<NEXT鼎談:次代のホテルづくり⑤>

利用人口減少時代、中高年層の獲得と訴求方法 

 利用人口の減少が進んでいる。とくに若年層の減少が著しい。年代別人口をみると、20代は10年前に比べて20.8%減少、30代は15.6%減少している。さらに若年層は、セックスレス化も進んでいる。将来に向けて若年層の開拓は重要な課題といえるが、その一方、現状の売上確保のために、中高年層の獲得と利用拡大の重要性が増しているともいえる。今回は、中高年の利用をテーマに検討していただいた。

中高年女性にはプライバシー確保が必須

――利用者の年齢層の変化は。
品川 繁華街の渋谷の店舗は、20代~40代が中心でとくに変化はありません。一方、都心を離れた練馬や厚木の店舗は、以前から年齢層が高かったのですが、近年、若年層が減少していることは間違いないといえます。
嶋野 10代、20代は直接的なセックスよりもバーチャルで満足する世代。セックスレスだけではなくカップルレスも進んでいます。一方、中高年層の利用は堅調です。とはいえ、中高年の利用者が増加しているのではなく、20~30年前にラブホテルを利用していた世代が現在も利用している状況。利用世代がそのまま高齢の方向に移動しているだけといえます。
 若年層の開拓は重要ですが、現在の20代はお金を持っていません。この世代を獲得しようと思ったら30分500円といった料金訴求しかないように思います。これでは成り立たない。私のなかでは、利用者として考える若年層は、20代は除外して30代です。
品川 20代はフリーターも多く収入が低い。30代、40代になれば収入も増加。ただ既婚者は遊びに使えるお金は少ない。一方、独身者は男女ともに遊びにお金を使います。しかも、都会ではこの世代の独身者が増えていますから、重要なターゲット層です。ただ、この世代は男女の関係性が変わり、男女の友人同士がお酒を飲んで遅くなったから一緒に泊ろうと、セックスなしでラブホテルを利用するケースもみられます。そういった利用への対応も必要になっていると思います。

――改装の際に年齢層は意識しますか。
関口 改装時には、当然ながら商圏の利用者に関するリサーチもしますが、やはり10代~20代はターゲットにしません。単価が取れませんから。基本的に30代以上を対象にして改装内容を考えています。

――中高年の利用者というのは、どのようなカップルが多いのですか。
嶋野 大まかな印象でいえば、夫婦1、不倫6、デリヘル3といった比率ではないでしょうか。昨年、芸能人の不倫バッシング報道が相次ぎましたが、中高年の不倫は増えていると思います。

――中高年層にとって利用しやすいホテルとは。
関口 ひと口に中高年といっても、中と高では違うと思います。中ならオープンな雰囲気の対面フロントでも問題はない。ただ高になると、従業員や他の利用者と顔を合わせたくない。ガレージでもナンバー隠しが必要。その境目は50代前半くらいではないかと思っています。
嶋野 郊外立地で利用者の年齢層も高いホテルが、開放感のあるロビーをアピールしているケースも見られます。でも、中高年の利用者にとっては隠れる場所が必要。目隠しになる植木が一つあるだけで、入店時の安心感が全然違ってきます。
品川 当社店舗でもクーポンの利用のされ方をみていると、若いカップルは女性でもフロントと顔を合わせることに抵抗感はないのですが、年齢の高いカップルはやはり男性がフロントにクーポンを渡すケースが多い。中高年の女性に対してのプライバシー確保は必須だと思います。
嶋野 男性でも、フロントで俯き加減で目を合わせない方も少なくありませんよ。でも、そういった、ちょっと恥ずかしくてドキドキする感覚、高揚感がラブホテルの魅力とも思うのですが……。それがなければシティホテルと変わらなくなってしまう。
関口 改装時には、やはりプライバシー確保を見直します。ファサードやロビーは、デザインの前に利用者の動線を考えます。入と出がクロスしない動線設定が基本。また、客室選別パネルを設置する場所も、別の利用者が入ってきたときに、隠れることができるスペースを考えて決定しています。
嶋野 ロビーに無料貸出の入浴剤やシャンプー・リンスを置くケースが増えていますが、その置き場所も重要です。フロントから客室に向かう動線上に設置しないと、利用者同士がバッティングしてしまいます。

