[奮闘する単独店舗]「HOTEL &MAX」/㈱エス・エイ商事 代表取締役 有江英樹 (ありえ・ひでき)

チェーンストアの経営理論を取り込み細やかな対応ができる組織体制を目指す

 「HOTEL & MAX」は、福岡・春吉の繁華街に1997年に新規オープンした39室のホテル。2008年からホテル事業に携わり2013年に社長に就任した有江英樹氏に、現在の取組みを聞いた。

■近年の状況 
 「HOTEL & MAX」は、高級感と好立地でオープンしたのですが、当初は、知名度の向上に苦しみ厳しい業績でのスタートでした。父親である先代社長が途中から、専心的に改革や販促に取組み大幅な業績向上を実現。しかし、細部のメンテナンス等が行き届かない面もあり、リーマンショックの前後で組数が約10%、売上が約5%低下。その後、大規模改装は未実施ですが、アベノミクス効果による世間一般の景気回復感もあり、この1、2年は回復基調です。今年は、客単価9,000円弱、2.5回転前後という状況で推移しています。

■経営・運営の注力ポイント 
 ホテルに携わる以前は、大手飲食関連企業で新規店舗開発やスーパーバイザーを行なっていました。商業界の大御所・渥美俊一先生の「チェーンストア理論」(マーケティングや事業計画、経営戦略等の理論や実践手法)は、ホテル単独店においても必要かつ有効です。社長に就任以降、このチェーンストア理論に基づいた手法で事業を進めています。
 ホテルにおける増客の3本柱は「清潔かつ不具合なし」「安心・安全」「客層に合わせた飽きない企画」。そして、それらの実行のカギを握るのは、何よりも“組織体制”です。
 現在の当ホテルは、3人の幹部社員(社長、課長、店長)+正社員のフロント3人+パートのメイクスタッフという構成。そこでの組織体制づくりで最も重視している点は、それぞれの責任の明確化と権限移譲です。例えば、お客様からのクレームに対し、フロント社員自身の判断で料金割引等にも即座に対応できなければならない。お客様のニーズに応えるサービスといっても、お客様の本音を知ることが前提。フロント社員が接客や電話応対から拾い上げた言葉を短期~長期的な経営戦略に活かしていく。また、営業会議やヒアリングなど時間をかけて、足元のデータ確認と問題点の論議など情報共有に取組む。そのためにさまざまな業務での「見える化」は欠かせません。
 日々の運営のなかでの重視点は、清掃と点検の深化です。特に客室点検には見落としがないようにトリプルチェックの体制で臨んでいます。業績低下の時期、収益確保のために経費削減にも取組みましたが、実働部隊の人件費や用品備品等の変動費は品質低下につながるので大幅な削減は行なわず、固定費の見直しを進めました。
 確かに、現在の福岡も含め、「大規模投資をして、売上をある程度は回復できた」と言う話を耳にしますが、当社としては“費用対効果にかなった収益の追求”を柱に事業計画を進めたいと考えています。そのためには、情報摂取と創意工夫の発揮が必要。大きな投資ではなくても、きめ細やかな修繕を随時実施しアメニティ等も流行を捉えた商品を常に取入れる、等々。お客様は細部の変化に予想以上に敏感です。
 このような取組みの結果として、とくに高価格の客室販売が伸びてきています。今後、この傾向をさらに強めたい。そのためにも、全員参画型で組織体制の確立を進め、全員で不備を見つけ出し、まずは「情報共有」→「修
正・対応」をしていく。全員というのは、内部スタッフだけではなく外部関連業者の担当者も含め、いわば“チーム&MAX”を形成して臨んでいきたい。
 ホテルにおいては単独店もチェーン店も増客のための取組み方に違いはない。チェーン店でも、地域により客層もニーズも違うわけですから、個々の店舗できめ細かにお客様の本音を掴み、分析し、対応していくことが求められます。その状況を念頭におき、当社としては、常に“カイゼン”を求める企業文化を追求していきます。

《掲載LH-NEXT vol.26(2015年10月31日発刊)》