運営企業の新戦略:(株)グランクール

 東京の都心部、地下鉄・水天宮前駅から徒歩5分のビジネス街に、3月3日、「HOTEL COREST(コレスト)」がオープンした。この地上8階建・18室のホテルは、オフィステナントビルをコンバージョンしたもので、企画・開発は、㈱プロシャン/㈱グランクールだ。本稿では、㈱グランクール代表取締役・吉田健氏に、コンバージョンによるホテル開発の採算性や用途変更も含めた改装のポイントを聞いた。

オフィステナントビルをホテルに用途変更

――「HOTEL COREST」のオープンまでの経緯からお聞かせください。
吉田 昨年8月に、オフィステナントビルを取得して、旅館業への用途変更手続きに約3か月。その間に、改装内容や予算等の検討を進め、用途変更の確認ができた12月に着工し、今年2月末に竣工、という流れでした。私自身、昨年に運営会社の㈱グランクールを設立していましたが、㈱プロシャンに在籍中にこのプロジェクトをスタートさせており、今回は、両社のコラボレーションで進行しました。

――今回のコンバージョンの背景は。
吉田 ラブホテルの運営を受託していた事業者から都内での物件取得を依頼されていたのですが、現在、都心部でビジネスやラブホテルの売却物件は非常に少ない。売却物件があっても価格が高く改装費も加えると、事業として採算が取れない。それなら、一般のビルを取得し改装してホテルにすればよい、という発想です。
 実際、約10年前にプロシャンがオフィステナントビルを「ホテル ダブル」(東京・芝浦、14室)にコンバージョンした実績があります。このホテルは、オープン以降、1室1か月50万~ 60万円の安定した売上を持続し、高い収益性を実現していたので、これまでも機会があればコンバージョンに取り組みたいと思っていました。今回の事業者も、「ダブル」の実績から高利回りを確認し決断に至りました。オフィステナントビルの売却物件は少なくありませんが、十分な利回りが確保できるような、ホテル用途に適した立地と建物内容、売却価格の物件となると、簡単には見つからない。立地がよくて高額の改装を施せば、良好な稼動・売上は実現できる。しかし、投資額が大きすぎて事業として成り立たなければ意味がありませんからね。

――今回の物件内容は……。
吉田 建物は築25年。ギャラリーや歯科医院、オフィスなどが入居していた8階建てのビル。ちょうど、テナントが退去して空き状態というタイミングの良さもありました。複数の入居者と退去の交渉となるとコストも手間も時間も掛かってしまうので避けたいところです。
 また、ビル自体に外階段があり2方向の避難経路が確保されているなど、旅館業への用途変更で求められる建築基準法や消防法が定めている要素を満たすために、大きなコストが掛からない建物でした。今回は、消防法への対応でエレベータホールを一部改修、そしてホテルとして営業するためにボイラーと配管は新設しています。物件選択においては、建築時には適法でもその後に法改正があり、改装時にはそれに適合させなければならない既存不適格も含めて、確実にチェックしていくことが必要です。

訴求力と収益性をラブホテルのノウハウで実現

――都心部のオフィス街立地における集客戦略については。
吉田 基本的には、ビジネスとシティの中間に位置する小規模ホテルとして、カップル客をメインターゲットにしながら、ビジネス客、ファミリー客も取り込んでいきます。
 料金は、一般的なビジネスホテルより高い設定です。しかし、客室内装は、一部壁面にオブジェや大胆な柄のクロスを使用するなどで、ビジネスホテルの無味乾燥な空間ではありません。浴室も大きな面積は取れませんでしたが、3点ユニットではなく浴室・洗面・トイレの独立型。映像面のアミューズメント機能としてVODを備え、TVは42インチ。ラブホテルから見れば小画面ですがビジネスホテルから見れば大画面です。その他、ラブホテルでは一般的ですが、電子レンジなども備えアメニティも充実。フランスベッドの最上級マットを採用し、ガウンやリネンも品質重視で臨んでいます。
 ラブホテルでは当たり前の要素を適度に採り入れることで、大きなコストを掛けずに、ビジネス・シティホテルにはない雰囲気や機能を実現し、訴求力のある客室空間が可能になります。
 反対に、ラブホテルのような自動精算機や館内管理システムは不要。一般的なビジネスホテルのオペレーションをすれば、弱電関連の設備はVODを入れても1,000万円程度で対応できてしまうなど、投資額はラブホテルに比べかなり抑えることができます。
 料金システムは、宿泊チェックインを16時、22時の2通り設け、デイユースは6:00 ~ 16:00が6時間利用、16:00 ~ 24:00が3 時間利用で設定。利用者のニーズに合わせながら、高売上につながるラブホテルの利用システムを採り入れています。
 客室の空間や設備面だけを見れば、郊外立地のラブホテルのほうが魅力的でしょう。しかし、都心立地のビジネス・シティホテルと比べれば、こちらのほうが魅力的。こういった内容で、ビジネス・シティホテルの利用者、さらにラブホテルに対してこれまで抵抗感のあったカップル客を集客していく考えです。

都市型ホテルの新たな開発手法

――事業収支や利回りは。
吉田 軌道に乗るまで、ある程度の時間はかかると思いますが、デイユース1.3回転、宿泊0.7回転で1室1か月約60万円を見込んでいます。経費率は約45%。取得および改装の総投資額が4億円弱。利回りは20%前後となります。1 室1 か月50万円でも17、18%の利回りが確保できます。都内で既存のラブホテルを取得しようとすれば、現在は20室規模で3億~4億円、それに改装で1億円を投じて、1室1か月50万円前後の売上……。これでは10%程度の利回りしか得られません。
 一般のビルからのコンバージョンによるホテル開発は、大きな利回りを実現するといえます。用途変更自体は、各種法令を遵守すればよいので難しくはありません。ただ、用途変更にどれだけコストがかかるのか、各種法令を念頭に置いて物件を選択することが重要となります。
 もうひとつ、小規模ホテルに対しては、保健所がラブホテル(4号営業)に該当するのではないかという見方をしがちです。今回もそういった指摘をされましたが、4号の該当要件はすべてクリアしており問題はありません。
 利用者に対してはラブホテル的な快適性と機能性を提供しながら、ラブホテルのイメージを払拭した宿泊施設としてアピールし、新しい利用者の開拓ができる。同時に、事業者にとってはラブホテルと同等の高収益性がある。一般ビルからホテルへのコンバージョンは、都心部における新しいホテル開発手法と考えています。
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