[インバウンド獲得の現状]JHTホテルグループ 専務取締役 柳川博一

 新宿・歌舞伎町のホテル集積地で7店舗を展開するJHTグループ。同社専務取締役・柳川博一氏はそのなかの1店舗「HOTEL J-MEX」(地上5階建・31室)において、今年3月からインバウンドの集客を開始した。通常のレジャー・ラブホテル営業のなかでの受入れだ。その取組み方と稼動状況を伺った。

将来の売上維持のためにインバウンド獲得を開始

――「J-MEX」でインバウンドの集客を開始した経緯をお聞かせください。
柳川 レジャー・ラブホテル市場は、少子化、セックスレス化の進行に伴い、今後も利用人口の減少は続くでしょう。国内有数の繁華街、新宿・歌舞伎町といえどもその影響はすでに現れています。当社グループでも、週末は高稼動ながら平日宿泊は6割程度にとどまる店舗もあります。
 一方、宿泊業全体でみると、インバウンドの増加でシティ・ビジネスホテルは高稼動状態。レジャー・ラブホテルもインバウンドを獲得できれば、利用人口減少を補完できることになります。短期的な売上対策ではなく、中長期的な売上維持・向上の視点から今後はインバウンド獲得が必要であり、その取組みに着手すべき時期と判断し、平日の宿泊の弱い「J-MEX」でスタートすることにしたのです。

――インバウンドの受入れ方は。
柳川 現在、レジャー・ラブホテルのインバウンド受入れは、大きく2つの方法があります。1つは、急増する中国人団体旅行客の受入れ。そのためにはダブルをツインに変更するなど、いわば業態変更となります。また観光ルートに沿った立地、団体客を収容できる規模なども求められる。そして従来のラブユースの利用者は集客できなくなる。もう1つは、従来のレジャー・ラブホテルとしての営業を続けながら外国人個人旅行客を集客していく方法。当社は、後者の取組み方です。

――集客の具体的な手法は。
柳川 OTA(オンライン・トラベル・エージェント)を通した集客です。まず3月末にブッキングドットコムと契約、
続いて5月にエクスペディアとアゴダと契約しました。ブッキングドットコムは現地決済で送客手数料が12%、手数料は後日支払い。アゴダは事前決済で12%、手数料を引いた利用金額が後日振込まれる。エクスペディアは現地決済が15%、事前決済および現地・事前両決済が18%で、ホテル側が選択できます(当社は両決済を選択)。
 初期手数料は各社とも無料。それぞれネットから申込むと連絡があり必要書類を提出して契約。申込みからサイトアップまでの期間は1~2か月程度。ただ、各社とも4号営業は基本的に不可。そのほか、外出可、フロント設備など旅行者利用のための基本的な条件を満たしていることが必要です。

――国内のOTAは。
柳川 8年前に国内7社に申込んだのですが、「るるぶ」以外は契約不可。「るるぶ」もその後に契約解除を要請されました。国内OTAは4号営業でなくても類似ラブホテルと判断されると契約できない状況です。

7月は1日平均5泊、月売上げ約300万円に

――インバウンド受入れのために変更した部分は。
柳川 ハード面の変更はありませんが、運営上の細かな変更はかなりあります。まず、英語を話せる幹部社員と外国人パートスタッフ数人を異動。POP類は英語と日本語併記に変更。インフォメーションは複数言語バージョンを作成(休憩料金等を省き、貸出や飲食メニューも数を限定)。インバウンド利用時には簡易金庫、和風デザインの茶碗、バスローブを追加セットし、クリーニングサービスも実施。数か国語の新宿周辺観光案内・地下鉄マップを用意。外出時にはGPSでホテルの位置がわかるQRコード付きの外出カードを渡す。
そのほか、箸・扇子等の小物をセットしたウエルカムプレゼントを提供等々、
細かな対応を実施しています。
 また、入室時にスタッフが客室に案内し設備等を説明。これによりフロントへの問合せはほとんどありません。連泊中の客室清掃は、これまで経験がないだけに、当初は清掃時にはマネージャーが同行する方法を取りました。

――利用のシステムは。
柳川 一般利用とは別プランです。チェックイン13時・アウト11時。客室をスタンダード・スーペリア・デラックスの3タイプに分類し、料金設定の基本は、平日が休憩1+宿泊、週末は休憩2+宿泊+割増。近隣のほぼ同じ客室面積のシティ・ビジネスホテルと比較して若干リーズナブルな設定です。ただ、ほとんどが連泊利用なのですが、レジャー・ラブホテルのコンピュータは連泊に対応していないので、特別項目を設けて対応しています。

――実際の稼動状況は。
柳川 4月の実績が72泊(1日当たり2.4泊)。平均単価が25,700円(1か月合計約185万円)。5月はゴールデンウィークの利用がほとんどなく39泊。
インバウンド客は季節波動が強く、年末・年始、来年の3、4月(花見時期)などすでに予約が多数入っている時期がある一方、まだ予約のない時期もあります。そこで、6月から直近1か月先までの料金調整を開始。その結果、7月は単価は下がりましたが、件数は1日平均5泊に増加。7月のインバウンド売上は約300万円が見込める状況です。「J-MEX」でインバウンド対応のノウハウをある程度確立できた時点で、あと2店舗で実施したいと考えています。現在、平日も高稼働している店舗での実施は考えていません。

――利用者の反応は。
柳川 国籍は、欧米からアジア各国までさまざまですが、ブッキングドットコムの口コミスコアは8.7と高評価。個別に見ると10点満点も数件あります。同料金レベルのシティ・ビジネスホテルと比較すると、客室の広さ、各種設備・浴室・アメニティの充実等は確実に評価されており、清潔さやスタッフの評価も高い。レジャー・ラブホテルという宿泊業態はインバウンド客に支持されるポテンシャルを有していることは確かです。ただ、5点という低評価も1件。そのコメントは「ラブホテルだと知っていたら利用しなかった」というもの。しかし、現在はサイト上には「アダルトオンリー」の表記が付き、すでに多くのインバウンド客は日本のラブホテルを理解しており、今後、
カップルのインバウンド客におけるレジャー・ラブホテルの需要はさらに高まっていくと考えています。観光客が訪れる立地であれば、インバウンド客はレジャー・ラブホテルの新しい客層になりえると思います。まだ試行錯誤の状態ですが、今後、一定のインバウンド客を獲得できるノウハウの確立を目指して取組んでいきます。

掲載:LH-NEXT vol.29(2016年7月31日発刊)