[特別インタビュー]変革の時、 ラブホテル業界の新業態を目指す/㈱ミマコーポレーション 代表取締役 美馬辰也

■2015年総括

――2015年、業界を総括するとどうなりますか。
美馬 大きく分ければ、三つになるかと思います。一つは「売上」であり、それに「人手不足問題」「利用者の変化」といったところでしょう。
「売上」だけを対前年でみれば、多くのホテルは、“微増”とはいうものの“ヨコバイ”あるいは“微減”ではないでしょうか。都内と郊外の差はありますが。なぜなら、若者達は業界からとうに消え、主要ターゲットであった中高年者は、日々年を重ね、今や“高齢者貧困”であり、“老後破綻”をしているわけです。したがって、マーケットは日々縮小しているわけですから、“微増”の背景が理解しかねますね。たとえば、先の成人式時の発表された成人数は、121万人です。この数は、1994年の200万人超えから年々減少しています。したがって、売上については、今後減少が加速することはあっても、減速することは、ないでしょう。さらに宜しくないのは、人手不足による「雇用」問題。いわれるところの「好立地」の変更。的確なマーケティングの在り様。一方、新しい芽がでてきたのは、「女子会」などにみられる、新顧客の出現です。

――しかし、郊外立地であっても、すべてが微減したわけでは……。
美馬 もちろんです。改装・リニューアルしたところ、あるいはイベントを含めた“企画力”等で、それなりに“微増”している店舗もあるでしょう。ただし、適正な再投資で改装しているか否かは、問題が残ります。「金を掛ければ客が来る」時代は、15年以前に終わっています。

――改装しても、客が来ない?
美馬 適正な、投資に見合った改装になっていない、ということです。オーナーあるいは設計家・デザイナーのマスターベーション的改装。マーケティングが十分でない改装。これでは、事業ではないでしょう。利用者がいないところに、高額な再投資をしても、どうでしょうか。もう少し、シビアなマーケティングが必要でしょうね。地域・競合店とのバランスでしょうね。この地域は、どうあっても50万円(ルーム1カ月)しかいかない、そのようなところに何億円も投資する。考えられません。

――業界で、「人手不足」がいわれて久しいですが、どのようにお考えですか。
美馬 恐らく、世間が業界を見る目は、「ブラック企業」ではなく、「ブラック業界」的なイメージが強いようにも思うわけです。これは、残念ながら、長い歴史の中で生まれたもののようにも思いますが。一遍に払拭はできません。業界全体で考えるべきことです。いわれるように、年々上昇する「最賃」(最低賃金)、マイナンバー制の導入によって予想される、「ダブルワーカー」からの労働力不足、高齢労働者の離脱。なかなか難しい問題ですが、はっきりしていることは、「人件費比率」の上昇です。これまで、一般的には、「レジャー・ラブホテル」の人件費比率は、24~25%といわれていましたが、今後は30%を優に超えることになるでしょう。さらに、各種保険も含めた待遇面の改善も必要になってきます。
 対して、レジャー・ラブホテルの利用者のなかにも、2015年は変化が現れた年ともいえるでしょう。若者達の“セックスレス化”はいうまでもなく、問題は利用者の中心であった、「主たる利用者(お客さま)」の「主」が変わったということです。以前の「主」は、「いわゆる不倫やカップル」であったわけです。ところがここに、「デリヘル」が入ってきた。このことによって、“客層と目的”が変わった。
 したがって、これらの三項目から浮かび上がってくる、今年、2016年は、業界にとって楽観はできない年であり、「雇用」においても、変革の年ともいえるかも知れません。

■2016年の市場動向予測

――そうしますと、2016年は明るくはない……。
美馬 2015年の総括の継続からみれば、あまり楽観はできませんが、で、あるからといって、悲観的になりすぎるのも、夢のない話です。現実に、国内旅行者・訪日外客旅行者は存在し、急増しているわけですから。また、昨年から、利用者で目立ち始めたのが、いわゆる「女子会」です。あるホテルでは、女子会が1カ月に10数組も利用されています。まさに“企画力”ですね。もちろん、地域・立地によるところも少なくはないですが。この女子会の存在は、「レジャー・ラブホテル」が、いわゆる“淫靡な空間”としてではなく、“広く・明るく・経済的”であることをアピールするには、絶好の広告となるでしょう。「次にはカレと来たい」或いは「家族で来たい」「旅先で利用したい」ということになれば、大いなる宣伝効果です。さらに、この利用経験が国内旅行者に拡大していけば、業界の位置付けも大きく変わることになるでしょう。その後にくるのが、訪日外客旅行者ということです。したがって、女子会は、「レジャー・ラブホテル」の宿泊業としての、第一の突破口ともいえるわけです。これは、業界の長い変遷のなかで、大きな変革となるでしょう。

■2016年の注力ポイント

――2016年は15年の流れのなかから、大きな売上増は望めない。しかし、新たな“顧客”がみえなくもない。そのためにやることは……。
美馬 私は、以前から考えていたことですが、昨年の利用者の減少ぶりをみると、いよいよ変革の時が来ていることを感じますね。つまり、「ラブホテルではない、ラブホテル」。「ラブホテル業界の新業態をどう捉えるか」です。ラブホテルを否定するものではありません。
 下世話な表現になりますが、“ラブホテルは、ある種の目的だけの空間”ではなく、旅行者、将来的には外客旅行者まで取り込める「宿泊施設」とすべきと考えております。もちろん、そのためには現在のシステムの問題、言葉の問題等々、解決しなければならない多くの課題がありますが、利用者・消費者がいなくなったマーケットにいくらしがみついていても意味はないでしょう。今の売上を支えている、少なくない部分は、いわゆる“デリヘル”でしょう。このような商売が続くと思いますか。2020年の東京五輪・パラリンピックはもうすぐです。そんな時代に“デリヘル”はないでしょう。「レジャー・ラブホテル」は、「旅館業法」に適合した、“安全・安心・清潔”な宿泊施設です。今、話題になっている“民泊”とは違います。民泊はそもそも、簡易宿所にも入らない、宿泊施設とはいいがたい“違法空間”でしょう。そうであるなら、「レジャー・ラブホテル」の空間の方が、遥に「安心・安全」なわけです。
 その「レジャー・ラブホテル」に変革が求められているならば、早急に対応する必要があるでしょうね。
 たとえば、私は安売りに賛成しているわけではないのですが、休憩2回転(4,000円×2)・宿泊1回転(7,000円)とした場合、この売上は、1万5,000円です。ところが、宿泊1組を1万7,000円で売れば、売上もさることながら、利益も違ってきます。3組よりも1組の方が、経費率は下がりますから。今後、私は、「休憩のないラブホテル」をやってみたいと考えております。この種のホテルが全国に500店舗、1,000店舗になれば、業界は全てかわるでしょう。私の心は、そこに移行しつつあります。それが、2016年の変革です。

㈱ミマコーポレーション 代表取締役 美馬辰也
(みま・たつや)
1992年に業界参入。2002年に独立。
現在13店舗を直営。独特の経営論で新業態を論ずる。
インタビュアー 本誌・ 湯本隆信
掲載 LH-NEXT vol.27(2016年1月31日発刊)