運営企業の新戦略:(株)安心オペレーションズ

 群馬県高崎市に、昨年12月17日、リニューアルオープンした「HOTELHIBISCUS高崎」。新規参入を望む経営企業に向けて、㈱安心オペレーションズが、物件取得から改装、運営までトータルなサポートを行ない、十分な利回り確保を目指したホテルだ。本稿では、その経緯も含め、同社代表取締役・田中政美氏に、運営企業としての新たな取組み方について聞いた。

高売上でなくても十分な利回り確保は可能

――「HOTEL HIBISCUS高崎」の取得からリニューアルオープンまでの経緯をお聞かせください。
田中 当社が運営管理するホテルは、当社グループ所有と外部企業所有の二通りあります。これまでは基本的に、両ケースとも所有企業と運営受託あるいは賃貸の契約を結び、運営を行なうことが当社の業務でした。今回に関しては、新規参入でホテル取得を希望している企業に、物件を紹介し取得から改装、運営までトータルにサポートした事例といえます。
 新規参入者にとっては、この業界に興味はあっても詳しい知識はありません。あくまで信頼関係が重要になりますので、詳細にわたり納得してもらえるまで話合いを行ない、そのなかで、4 号営業取得のためのM&Aの手法や、金融機関からの融資に対するアドバイスやサポートも行なっています。もちろん、地域の市場調査や物件の現状確認をもとに、どのような改装でどれだけ売上が伸ばせるのか、緻密な分析を行ない、非常に手堅い数値の事業計画を作成・提示し、納得していただいたうえで、取得、改装に臨んでいます。

――物件選択の決め手は……。
田中 高崎市郊外の立地で、以前は10数軒のホテルが営業していたエリアです。近年は、国道のバイパス化や高速道路の開通などで車の流れが変わり、売上低下を余儀なくされているエリアです。このホテルも取得時には、20室で月売上が約490万円(1室1か月25万円)まで低下していました。ただ、建物は築30年ながら16年前に全面改装され、内装・設備も丁寧なメンテナンスが行なわれており、しかも4室には露天風呂もあるなど、ホテル自体の魅力は大きい。その一方、周辺に樹木が生い茂り視認性が低下し、新規客の集客が難しい状況でした。それらの問題点を解消するには、それほど大きな改装費はかからない。さらに「HIBISCUS」の名称に変更することで、北関東のグループ店舗との相乗効果からの集客も期待できる。事前の試算では、2,000万円弱の改装費で、月売上は約720万円(1室1 か月36万円)を予測しました。営業利益は40%弱、売却価格は1億円強でしたので、取得企業は十分な利回りを確保できると判断しました。

売上向上に必要な要素を見極めて改装に取組む

――具体的な改装内容は。
田中 都心部のように改装したからといって大幅な売上増加は見込めません。利回り確保のためには、予測売上を実現するために必要な要素を見極めて改装に取組むことが重要になります。まずは、視認性を妨げる樹木の伐採。そして、名称と看板の変更。お客様にホテルが新しくなったことを告知する最も効果的な手法ですがコストがかかります。そこで鉄塔看板、壁面看板ともインクジェットパネルを採用するなどでコストを抑えました。同時に壁面も色調が以前とは大きく異なる塗装でイメージを変更しました。
 一方、客室内は、メンテナンスが行き届いていたことから、壁面1面のクロスの変更や抱布・ベッドライナーの変更でコストを抑えながらイメージを一新。設備は、VODを導入しテレビもデジアナ変換からデジタルに変更。VODは初期費用を抑えるためにレンタル導入です。また、4号営業の利点を活かすべく一部客室に鏡やソフトSM器具等も採用。その他では、プロパンガス給湯を、ランニングコストの低減にもつながるガスバルク給湯のシステムに変更しました。
 
――料金や利用システムは。
田中 取得前に、周辺ホテルの料金システムや内容を調査し、それに基づいて見直しを行ないました。地域特性として、いわゆるデリヘル利用が少なく、滞在時間が長い。客単価を下げれば高回転するというエリアではないのでショートタイムなどは採用せず、高単価・低回転の方向で設定しました。

――改装後の稼動・売上の状況は。
田中 10月にホテルを取得し、11月は実際の状況を確認する意味もあってハード・ソフトを変更せずに営業を継続。11月の売上は約490万円。客単価6,800円で1.2回転。それが、12月は改装しながらの営業でなおかつ3日間クローズしたのですが、売上は570万円に増加。そして、3月時点では710万円まで伸びています。休憩が増えたことから客単価は若干下がり約6,000円、稼動は約2回転に伸びました。事業計画上の月売上720万円に達するには半年程度かかるとみていたのですが、予想以上に好調な立ち上がりを見せています。このエリアは、冬季以外は長野方面からの利用者も多いので、今後の売上はまだ伸びるとみています。
 客層も、改装前は中高年の常連客が中心でしたが、改装後は若年層の新規客が明らかに増えてきました。当社の運営の特徴でもあるイベントや飲食サービスなどにより、この新規客をリピーター化し、さらに集客向上を図っていく考えです。実際に、グランドメニューの変更で、飲食売上は約3倍に伸びています。

立地の変化も踏まえ物件の見極めが重要

――今後、このような新規参入者に向けたトータルサポートの取組みは。
田中 この業界に対して興味をもっている企業は少なくありません。従来に比べ売上が低下しているとはいえ、他業種に比べれば収益性はかなり高い。しかし、外部からは実情が分かりにくく、参入を躊躇しているケースも少なくありません。新規参入というのは既存店からみれば競合の増加ですが、業界の活性化のために重要だと思います。それだけに、新規参入の受け皿となるような取得から運営までトータルでサポートする取組みは、今後も重視していく考えです。
 実際に3月20日にリニューアルオープンした「HOTEL HIBISCUS武里RESORT&BUSINESS」(埼玉県越谷市。78~79頁参照)は、この取組みの第2弾です。また、今回のホテルの所有企業からも、改装後の実績を見て、2号店取得の依頼を受けています。
 新規参入者や投資家は、どうしても都心部のホテルに目が向きがちです。確かに都心部なら1室1か月50万、60万円といった高売上が実現できる。しかし、現在の高騰している売却価格で取得し改装費を加えたのでは、十分な利回りは得られない。都心部以外で、適正な価格で取得でき大きな改装費のかからない物件であれば、売上自体は低くても十分な利回りが得られます。ただし、道路事情の変化などで、近年は立地の善し悪しが大きく変化しています。さらに築年数の経過した建物も多い。それだけに物件選択と、コストも含めどのような改装でどれだけ売上を伸ばせるのか、その的確な判断が重要です。