[地方ホテルの活性化]㈲久保田商会 代表取締役 久保田正義

こだわりの空間・サービスでブランドを確立、地方都市で高単価・高売上を持続する
㈲久保田商会 代表取締役 久保田正義

 福島県会津若松市で3軒(46室)のレジャー・ラブホテルを経営する㈲久保田商会。人口約12万3,000人の地方都市で高成績を持続しているホテルづくり・運営への取組み方を、同社代表取締役・久保田正義氏に聞いた。

異空間の客室とこだわりのサービス

――貴社のホテル事業の沿革は。
久保田 父親が30年ほど前にビジネスホテルを開業し、それを15年前に私が引き継いでラブホテル「fine」(14室)に業態転換。その後、2003年にビジネスホテルを取得し「M’s」(12室) として開業。そして2008年に「deQ」(20室)を新築で開業して現在に至っています。

――この数年の売上の変化は。
久保田 当社の各ホテルは、売上の増減幅が小さく安定しています。「deQ」のケースでみると、新規開業後4年目で売上がピークになり昨年は微減でしたが今年はピーク年とほぼ同じ売上を予測しています。客単価約8,000円、1室1か月売上70万~ 80万円という状況です。開業から10年以上が経過している「M’s」も、途中で1度改装を施していますが、客単価8,500 ~9,000円、1室1か月売上50万~ 60万円という状況で安定した推移です。

――会津エリアの市場状況は。
久保田 市の人口は減少傾向で現在は12万3,000人。若者の流出が進みホテルの利用者数自体はやはり減少していますね。東日本大震災後には避難者の方々の流入があった一方で観光客が減少という状況で、ホテルも含め商業施設への震災の影響は県内の他地域に比べて比較的小さかったといえます。

――利用者数の限られた地方都市で高売上を持続している要因は。
久保田 客室空間の魅力とソフト面の魅力が半々。市内の他ホテルにはないデザイン性の高い客室を設け、こだわりのサービスに力を注いでいます。それらが、小規模な市場のなかで、高単価ながらもリピーターの確保につながっていると思っています。

――客室空間の特徴は。
久保田 決して広い面積ではなく、また高額な内装コストを投じた客室ではありません。ただし、カップルが親密な時間を過ごせること、そして一般家庭にも他ホテルにもない異空間であること、この2点を重視した客室空間です。客室内に高低差を設け掘り込んだ位置にベッドを設置したり、巻貝内部のような構造で通路をグルッと回ってベッドに辿りつくといった、遊び心のある客室空間もあります。
 また、昨年は2店舗に部分改装を実施して、一部客室へのテラス設置や屋上テラスラウンジの設置など、開放的な空間づくりにもトライしています。ただ、地方では客室は開放感があっても、店舗自体は開放感よりもプライバシー確保のほうが重要です。そのためにも地方においてはとくに4号営業が必須だと思っています。

――こだわりのサービスについては。
久保田 集客力の持続には、客室空間とサービスの両面からの訴求力が必要です。そのため、各種サービスにおいては、つねにオリジナリティを重視。例えば、シャンプーやアメニティ類の貸出品は、単純に数を揃えるのではなく、ケラスターゼやロクシタン、カラハリなど都会で注目されている最新の商品をいち早く採り入れる。飲食に関しても、ネスカフェドルチェグストやビストロティなど目新しい商品を積極的に採用し、調理メニューもひと手間加える。例えば無料モーニング1つとっても、和食なら卵焼きの味付けは砂糖・塩・醤油を選べる、洋食なら3種類の手作りパンから選べる、等々です。同時に、お客様に喜んでいただきたいというホテル側の気持ちを伝えるため、サービスの提供時や客室内の各所にさまざまなメッセージカードを添えています。
 細かな部分でのこだわりのサービスは、レベルを維持し常に新しい内容を盛り込んでいく。その継続が、難しいのですが最も重要です。利用者数自体が限られている地方都市において高単価で集客力を持続させていくにはこの方向しかないと思っています。それがブランド力となり口コミで定着していく。そのためにも、細部に渡って手を抜いたおざなりのサービスや運営はできません。

手間のかかる運営を支えるスタッフを育成

――手間とスキルの必要な運営。スタッフがカギを握ることになりますね。
久保田 当社ホテルの人件費率は、25 ~ 30%と一般的なホテルの数値より高めです。でも、これが当社ホテルの価値を創り出す原動力になっていると思っています。店舗ごとにマネージャー、主任、チーフを配し、今年は店舗外に企画開発部を設けて、マネージャーたちと連携しながら企画立案・実施や店舗管理・チェックを行なっていく体制としました。現場のスタッフが一生懸命に頑張っていても店舗内からの視点では見えない部分もある。より客観的な視点で店舗の改善を進めることができると思っています。

――スタッフの教育・育成は
久保田 マネージャーには年間2、3回は外部の各種セミナー等に出席させています。自社内でもチーフ以上を対象に年1回の勉強会を実施。また全体ミーティングも昼・夜に分けて月1回実施。その他にも、随時、マネージャーとは個別ミーティングを実施しています。やはり、経営者と管理者と現場スタッフが共通認識で運営に臨めることが重要であり、意思の疎通を図る場をつくることが大切です。また、一般スタッフのモチベーション向上のため、半年ごとに社長賞や皆勤賞などの表彰を実施。これには高級ホテルの宿泊や有名レストランの食事などの副賞を付けています。さらに事務所には表彰スタッフの顔写真を貼り出しています。
 その一方で、時給は変動性です。遅刻や注意勧告によって期間限定での時給低下もありえます。厳しいけれども楽しくやりがいのある職場環境。これがスタッフを育てていくうえで不可欠だと思っています。また、地方都市では、マイナスの口コミは致命傷になります。とくにスタッフや関連業者が発する口コミは信憑性をもって広がりますから、お客様はもちろん、スタッフや関連業者にも愛されるホテルづくりや経営が重要だと考えています。

――今後の貴社の展開は。
久保田 私自身、店舗を自らの目で見て感じる経営で臨みたいと思っており、多店舗展開はあまり考えていません。ただ、コンサルティングやプロデュースには対応していきます。すでに依頼もあります。地方の経済環境はまだまだ回復しておりませんが、ホテル自体の魅力を強化することで売上回復の可能性があるホテルは少なくありません。そのために当社のノウハウを活用していただけるなら、積極的に取り組んでいきたいと思っています。

〈掲載:LH-NEXT vol.22(2014年10月31日発刊)〉