<特別インタビュー:第2回>変革の時、 ラブホテル業界の新業態を目指す/㈱ミマコーポレーション 代表取締役 美馬辰也

昭和型経営はとっくに終わっている

――前号では、2015年の総括、そして2016年の「動向・ポイント」について伺いました。既に4月、2016年の業界の動きはいかがですか。
美馬 予想通りですね。極論になりますが、都市部は良くて、郊外店舗は芳しくない、ということです。これは当然のことながら、需要と供給のバランスが崩れているということでしょう。つまりは、利用人口に対して、ホテル数が多すぎるということです。その地域格差はますます拡大しているとさえいえるでしょう。

――この格差は、今後とも拡大していくわけですか。バランスがとれるまで……。
美馬 この数年間、大変気になるのは、「レジャー・ラブホテル」の経営者と利用者のホテルの捉え方が大きく乖離していることです。「レジャー・ラブホテル」の経営者の多くは、未だに“昭和”にいる。ところが、利用者は、現代です。ビジネスは今現在です。かつての「レジャー・ラブホテル」は、“休憩と宿泊”の回転において、ビジネスが成立していたわけです。それが、この業界の魅力的ビジネス
でもあったわけです。ところが、近年はどうですか。“休憩”は利用料金が下がり、あるいは利用時間が長くなっている。小売業ならば、1つで100円の物を、2つも3つもで、100円で売っているのと変わりないでしょう。“宿泊”は、回転どころか、半分も入っていない。入るのは、休日前にどうにか満室になるかどうかでしょう。むしろ、満室になるのは、マレなケースもあります。

――いわゆる「レジャー・ラブホテル」としてのビジネスモデルはなくなっている。
美馬 そのビジネスモデルは、昭和の時代のものです。そうではなく、これはある種、「ラブホテル」から「宿泊施設」への回帰ともいえます。

――しかし、そういいながらも、美馬社長自身、所有店舗を増やしている。現在、何店舗を所有しています?
美馬 実は、先日も購入しましたので、現在、15店舗になります。ただし、無節操にどこの地域でも増やすという考えはありませんし、いわゆる“出口”が見えない物件を所有するつもりもありません。

――といいますのは……。
美馬 つまり、関東においても、「レジャー・ラブホテル」の、いわゆる“好立地”といわれるところは、時代とともに急激に変化しているわけです。売上が伸びない、売上を伸ばすためのプロデュースができない場所のホテルを所有するつもりは、まったくありません。

――ここでいう“出口”とは、売却のことですね。
美馬 そうです。私は「レジャー・ラブホテル」の基本は、店舗数を次々に増やすことではなく、いかに効率的な、効果的なビジネスを実践するか、ということが主眼です。建物・設備等が老朽化し、売上が年々下降したホテルは、“価値”は減少するでしょう。月1ルーム、30万円まで低下したホテルは、なにもしなければ、10万円台になるのは時間の問題です。そうなると、地目にもよりますが、評価価値はより薄れるでしょう。廃業か転業しか方法はないことになります。とても、売却はむりでしょう。そうではなく、ルーム月30万円以上のホテルを購入して、改装し、売上を伸ばし、売却する方法です。この期間はそれぞれの考えがありますが、私は3年と計算しております。償却がなくなれば、税金の額は高まりますからね。購入し、改装し、徹底的に売上を伸ばす。そして売却。この方法でしかないでしょうね。

――しかし、経営者にとっては、ホテルに愛着・想い入れもある。
美馬 もちろんです。誰でも、ホテルは自分の子供のように可愛いものです。しかし、感傷にひたっていても、ビジネスは成立しないでしょう。人件費は今後、ますます高騰します。昨年、2015年10月に改正された東京都の最低賃金は、907円でした。前年は888円で19円増です。19円といえども、人数、さらには、夜間の割増、保険等々。それらを考えると、人件費比率はさらに高まることになります。ついこの前までは、24 ~ 25%であったものが、今や30%超え。これらは、今後高まることがあっても、下がることはないでしょう。

――それ以前に、人手もママならない。
美馬 そういう“時代”です。募集しても、応募がない。これからのサービス業は大変な時代になります。

――そこで、美馬社長の、お考えは……。

新たなシステムの構築

美馬 これは近々に始めることですが、チマチマした料金形態を止めて、2種類にします。1つは12時間利用、1つは24時間利用というものです。

――2部制・3部制はない。ショートもない?
美馬 2種類しかない。12時間利用でいくら、24時間利用でいくら。これだけです。

――ちなみに、12時間利用でどのくらい料金を考えていますか。
美馬 12時間で1万2,000円。24時間で1万8,000円です。

――そのことにおけるメリットは何ですか。
美馬 経費の削減及び人件費の軽減ということです。訪日外来客の数はともかく、日本人の国内旅行の泊数は、昨年、4億3,908万泊でした。これは、対前年で2.4%増です。外客泊数は、6,637万泊です。日本人の方が、遥に多いわけです。しかも、シティ・ビジネスホテルは満室ですから、「安全」「安心」「清潔」なレジャー・ラブホテルの存在は、意味あることになるでしょう。

――マーケットは、そこにある。
美馬 そうです。日本人の国内旅行にもっとも適している宿泊施設、それが「レジャー・ラブホテル」ということです。外来客ばかりに目がいくのではなく、もっと足元をみることも必要でしょう。この集客を、12時間・24時間利用の2本立てで、提案したいと思います。

――この2本立て料金システムは、御社が所有している15店舗すべてで実行していくわけですか。
美馬 違います。私どもは、埼玉・千葉にもありますが、ベースは神奈川です。町田・相模原・横浜です。これらの地域は、埼玉・千葉と比べて、はるかに人口密度は高い地域です。さらに、いわゆる旅行者も少なくはありません。その1つのホテルで、新システムを実行します。かつての、ペアーオンリーの「レジャー・ラブホテル」のビジネスモデルは、ますます終焉を迎えるでしょう。

――逆にいえば、業界はそこまで追い詰められている?
美馬 全てがすべてではありません。地域・場所によれば、まだまだ、過去と同様のモデルでも通用するでしょう。しかし、“昭和”は、遠い過去になっていることだけは、事実です。

――「レジャー・ラブホテル」は長い歴史があります。男女の形態も大きくは変化なくきました。しかし、近年、男女の在り様が変わってきたのも事実でしょう。ところが、ホテルまでもが……。
美馬 男女の在り様が変われば、その世界も変化するのは、当然です。この2016年は、業界が大きく変革する年になるでしょう。もし、その変革に気付かなければ、すべてを失う覚悟も必要になるでしょう。業界発展のためには、次なるビジネスモデルの構築が要求されているわけです。

㈱ミマコーポレーション 代表取締役 美馬辰也
(みま・たつや)
1992年に業界参入。2002年に独立。
現在15店舗を直営。独特の経営論で新業態を論ずる。
インタビュアー 本誌・ 湯本隆信
注目企業レポート LH-NEXT vol.28
掲載 LH-NEXT vol.28(2016年4月30日発刊)