[リニューアル対談]<デザインの視点・運営の視点> ・・・浴室改装の現状と今後求められる浴室の魅力

 デザインと運営の両視点からリニューアル内容を考える連載対談。今回は特集に合わせ、浴室改装の現状と今後求められる浴室の魅力について、検討していただいた。

浴室改装に取組むホテルが増えてきた

――昨年頃から浴室の改装が増えてきているように思われますが。
関口 この数年、浴室の老朽化が進み改装したいが予算が取れずに我慢してきたホテルも多い。それが、ここにきて融資環境がよくなったこともあり、浴室も含めた改装に取組むホテルが増えてきています。
嶋野 これまでは浴室の改装はコストがかかるから先延ばしにする、というケースも多かった。でも、客室内のクロスや家具がキレイになっても、浴室や浴槽が老朽化したままでは、改装効果は期待できません。客室入室後のカップルのストーリーは、浴室から始まる。そこで気分が盛り上がらなけば……再来店にはつながりません。

――コストを抑えて浴室のイメージを変えたいというホテルも多い……。
関口 壁面の1面、あるいは一部にタイルの上からビジュアルシートを貼る手法が、最も低コストでイメージが変わります。タイルの色味やホテルのイメージに合わせた写真や図柄なら違和感はありません。また、照明をダウンライトや間接照明にすれば雰囲気がかなり変わります。
嶋野 ただし、浴槽自体が経年劣化していると、壁面変更等だけでは厳しいですね。浴槽のコーティングという方法もありますが……。
関口 あくまで短期的な対処方法と考えたほうがよいと思います。
嶋野 近年の浴槽は白色が主流。赤や黄色の浴槽は、どうしても“昭和”を感じさせてしまいます。
関口 白色以外でも使い方次第です。マイクロバブルの浴槽に黒色を採用したケースがあります。マイクロバブルの白い水が際立ちますよ。

――浴室を改装する際に、在来工法かユニットバスかの選択については。
関口 基本的に浴室の広さで選択します。1坪程度の浴室ならユニットバを勧めます。在来工法で防水から作り直すとユニットバスに比べて2倍程度のコストがかかってしまう。一方、面
積の広い浴室なら、在来工法で遊びや癒しの要素を採り入れて、ホテルのアピールポイントにする。特室は在来で、一般客室はユニットでという併用ケースも多いですね。
嶋野 最近のユニットバスはデザイン的な見栄えもいい。従来のようなマンションの浴室というイメージではありません。
関口 壁面や床面のパネルも50 ~ 60種類のデザインから選べる。シャワーや照明、浴室TVなど各種機能もオプションで選べる。一般家庭とは違うイメージを出せます。
嶋野 浴室自体はシンプルながら改装してキレイにした。でも、何か一般家庭とは違う楽しさを打ち出せないか。
こういった相談も多い。これには、各種バスグッズの活用が有効です。フラワーバスにする、アヒルのオモチャを浮かべる等々。“紙パンツと水鉄砲で遊ばせましょう”と提案すると困った顔をする経営者もおりますが、お客様には結構利用されています。東急ハンズなどに行くとさまざまなバスグッズがあり、面白そうなものがたくさんあります。業者さん任せにせず、自分で探し出し採り入れていくことが必要です。小物とはいえ、いつも何か目新しいもの、面白いものを提供していれば、お客様の好印象につながります。
関口 入浴剤バイキングを行なうホテルが増えていますが、カップルが入浴剤を楽しげに選んでいる姿を見ると、ほほえましいですよね。
嶋野 入浴剤バイキングには注意点がいくつかあります。さまざまな匂いが混じり合うので、設置場所の空気の流れを考えることが必要。また、ロビーのデザインを考慮したうえでの装飾や照明の工夫が必要。もうひとつ、浴室に色が付着してしまう入浴剤もあるので、一度試してから採用することが大切。さらに、ロビー周辺で入浴剤バイキングやシャンプー・リンスの貸出を行なう際には、お客様がスムーズに手に取って客室に向かえるような動線設定が大切で。