文字の大きさや明るさ、気配りの一言が好印象に

――運営上の注意点とは。
品川 当社の支配人は3店舗とも30代と若く、インフォメーションやPOPなども、小さい文字でファッショナブルにつくる傾向が強いのですが、練馬の店舗は年齢層が高いので、文字はできるだけ大きくして“高齢のお客様に優しいホテル”を重視しています。リモコンの文字などは小さくて見えにくくストレスになっているはずなので、店舗の案内などはできるだけ見やすく提供したいと思っています。
嶋野 明るさも重要です。薄暗いとインフォメーションは読めないし、食事も美味しくないですからね。
関口 ソファ・テーブルの上部への照明設置は必須です。しかし、コスト優先で照明の数を増やしたがらないケースも少なくない……。
嶋野 さまざまなサービスを実施しているだけに、それらを分かりやすく伝えることが大切です。ロビーに「ご自由にお持ちください」と書いたPOPを添えて設置した無料プレゼント品。若者はためらいなく持っていきますが、高齢の方は躊躇します。そこでフロントが一声かけると、サービスが良くて親切なホテルだと好印象を持ってもらえます。
品川 確かに話し好きな高齢の方は多いですね。ただし、飲食店などでも接客に対してとても厳しい。嫌な思いをしたら二度と行きません。電話対応も含めて、フロントの接客対応の仕方が重要になります。

――ネットの情報発信の仕方では。
関口 高齢でもネットを使いこなしている方は多い。ラインを使っている方もいますよ。
嶋野 高齢者に向けてもネットの情報発信は必要です。ただ、ネットよりもやはり野立て看板が有効。野立て看板はつくり放しではなく、1年ごとに内容を変える。これは年齢層に関係なく集客効果を高めます。

――デザイン的には。
関口 中高年層だから和モダンの落ち着いた雰囲気を好むとは限りません。キラキラ・ゴージャス系が好きな方もいます。海外のシティ・リゾートホテルを体験している富裕層が多いなら高品質ナチュラル系もいいでしょう。ただ、好みは人それぞれなので、1つのデザインテイストで統一せず、バリエーションがあったほうがいいと思っています。

――高齢の利用者として何歳くらいまでを考えていますか。
嶋野 週刊誌等では、相変わらず高齢者のセックス特集が頻繁に取り上げられています。現在の70代はまだまだ元気な方が多い。80代の利用者もいると思います。
品川 現在の高齢の方は、見た目が若い。80歳でも60代に見える方も多い。フロントで見ていても実年齢は分かりません。それだけ現在の高齢者は若くて元気だともいえます。

――バリアフリーも必要ですか。
関口 法律や条例で大規模建物の新築にはバリアフリーが定められています。レジャー・ラブホテルでは法令を遵守しながら必要と思われる対応をしていけばよいと思います。
嶋野 それよりも、靴を履きやすいように玄関に椅子を置く、メガネ置きを浴室にもつくる、そういった気配りが大切だといえます。
品川 気配りのあるホテルづくりとスタッフの対応、それらが中高年層の固定客化には必要だといえます。そのためには、この業界の課題でもある人材の確保と教育。労働条件・環境の整備も含めて、真剣に取り組んでいかなければならないと思います。

PROFILE

VLGグループ 代表取締役 品川尚子
(しながわ・ひさこ)
「HOTEL VILLA GIULIA」など東京・神奈川で3店舗を経営。女性の感性を活かした積極的な経営で繁盛店づくりに邁進。
㈱トラスター 代表取締役 嶋野宏見
(しまの・ひろみ)
関東を中心に30店舗を運営管理。ホテル歴25年以上のキャリアを活かした運営力で顧客満足と利益確保を両立。
㈱Hale Design 代表取締役 関口達也
(せきぐち・たつや)
2004年に現設計事務所を設立し、堅実な設計と柔軟なデザインで数多くのレジャー・ラブホテルを手掛ける。一級建築士。
掲載 LH-NEXT vol.31(2017年1月31日発刊)