[インバウンド獲得の現状]㈱グランクール 代表取締役 吉田 健

オープン1か月順調な滑り出し

青木 浦和(埼玉)のインバウンドホテル「HOTEL WILL浦和」(57室)が仮オープンしたのが5月20日、グランドオープンが6月1日。沼津の「HOTEL WILL RESORT沼津」(21室)がオープンしたのが5月中旬。伴に1か月ちょっとの経過ですが、入り具合はいかがですか。
吉田 両店舗とも、予定通りですね。ただ、収支については、まだ請求があがって来ていない業者さんもありますので、明確なものは次号に譲りたく思いますが、売上については、予想通りです。
青木 浦和と沼津では、旅行代理店との契約内容が異なりますね。
吉田 そうです。前回(vol.28)でも説明させていただきましたが、「浦和」は、いわゆるゴールデンルートから少し外れていますが、ルーム数を増設して施設・設備も受入れ体制を整え、ルートから外れている部分をカバーしております。一方、「沼津」は、ルート上にありますが、部屋数が21と少ないのが弱点となって、契約内容も異なるわけです。
青木 お聞きしたところによると、「浦和」は、1か月固定で1,350万円。「沼津」は、週に5~6日は、予約(全室客を入れる)稼働とのこと。このことによって、経費・利益率はどうなりますか。
吉田 「沼津」の6月の売上は入金が
未完了で、詳細についてはもうしばらく時間が必要ですが、両店舗とも利益率は約50%前後でしょう。
青木 しかし、「浦和」の場合、ラブホテル時の1か月の売上が、約600万円前後、インバウンドにして、1,350万円。その利益が50%とすれば、675万円の利益。ラブホテル時代の売上を、利益が上回っている計算になりますね。
吉田 そうです。そのことが、予想できたので、増室・改装に1億円以上の再投資も可能になったわけです。一方、沼津の店舗は、部屋数がとれないということで、改装費は2,000万円ちょっと、といったところです。
青木 それであっても、沼津の入りも順調というのは、素晴らしいですね。
吉田 インバウンドホテルに業態変革する場合に注意すべきことは、どのようなコンセプトで、実施するか、ということにつきますね。現状の施設形態のままで、海外の予約サイトと契約し、個人旅行客を入れるのか、私のところのように、ツアー客、団体客を入れるのか、それぞれ、その事業計画は、自から違ってくるわけです。

どうなる“ラブホテル”

青木 しかし、団体・ツアー客を主体にすると、いわゆる「レジャー・ラブホテル」の味わいは消えてしまいますが……。
吉田 そうですね。このことについては、契約先である旅行代理店とずいぶん議論しました。主たるお客さまは、中国人です。この中国人がもつ、日本の「ラブホテル」については、十分に理解されているわけではないということです。故に、現在の改装となったわけです。
青木 何か、「ラブホテル」そのものの文化が無視されたような、若干、淋しさも覚えますね。
吉田 私もこの業界に10数年間、関わってきたわけですから、お気持ちはわかります。しかし、現状の業界の姿をみると、いかがでしょう。1か月1ルーム、20万~30万円ではどうしようもないでしょう。そうであるならば、業態の変更も必要ということです。昭和ノスタルジーでは、売上も上がりません。
青木 しかし、海外のYou Tubeなどには、日本のラブホテルが文化として紹介されている。
吉田 私も、大変、興味深く観たことがあります。ネット予約で個人で来られる旅行者を対象にするのであれば、それでも結構でしょう。それぞれの来場者の時間差もあるわけですから。しかし、私のところは、ツアー客・団体客です。一挙に大型バスが2台・3台と入ってきたら、とてもこれまでのような「ラブホテル」では、対応できません。なにしろ、100人前後が一挙にですから。
青木 いわゆる、ラブホテル街に大型バス、外国人の群れ、どうも絵になりにくいですね。
吉田 それが、業界の現実ですし、今後、この景色の変更は速度を増すものと思われます。
青木 都心部のラブホテルについては、どのようにお考えですか。
吉田 もうすでに、都心部・繁華街隣接のラブホテルにおいても、海外の予約サイトに加入されているホテルさんは、外国人旅行者の方々も利用されています。やはり、我々もそうでしたが、初めての海外旅行は、団体で。そして、やがて個人旅行になっていく。この個人旅行になった時に、これまで以上に、ラブホテルは活用されることになると思われます。さらに、その地域は大都市圏のみならず、全国に広がることも予想されますね。日本に4,000万人も6,000万人もの訪日外客が入れば、ということになりますが。
青木 とまれ、2020年には東京五輪・パラリンピックが開催されます。それまでは、国家間の対立があるにせよ、訪日外客数は増加するでしょう。インバウンドホテルの役割は、小さくないものを感じます。期待したいと思います。
(構成/編集/インタビュー:本誌・青木由香)

吉田氏が現在手がけているインバウンドホテルはこちらから
浦和篇
沼津篇
掲載:LH-NEXT vol.29(2016年7月31日発刊)