[リニューアル効果の検証]隣接3店舗の総合集客力を重視、 カギを握る新法店舗を重点改装

「情熱のHOTELION」(仙台市太白区)
㈲センダイサン企画 専務取締役 宍戸 泰
㈱岩澤靖幸建築設計団 代表取締役 岩澤靖幸

仙台市郊外に戸建・連棟・新法の3形態で3店舗隣接して立地するホテルを経営する㈲センダイサン企画。2014年から2015年にかけて各店舗を相次ぎ改装した。なかでも新法店舗が総合的な集客力のカギを握るとして、訴求力強化を図るべく全面改装で臨んだ。その改装の考え方と内容を、同社専務取締役・宍戸泰氏と、改装を担当した㈱岩澤靖幸建築設計団代表取締役・岩澤靖幸氏に伺った。

戸建・連棟・新法の3店舗を総合的な集客力の視点で判断

――改装の経緯からお聞かせください。
宍戸 当社のホテル事業は母親が1989年にこの3店舗を取得してスタート。当初は好調な売上でしたが、老朽化が進み売上も低下。私は特殊土木のゼネコン勤務を経て当社に2008年に入社。その時はすでに1室1か月約10万円。収支は赤字です。経営を立直すのは難しく売却しようと動いたのですが、老朽化した低迷物件では買い手が付かない。営業を継続し何とか収益の出る状態にしなければと、私自身、泊りこみで清掃やリネンの洗濯をして修繕もして、サービスや料金体系を工夫して……。徐々に収益の出る状態に売上が回復し、改装資金が調達できる状況になり、今回の改装に至りました。

――改装の方向は。
宍戸 戸建(9室)、連棟(13室)、フロント対面の新法(17室)と3形態が隣接するホテル。それぞれ異なる設計デザイナーで明確な色分けを考えました。郊外立地で戸建と連棟は比較的に集客しやすい。女性デザイナーに依頼し、表装変更で、戸建は「可愛らしさ」、連棟は「ラグジュアリー」の方向で改装。一方、新法が3店舗の総合的な集客力のカギを握ると考えていました。野立看板も出せるので全体の広告塔の役割も担います。木造2階建てで、客室面積は20㎡弱と狭いが天井高がとれる。客室を立体的な造作で、仙台エリアにはないインパクトのある客室にしたいと、岩澤先生に依頼したのです。同時に、福島・会津で岩澤先生で改装実績のある㈱久保田商会・久保田正義社長にコーディネーターとして改装計画に参画していただきました。
岩澤 隣接した3形態のホテルを異なるコンセプトで構成する。他にはない面白いホテルになると思い、私の担当する新法ホテルに関しては、仙台は大都市ですから、思い切り“遊び”の空間にしても受け入れられると思って臨みました。また、木造で老朽化が進んでおり全面改装となることから、単価向上も考慮し、2室を1室にした特室を3室設けています。

ラブニーズに応え親密感の増す客室

――いま、集客力のある客室とは。
岩澤 レジャー・ラブホテルは、カップルが楽しい時間を過ごす空間。驚きやワクワク感があることが前提条件だと思っています。もちろん、高単価で集客できるのなら、高級素材を使ったラグジュアリーの方向でのワクワク感も可能でしょう。しかし客単価6,000~7,000円で2~3回転を想定した条件下では、掛けられるコストは限られます。それでもワクワク感は出せます。ベッド以外の場所で、カップルがスキンシップを取りながら親密感が増すような空間を常に意識しています。
宍戸 このホテルでも、ドーナツ型のソファやひな壇状の階段等々、カップルが並んで座ってスキンシップが図れるさまざまな仕掛けがあります。
岩澤 4号営業の鏡や拘束器具を求めるニーズもあると思います。そういった従来のラブホテル的な設備・演出がなくても、ラブニーズを満たす客室はつくれると思っています。
宍戸 私自身、昔ながらの淫靡な雰囲気が漂うラブホテルのイメージも含め、先代経営者の方々が築き上げてきた、歴史のある“ラブホテル文化”が大好きです。ただ、その魅力に加えて、現代的な感性に応える、新しいラブホテルを具現化していくことが、事業を継承する若い経営者に求められていると思うのです。
岩澤 従来からのセオリーで、守るべき部分と、捉われずに柔軟な発想で変化させる部分の、バランスが重要です。椅子やテーブルなども既成概念に捉われなければ、狭い客室でもさまざまな空間演出が可能になります。
宍戸 奇抜な客室空間でも備品類の置き場所などもきっちり設けられていて機能性も考慮されています。郊外立地とはいえ幹線道路が近く、タイムシェアの利用システムですが、平均滞在時間は約6時間。使い勝手の良さも長時間滞在につながっていると思います。
岩澤 使い勝手や居心地のよさは、運営面も大きく関わります。
宍戸 清掃とメンテナンスには十分に力を注いでいます。アメニティやレンタルグッズを充実させ、とくに飲食サービスは重視。3店舗隣接なので厨房は1箇所で対応できるコスト面のメリットも活かし、飲食では利益を出さなくてよいという発想で臨み、好評を得ています。最近は3店舗トータルで月に2,000食以上が注文されています。

――外装に関しては。
岩澤 周辺環境にもよりますが、基本的に隠れ家的な存在でよいのではないかと思っています。限られた予算なら、外装よりも客室内部にコストを配分したい。ただ、現在のお客様はネットでホテルを探す時代。そこではネーミングが重要です。このホテルも「情熱のHOTELION」。ネットで検索したお客様が“え~、どんなホテルなの?”と思い印象に残れば、成功だと思います。
宍戸 ネットの告知方法は重要です。当社ホテルでは、HPでグーグルのインドアビューも採用していますが、レジャー・ラブホテルを使ったことのない若者層に対して、敷地内や館内を見ることができるのは、不安感の解消にもなると思います。

――今回の改装費と改装後の状況は。
宍戸 「情熱のHOTELION」は、改装前の売上が1室約25万円。改装後の売上を1室40万円と想定し、改装費約1億円の事業計画を作成して臨みました。改装後は計画を上回る50万円超で推移しています。郊外立地の対面フロントのホテルで、ごく普通にキレイになっただけの改装では達成できない売上だと思っています。また、インパクトの強さから広告塔の役割も果たし、他の2店舗への相乗効果もあるとみています。料金体系を変え稼動重視にすれば売上はさらに伸ばすことができると思います。しかし十分な清掃・メンテナンスがあってこそホテルの魅力が維持できる。現在の売上・稼動がこのホテルにとって中長期的にみて最適な状況だと考え、今後も地道な経営努力を続けていきます。
岩澤 ホテルの最適な売上を見極め、上回れば喜ぶのではなく常に単価と回転数を見直すことは重要ですね。

《掲載LH-NEXT vol.28(2016年4月30日発刊)》
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