宿泊稼動を再考する〜内宮商事(株)代表取締役 内宮則一

 関東圏で「ホテル555」ブランドを中心に13店舗を展開する内宮商事(株)。近年の宿泊稼動の低下に対し、宿泊施設としての基本を再度見直し、見た目のキレイさから本当の清潔さの追求に力を注ぎ始めた。さらに、同社は宿泊施設としての安心安全を確保し信頼を得るうえで必要な体制として1ホテル社員6名で運営に臨んでいる。その意図と取組み方を、同社表取締役・内宮則一氏に聞いた。

低価格訴求が進み短時間利用のイメージに

――近年の宿泊稼動の状況は。
内宮 店舗による差はありますが、この数年、宿泊組数はほとんどの店舗で低下しています。とくに郊外立地は厳しく、数年前に比べると1割前後は低下。以前は、平日でも宿泊が満室になっていた店舗が、現在は週の半分程度は空室が残る状況です。休憩組数は増加しているのですが、単価の高い宿泊の減少は、やはり売上・収益に影響します。

――宿泊稼動低下の要因を、どのように捉えていますか。
内宮 カップル数自体が減少していることもあるといえますが、それだけではないと思っています。
 1つには、営業戦略が現在の市場環境を捉えていないのではないかということ。当社ホテルは、以前から宿泊重視でチェックイン時間も早く、料金は周辺より高いが17時から宿泊できるという訴求をしてきました。そして、従来は宿泊で1回転は確保できるという前提のもとに、休憩利用を増加させるためにフリータイムを長時間化する、2部制3部制にする等々の工夫をしてきたわけです。しかし、利用者数が減少してくると来店する時間が限られてくる。宿泊目的で来店しても休憩で客室が埋まっていれば、次の来店はない……。近年は多くのホテルが平日のチェックイン時間を早めていますから、当社以外のホテルにも当てはまるのではないでしょうか。宿泊1回転が前提の時代における休憩優先の営業戦略が現在も続いている。その結果、宿泊客は、確実に15時からチェックインできるビジネス・シティホテルに流れるという状況にもつながっているように思われます。
 もう1つが、ラブホテルに対する利用者のイメージです。現在の料金は安すぎます。現実問題として現在の料金ではサービスにも限界がある。それを利用者も感じ取っているのではないでしょうか。安く利用できるというイメージはあっても、快適に楽しく長時間過ごせるという本来のイメージが薄れてきているように思われます。これは将来に関わる大きな問題です。内宮 

信頼感を得るための社員中心の運営

――貴社ホテルは、正社員中心の運営体制で臨んでいますが……。
内宮 基本は、支配人も含めて1ホテルに社員6名の体制です。どの時間帯も館内に常に2人の社員がいる状態で3交代制。これに清掃要員としてパートスタッフが加わる。社員は、清掃もフロントも施設管理もすべて行ないます。もちろん、社員は支配人だけであとはすべてパートスタッフで運営するという考え方もあると思いますが、当社では、宿泊施設としての基本である安心・安全・清潔・快適を確保していくためには、この体制が必要だと考えて以前からこの体制を続けています。

――人件費は大きくなりませんか。
内宮 昨年の当社の人件費率は29.5%。一般的なこの業界のホテルより高いとは思います。しかし、支配人以外すべてパートスタッフとしても、現状の運営レベルを維持するにはパートスタッフ数を増やすことになり、それほど人件費の圧縮にはならないと思っています。少数精鋭・高能率・高品質・高賃金というのが基本の考え方です。

――やはり社員はパートスタッフとは意識、意欲が違いますか。
内宮 採用時はそうとは言い切れません。しかし、社員にはしっかりとした教育ができることが大きい。私自身、当社の社員は、間違いなく優秀だと断言できます。

――どのような教育ですか。
内宮 ビル型とモーテル型では動きが違いますから、具体的な業務指導は、すべて支配人がOJTで行ないます。重視しているのが集合研修です。入社半年以内に1回目、その後、1年おきに2回、計3回行ないます。それぞれ1泊2日で約20時間。私自身が講師を務めます。第1回目の冒頭には、当社のホテル事業に対するヴィジョンなどの説明も行ないますが、基本的に人生や生き方のモチベーションを高めることを目的にした内容です。同時に、経営者である私の考え方、性格、人となりを理解してもらう。私も研修を通して社員を理解する。この研修を通して、社員と経営者が意識を共有できるようになる。これが当社の最も大きな強みだと思っています。

――採用難の時代、社員の採用状況は。
内宮 現在、総社員数は約90人。平均年齢が40代前半。毎年2割前後が入れ替わります。経営者と意識共有ができても、それぞれ事情があるから仕方がない。社員の募集に関しては、社会保険や賃金も含め良好な労働条件を提示するので応募数も多く、十分に吟味したうえでの採用ができています。

――社員中心の運営の効果は。
内宮 ラブホテルは、基本的にお客様との対面がない施設とはいえ、私は完全な接客ビジネスだと思っています。ちょっとした対応の仕方次第で、信頼を得るか不信を抱かれるかが分かれる。接客対応の質は非常に重要です。この質は告知・アピールできるものではありませんが、利用していただくお客様には確実に伝わると思っています。そのためにも経営者の考えを理解している社員の対応が必要です。
 その一方、清潔・快適の要素に関しては、強くアピールしていこうと思っています。今年から各店舗で、注目の布団クリーナー「レイコップ」を毎回の清掃で使用し、掛け布団や枕等もハウスダストが出にくい長繊維エンドレスファイバーに切り替えました。これらは、客室内のPOPだけでなく看板やHPでもアピールしています。
 これまでも当社ホテルでは清掃に力を注ぎ、見た目のキレイさには自信をもっていました。しかし、現代人が求めているのは、目に見えない部分も含めた本当の清潔さです。各種スイッチ類なども、多くの人が必ず触るだけに本当にキレイなのか。疑問を抱かれるなら、使い捨ての除菌シートで拭き取る対処をする。“お客様が触れる部分は絶対に安心できる清潔さです”と言い切れるように、初歩的な部分からすべて見直しを進めています。手間がかかる地道な作業で、急速な組数増加にはつながらないでしょう。しかし、ラブホテルのイメージを向上させ信頼感につながる、重要な第1歩だと考えて取組んでいます。