[奮闘する単独店舗]㈱ムーンコーポレーション 代表取締役 文 明優 氏

「まぁいいか」「面倒くさい」ことを頑張り 「小さな感動」を積上げ差別化を図る

「HOTEL noble」は、栃木県宇都宮市に1989年に新規オープンした24室のホテル。約20年前からホテル事業に関わり2007年に社長に就任した文明優氏に、現在の取組みを聞いた。

チェーン店の改装オープンが相次ぎ価格競争も進行

――貴社ホテルのこれまでの経緯からお聞かせください。
 パチンコ事業を営んでいた父親が新規事業として1989年に新築オープンさせました。しかし、ホテル経営のノウハウがまったくない状態でのスタート。当初はサービスも何もないホテルで、事業計画の売上に届かない状況が続きました。私がホテルに関わりはじめたのが約20年前。試行錯誤しながら運営の工夫をしていくと結果に現れてくる。ホテル業が面白くなってきて、気が付いたら私がホテル運営の中心になっていました。
 売上も徐々に伸び10年前頃がピークで1室1か月60万円強。その後は業界全体が逆風のなか売上も減少傾向に。それでも、部分改装や設備機器の追加を継続して行なうことで下幅を抑えてきました。しかし、この1、2年はかつてない厳しさ。前年比で10%前後の減少となる月もあり、売上もピーク時から比べると3割以上の減少となっている状況です。

――その要因は。
 チェーン店の進出・改装オープンが相次いだこと。それに伴い、地域全体で価格低下が進みました。その背景には、地方都市の経済状況もあります。宇都宮は50万都市とはいえ、やはり地方都市。流入人口も少ない。飲食業をはじめ他の業種もまだまだデフレから脱却できない状況が続いています。

――これまでの改装等は。
 2007年に個人事業から法人化し、その際に部分改装を実施。本来は全面改装をすべき時期でしたが、調達資金も限られTVの入替えと浴室の改装のみを施し、その後、毎年2、3室の改装と設備機器の追加等を継続して行なってきました。

――客室の改装内容は。
 学校、託児所、オフィス、電車、ライトSMなど多彩なテーマのコンセプトルームを設置してきました。パーティ利用も考慮したIHキッチンを備えた客室もあります。HPでも告知し「普通のラブホテルに飽きてしまったら一度利用してみる価値あり!」と打ち出しています。
 また、この数年で追加した設備機器は、多機能シャワー(2室)、エスプレッソマシン(3室)、大画面TV(60インチ2室、80インチ1室)、高濃度炭酸泉シャワー(2室)、ソファ型マッサージチェア(2室)、ドイツから個人輸入したコラーゲンマシン(1室)等々。この他に、輸入インテリアも数室に導入、Wi-Fi環境を整え、ナノテク水をバージョンアップ。細部ではシャンプー・リンスは100種類以上に増え、アダルトグッズも他ホテルにはない商品を揃えています。
 もちろん、期待に反して評価されないアイテムもある。しかし費用対効果を考えて迷っていては何もできない。大規模改装なしに集客力を確保するには、使える予算内で可能な限り他ホテルにはないアイテム・サービスを探し出し、追加し続けることしかない。異業種の展示会にも足を運ぶなど、訴求力のありそうなアイテム探しにはかなり力を注いできました。
 ただ、現在の当社ホテルに求められている根本的な集客力回復には、やはり大規模改装が必要。過剰投資を避けながら訴求力を生むラインをシビアに見極めた改装計画を現在、進めているところです。

スタッフの自主性を高め小さな感動を積み上げる

――単独店としてとくに意識して注力していることは。
 資金力では大手チェーン店には敵わない。スケールメリットの出せない単独店は価格勝負でも勝てない。となれば、大手チェーン店ができないホテルづくりやサービスをどれだけ実行できるか、です。
 そのためのキーワードは「まあいいか」「面倒くさい」。そう感じる取組みこそ単独店の頑張りどころです。手間がかかり効率が悪く、複数店舗で同様に取組めない施策には、大手は手を出しません。だから差別化になります。
 「まあいいか」「面倒くさい」を一歩踏越える取組みで、お客様の心に響く満足を提供していく。大きなコストをかけた大きな感動ではなく、手間をかけ気持ちを込めた小さな感動です。これをできるだけ数多く同時に提供していくほかにはないと思っています。
 これは、経営者1人の力や発想ではできません。スタッフの頑張りが必要です。当社ホテルは、支配人以外はすべてパート。数年前からフロントとメイクを兼任できるスタッフづくりを進め、それが現在8名。このスタッフを中心に全員で小さな感動の積上げを推し進めています。

――その他の注力点は
 私予約による誘客に積極的に取り組みたいと思っています。これまでは、事前予約の要望があるパーティ利用のできる客室だけを「ハピホテ予約」で対応してきました。今年7月からは当日予約の「notte」も採用。シティ・ビジネスホテルはネット予約が一般化しているのにラブホテルは予約ができない……。これは完全に時代遅れです。特徴的なコンセプトルームを事前に確保したい、あるいは当日手軽に客室を確保したいなど、さまざまな予約ニーズがあるはず。今後、各種の予約システムを活用して誘客の入口を広げていきたいと思っています。
 大規模改装に、このような利便性や数多くの小さな感動のサービスを加えることで、改装効果を最大限に引き出すことができるはずです。地方都市の厳しさはまだまだ続くと思います。そのなかで、ホテル事業を継続していくために、単独店だからできるオリジナリティをさらに追求していく。力を注いで結果が出ない施策が1つ2つあっても決してめげずに、経営者自身が常にポジティブシンキングで臨む。“5年後には地域1番店と肩を並べるホテルにする”という気概で、今後もホテル事業に取り組んでいきます。

《掲載LH-NEXT vol.26(2015年10月31日発刊)》