[奮闘する単独店舗]「HOTEL TIARA」/㈲松本興業 代表取締役 松本明樹 (まつもと・めいじゅ)

地域マーケットの現状を的確に把握し、過剰と訴求力の境界を見極めて臨む

 「HOTEL TIARA」は、神奈川県川崎市に1992年に新規オープンした21室のホテル。2013年に全面改装を施し、以降、順調に売上を伸ばしている。17年前からホテル事業に携わる松本明樹氏に改装内容や目指す方向を聞いた。

■近年の状況 
 「HOTEL TIARA」は、2008年頃をピークに、以後、毎年5~10%の売上低下という状況が続きました。不況等の社会的要因もありますが、やはり築後20年を超えるとメンテナンスや部分的な補修だけでは対応しきれない状態になります。客室数の限られた単独店で収益を確保するには客単価が重要。そして客単価重視で集客をしていくためには、地域1番店を競えるホテルづくりが必要となります。そこで2013年に全面改装に踏み切りました。改装後は順調に売上が増加。改装前の1室1か月50万円台の売上に比べ、現在は40%前後の増加で推移しています。とくに平日の宿泊組数が20%程度増加し客単価も約1,000円の上昇を示しています。

■経営・運営の注力ポイント 
 現在のレジャー・ラブホテルは、従来のような高回転は不可能。さらに客単価を重視するといっても、集客との兼ね合いを考慮すると、お客様の許容範囲は地域の相場の1~2割高が限界。それらを勘案したなかで過剰投資にならない投資額を判断しました。
 改装後は“洗練されたリゾート空間”とアピールしていますが、単なるデザイン的な魅力だけではなく、TVや什器の配置等も含めて、使い勝手が良く居心地の良い客室空間の構築を最重視しました。休憩で回転する業態とはいえ、やはり宿泊稼動が基本。そして宿泊の促進には、やはり使い勝手や居心地という要素の向上が重要だと考えています。
 一方、各種サービスについても過剰と訴求力の境界の見極めを重視して取り組んでいます。アメニティなども単に充実を図るのではなく、シティホテルと比較しながらそれよりも魅力的というレベルに抑える。飲食も在庫やロスを考慮してメニュー品目を絞り込む。ただし、見せ方は重要なので、コストがかかってもプロのカメラマンが撮影したメニュー表を採用しています。イベントも、従来は多額のコストをかけたプレゼント企画なども実施してきましたが、現在は、人気の飲食メニューを半額で提供するキャンペーンなどを中心に実施。新たに発生するコストは告知POP程度で、半額の販売でも原価は確保でき、しかもお客様にも喜ばれます。
 自社ホテルの弱点を改善しようとすれば大きな手間とコストがかかります。例えば飲食メニュー品目を増やそうとすればストックヤードを整備し、調理を兼任するフロントの負担も大きくなってしまう。それよりも、強みを見い出しアピールしていくことに重点をおいて臨むことが、収益確保につながると考えています。
 現状の大きな課題は、やはり人手不足対策です。今後、マイナンバー制によりダブルワークスタッフの減少も予測され、さらに人手の確保は難しくなると思います。現在の当社ホテルは、私以外はすべてパートスタッフ。今後、この形態で対応できるのかどうか。正社員化への変更も含め根本的な雇用体制の見直しを、現在、社労士と進めているところです。
 また、インバウンドの増加が続いていますが、当社ホテルでは、その対応の前に、地域内の利用者の料金・時間帯に関するニーズを的確に掴んで利用システムに反映させ、最大の収益を生み出す単価と回転数を目指すことを優先させたいと考えています。料金システムは微妙な調整でも組数・売上に影響します。それだけに商圏内の市場のマーケティングはより詳細により的確に行なわなければならない。それが全面改装の効果をさらに高めていくことにつながると思っています。

《掲載LH-NEXT vol.26(2015年10月31日発刊)》