[奮闘する単独店舗]大和商事㈱ 取締役 井上礼子氏

低価格化の進行にキメ細やかさで対抗ラブホの魅力と女性への訴求を推し進める

 「HOTEL Raffine」は、大阪府豊中市の住宅街に立地する19室のホテル。経営者は、本誌で「ラブホの嫁」を連載する井上礼子氏。商圏内で価格低下が激しく進む環境下、現在の取組みを聞いた。

まだ続く低価格化、客室ごとの改装を継続

――貴社ホテルのこれまでの経緯は。
井上 当社は、不動産賃貸事業を主業務とする会社で、先代が45年ほど前に建築後間もないホテルを取得。その後、20年ほど前に全面改装を施しています。改装直後は高売上を実現したものの、その後、急速に売上が低下。副業的な取組みだったこともあり、従業員教育もメンテナンスも不十分で、集客力を失っていったのです。
 13年ほど前、低迷が続き、廃業か立て直しかの決断を迫られる状況となり、女性目線で立て直しを図ろうということから私が運営を担当することに。素人ながらも利用者目線でメンテナンスを進め企画やサービスの充実を図り、7年前には約半数の10室を改装。売上も1室1か月50万円を超える状況となりました。
 しかし、その後は不況が進み商圏内のホテルの価格競争が激化。できるだけ値下げをせずに頑張ったのですが、組数が低下し売上は再び減少傾向。何とか2、3年前に低下傾向に歯止めをかけ、現在は客単価6,000円弱、2回転強といった状況で推移しています。
 とはいえ厳しい状況は続いています。休憩組数が急激に減少し周辺を調査すると、休憩1,000円以下での激安営業が行なわれていたり……現在もまだ価格低下が続いています。客室数の限られた単独店は価格では対抗できない。とくに住宅地立地でデリヘル利用も非常に少ない当社ホテルは、低単価高回転は望めません。市場の相場とかけ離れた料金では集客はできませんが、基本料金を維持しながら、次回・次々回の来店につながる割引チケット等で対処し、基本は、適正な単価でも満足して再利用してもらえるホテルづくりを進めるよりほかにないと思っています。

――適正な単価で集客力を維持する取組みとは
井上 毎年2、3室のプチ改装を続けています。これは必要条件だと考えています。今年は2室を改装。低価格ランクの客室の老朽化対策だったので、コストを抑え女性に可愛いと思ってもらえる表装変更です。基本的に、客室の改装においては、4号営業だからできるエロ系を演出する方向で臨んでいます。シティ・ビジネスホテルにはない客室であり、レジャー・ラブホテルでもチェーン店は踏み込んでこない要素だからです。
 昔のラブホテルのような回転木馬や全面鏡貼りといった造作を伴った演出はコストが大きく、しかも旬を過ぎたときに手軽に変更できない。これまで診察室や電車ルームといったコンセプトルームも設けてきましたが、昨年実施した、SMチェアを設置しクロスやファブリックでお洒落な雰囲気をつくり「モテ姫ルーム」の名称で打ち出すといった取組み方を、今後も続けていきたいと思っています。

――コスプレも充実していますね
井上 一昨年、老朽化対策で改装した客室が、あまり特徴のない客室。そこで、数着のコスプレを常備して「コスプレルーム」として打ち出し好評を得ています。現在、貸出のコスプレは約40種類。コスプレを楽しもうとしてサイズが小さくて着れなかったら女性はショックです。そこで「ぽっちゃりさんでもコスプレ着たい!」とのコピーを付け大きめのサイズも用意しています。実は、この大きめサイズが、女装をしたいという男性のニーズも捉えて予想以上に好評です。
 コスプレで重視しているのが、やはり清潔な状態で提供すること。ホテル内部で洗濯・アイロン掛けをしていますが、担当者がとても丁寧に仕上げています。これは重要なポイントです。

女性視点のキメ細やかさが大手チェーン店への対抗の基本

――アメニティ等については。
井上 各種の無料貸出アメニティ等も女性に支持される商品揃えを心がけています。商品選択のうえで有効な手法が、アンケートで「よく読む雑誌は?」という設問をすること。そして多く読まれている女性誌の広告をチェックする。流行の傾向や商品が手軽にわかります。
 また、洗面スペースに女優鏡を設置している客室もありますが、オリジナルの制作です。化粧時の照明の好みに対応できるように、色温度の違う電球を交互に取付け切替えられるようにしています。
 現在の大手チェーン店は、どこもキレイで設備も整っている。スケールメリットで価格勝負もできる。1、2店舗を経営するホテルでは、こういった細部におけるキメ細やかさで対抗するほかに方法はないと思います。
 ただし、イベントや飲食サービスは、力を注ぎすぎると、お客様の要望もエスカレートします。それに応えないと期待外れの印象を与えてしまう。飲食に注力していた時期、お客様から「おせち料理」まで要望されたこともありました。ある程度のレベルにとどめながら、魅力的な内容で提供しようと方向転換しています。

――新しい設備等については。
井上 昨年、スマホ時代に対応すべく、Wi-Fi環境を整えるとともに、スマホの画面をTV画面に映し出す装置を採用しました。スマホの写真をTVに映し出せるのは魅力です。でも、ラインやメールが着信するとそれも画面に出てしまう。不倫のお客様にとって奥さんや旦那さんからのメールが着信したら……。何かよい方法がないか、検討中です。新しいサービスや設備等も、すべて成功するとは限らない。しかし、面白そうなコト・モノは、失敗を恐れずに採り込み続けることが、必要だと思います。

――4号営業は広告も限られる……。
井上 やはりネットの活用が重要です。当社ホテルのホームページは私がつくり、インスタグラムやツイッターを埋め込み更新しています。忙しいと更新が滞ってしまうときもあるのですが、更新を続けると確実に集客に結び付きます。SNSは無料で集客できる有効な手法。今後も活用を重視していきたいと思っています。

――今後の取組みは。
井上 今年、隣接する土地を取得し駐車場を拡大しました。狭くて使いにくいと指摘されていましたので、大きな問題の1つが解決できたといえます。一方、客室は毎年2、3室ずつ改装を続けてきましたが、外装は20年前の状態。スタッフ募集時の面接で「ホテルの中はキレイなんですね」と言われてしまい、外壁と塔屋看板の見直しの必要性を痛感しています。やはり新規客を獲得し続けなければ、組数は維持できません。外部からの見た目のイメージアップが現在の課題です。客室内や運営については、激安営業が現れても惑わされずに、これまで同様、限りある予算のなかで、よりキメ細かく、いまできることを確実にやり続けていこうと思っています。

《掲載LH-NEXT vol.26(2015年10月31日発刊)》