高単価でも利用したい訴求力のある浴室を

――集客力になり、高単価でも利用したいと思われる浴室空間とは。
関口 やはり露天あるいは半露天の浴室です。ガーデンレストランで会話やお酒を楽しみ、そして浴槽もある……そういったイメージの空間です。浴槽はメインではなく、いわばその空間のトッピング。お洒落なソファやテーブルを置き、大画面TVが見られ音楽も聴ける。照明はシーン調光です。同時にローションプレイにも使えるマットもさりげなくある。そしてマット上部にはレインシャワー。いわゆるスケベ椅子を置くとデザイン的にそぐわないので、同様な使い方もできる介護用の椅子を置く。
嶋野 客室と同じような発想で作り込んだ空間ですね。
関口 そうです。こういった浴室空間のある客室を、都心部と地方のホテルに設けましたが、ともに高単価ながら高稼動しています。
嶋野 魅力的な浴室空間は、やはり訴求力が高い。高料金でもその客室を利用したいというお客様は確実にいます。露天風呂やサウナ、岩盤浴、それにエステ器具等も加えてスパリゾートを創り上げれば大きな魅力になる。宣伝広告にも有効に使えますね。
関口 コストはかかっても、費用対効果は高いと思います。

――運営面から見て清掃やメンテナンスの手間は。
嶋野 もちろん、そのような浴室の維持管理には手間が掛かります。でも、お客様が望んでいて単価も取れるわけですから、それには対応していくべきです。確かに露天にすると風雨に晒され劣化も早く、メンテナンスコストも考慮して臨まなければなりません。しかし、シティホテルとの明確な差別化になり、レジャー・ラブホテルの魅力を訴求できる要素として重要です。

――その他、今後、浴室の魅力を向上させるうえで考慮すべきところは。
嶋野 タオルやバスローブの品質ですね。直接、肌が触れるだけにクオリティがわかりやすい要素です。
関口 高品質なリネン類は、シティホテルにおける贅沢感の要因の1つといえます。魅力的な浴室を設けたホテルでは、タオルも重量だけではなく糸の種類も指示しています。
嶋野 タオル類は、巻き方や設置の仕方のちょっとした工夫で、お洒落に見せることができます。そのちょっとした手間が大切です。シャンプーやアメニティ類も業者さん任せではなく、いま女性に流行っている商品を常に採り入れていくことでホテルのイメージが変わります。浴室は、浴室自体に加え、周辺のアイテムも含めて見直すことで、ホテル自体の訴求力を大きく向上させることができると思います。

■連載バックナンバー
[リニューアル対談 ⑨]<デザインの視点・運営の視点>・・・老朽化の進行への対応
[リニューアル対談 特別編]<デザインの視点・運営の視点>・・・地方ホテルの活性化
[リニューアル対談⑧]<デザインの視点・運営の視点>・・・非日常性を再考する
[リニューアル対談 特別編]<デザインの視点・運営の視点>・・・商売と商業施設としての基本を重視、“変化”がお客様に伝わる改装が必要
[リニューアル対談⑥]<デザインの視点・運営の視点>・・・単価アップと集客力
[リニューアル対談⑤]<デザインの視点・運営の視点>・・・シティ・ビジネスとの競合に打ち勝つ
[リニューアル対談④]<デザインの視点・運営の視点>・・・ローコストリニューアル
[リニューアル対談③]<デザインの視点・運営の視点>・・・客室空間の再検討
[リニューアル対談②]<デザインの視点・運営の視点>・・・立地特性の変化への対応
[リニューアル対談]<デザインの視点・運営の視点>・・・現状の問題点と対応策

PROFILE

㈱トラスター 代表取締役 嶋野宏見
(しまの・ひろみ)
関東を中心に30店舗を運営受託。コンサルティングにも対応。ホテル歴25年以上のキャリアを活かした運営手法で顧客満足と利益確保を両立。
㈱Hale Design 代表取締役 関口達也
(せきぐち・たつや)
1996年に現設計事務所を設立し、堅実な設計と柔軟なデザインで関東を中心に数多くのラブ/レジャーホテルを手掛ける。一級建築士
掲載 LH-NEXT vol.24(2015年4月30日発刊)