田 駐車場入口に、車の中から大型モニターを見ながらフロントと会話ができる、いわばドライブスルー型のインフォメーションシステムを独自に構築して設置。1ルーム1ガレージの形態は、プライバシー確保の面で大きなメリットがあります。しかし、お客様は客室内容等を確認できない。それが、あまり利用したことのないお客様にとっては不安感につながっていると思います。その解消が狙いです。
八河 1ルーム1ガレージで、従業員と対面せずに情報の確認ができる。お客様の視点から、業界の常識を見直したシステムといえます。

――改装費と改装以降の状況は。
竹田 今回の改装費は約2億円。改装後は、客単価が8,000円以上にアップし、売上も改装直後の12月は90万円台になりました。ただ、私自身は、売上向上よりも宿泊稼動がほぼ100%近くまで回復できたことが嬉しい。お客様から、泊まりに行きたいホテルとして選ばれているといえますからね。
 現在、若者人口が減少しレジャー・ラブホテルの利用者も減少が指摘されています。しかし、私自身は、将来を悲観していません。ホテルは、お客様にとって「ないと困る」存在です。そこで、闇雲に売上・収益を追求するのではなく、まず、お客様が行きたいと思う、よりよいホテルづくりをすれば、結果として売上は上がります。これはレジャー・ラブホテルでもシティ・ビジネスホテルでも同じです。しかし、レジャー・ラブホテルは、他の宿泊業態よりもお客様に喜んでもらうためのさまざまな手法が駆使できます。だからこそ、経営が面白いし、将来に向けた進化・発展の可能性も大きいと思っています。

《掲載LH-NEXT vol.28(2016年4月30日発刊)》
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