新業態<ビジ・ラブ>へのチャレンジ/㈱グランクール 代表取締役 吉田 健

都心店舗に続き“ビジ・ラブ”2号店を開設。現在の宿泊ニーズと事業者ニーズに応える新業態

 関東圏で15店舗を運営管理する㈱グランクール。2009年に都内・芝浦に「HOTEL DOUBLE 芝浦」(14室)をオープンさせ、デイユース稼動も重視したビジネスホテル“ビジ・ラブ”業態として安定した集客・売上を実現。この実績をもとに千葉・船橋に、その2号店「HOTEL DOUBLE 船橋」を2017年3月21日に改装オープンさせた。“ビジ・ラブ”のメリットと成立のポイントを同社代表取締役・吉田健氏に伺った。

既存のカテゴリーに固執せず市場ニーズに対応する業態

――“ビジ・ラブ”という発想の経緯からお聞かせください。
吉田 宿泊施設のなかで、カップル利用に特化し宿泊に加え休憩利用もできる業態として生まれ進化してきたのがラブホテルです。社会の需要を捉え宿泊市場のなかで1つのカテゴリーを形成、定着してきたわけですが、近年、その需要が縮小。その一方で、インバウンドの増加に伴い一般宿泊施設の需要が拡大しています。宿泊施設事業者としては、ラブホテルというカテゴリーに固執するのではなく、需要の変化に対応する宿泊業態、同時に収益性の高い業態に取り組む必要があります。
 もちろん、立地によっては従来のラブホテル路線で今後も高収益が得られるケースも多い。そこでは当然ながら従来路線を推し進めるべきです。しかし、従来路線では収益確保が難しい、あるいは今後に難しくなると予測されるケースでは、新しい業態を目指すことも必要です。

――貴社はすでに都心で“ビジ・ラブ”の実績がありますね。
吉田 2006年に都心の芝浦で、一般ビルをホテルにコンバージョンしました。ビジネス客の宿泊需要が見込める立地ながら、14室と小規模。宿泊だけでは収益性が低い。しかしビジネス街のためラブホテルでは昼のデイユース稼動が期待できない。そこでビジネス客の宿泊をベースに、夜間のデイユース稼動が可能な業態を目指したのです。

――稼動状況は。
吉田 オープン以降現在まで、客単価9,000円前後、2回転弱で1室1か月売上が50万~60万円という安定した売上を継続できています。客室外に貸切利用の露天風呂と岩盤浴を設けるといった差別化を行ないましたが、客室自体は一般的なラブホテルほどのコストをかけておりません。
 現在の客層は、9割が日本人で1割がインバウンド。ビジネス利用の女性1人客が多いことも特徴です。一般的なビジネスホテルより料金は若干高めながらアメニティも豊富でラグジュアリー感があることが女性客に評価されています。それが、カップル客にとって、一般ビジネスホテルよりも訴求力があり、同時にラブホテルに抵抗感のある層も利用しやすい、ということにつながっています。
 宿泊は予約利用がほぼ100%。昨年にサイトコントローラーを採用し、予約販売のOTAサイトを5社に増やしました。手間やコストも含め、すべてウォークイン客のほうが効率がよいことは間違いありません。しかし、ビジネス客・旅行客の獲得のためには、入口を広く複数のサイトから予約を獲得していくことが必要です。

将来の安定売上を見込み業態転換に踏み切る

――2号店はラブホテルを改装してのいわば業態転換。
吉田 1979年に開業した5階建・25室の「HOTEL WILL 船橋」を業態転換し、今年3月21日にオープンしました。築40年弱で老朽化が進みボイラーや空調の設備等も含めて改装が必要な状況だったのですが、市場が縮小傾向のラブホテルとして大規模投資には躊躇するものがありました。しかし「東京ディズニーランド」も近く旅行客の獲得も見込める立地。そこで、芝浦店と同じ方向の“ビジ・ラブ”への業態転換を図ったのです。
 外装は従来のイメージを一新し店舗名も変更。フロント・ロビーは開放的な空間に変更。客室は、内装変更とともにビジネス利用に必要なデスクと椅子も設置し、さらに全体の1/3をツインルームに変更しました。
 コンピュータは、既存のラブホテル仕様を活用し、客室選別パネルは取り除きフロント・カウンター上に小型タッチパネルモニターを設置して対応。VODはファミリー利用の客室にアダルト映像を配信停止できるようにカスタマイズ。料金と鍵の授受は従来からフロント対応だったので、チェックイン・アウトの流れに変更はありません。ただ、フロント係はスーツ着用に変更しました。

――売上の計画は。
吉田 採算分岐を1室1か月40万円として計画していますが、目標は50万円超です。客単価は、エリアの相場感を考え6,000円を想定しています。
 改装前の売上は老朽化もあり1室1か月35万円前後。大幅な売上増にはなりませんが、将来にわたり安定売上が見込めます。また、現在のラブホテルは、アメニティ類の増強や各種無料サービスの実施など、集客対策のコスト増加が続いていますが、この業態であれば、過剰サービス競争からも脱却できます。
 3月末からブッキングドットコムへの掲載を開始し、その後にじゃらんなど国内OTA2社での予約販売をスタートさせます。驚いたのは、ブッキングドットコムに掲載した初日に1日で30件を超える予約を獲得したこと。ラブホテルでは考えられない立ち上がり状況といえます。
 課題は、連泊ニーズへの対応です。芝浦店も船橋店も1泊限定での販売。ただ、芝浦店では電話での連泊要望もあります。それには1度チェックアウトして荷物を預かり、チェックイン時間に再度チェックインしていただく方法で対応。連泊に対応すれば、料金もデイユース稼動分を考慮した設定が必要となり、価格の競争力が低下してしまいます。効率よくデイユースを稼動させるため、宿泊はチェックイン時間前に入室できないことを、HPやOTAサイト上でも明確に告知しています。チェックイン時間前の前延長料金というのは、ラブホテルでは常識でも一般宿泊施設では通用しません。
 “ビジ・ラブ”は、事業者の視点からみれば、以前の高稼動時代のラブホテルの高収益には至らないが、一般ビジネスホテルよりも高収益が得られ、また融資や売却面でもラブホテルよりも有利な条件が期待できる業態、といえます。ただし立地の見極めが必要です。今後、当社関連ホテルでも、将来性を含めてラブホテル営業と収益性を比較検討したうえで、“ビジ・ラブ”として成立する店舗では、業態転換を考えていきたいと思っています。

[HOTEL DOUBLE 船橋]
所在地:千葉県船橋市宮本4-17-2
オープン:2017年3月21日
規模:地上5階建・25室
改装プロデュース:㈱グランクール
URL http://www.hoteldoublefunabashi.com

掲載:「LH-NEXT」vol.32(2017年4月30日発刊)