[地方ホテルの活性化]A to Zグループ

多彩な異空間と充実のサービス地域ニーズを捉え商品力を向上
A to Zグループ(富岡開発㈱) 代表取締役 松本 暢(左)/ 同 ホテル事業部統括部長 江澤武史(右)

 AtoZグループは長野県内を中心に11軒のレジャー・ラブホテルを展開。中長期的に安定した収益確保の経営を基本に店舗拡大にも積極的に臨んでいる。地方都市で高収益を持続させる取組み方と店舗拡大の考え方を、同社代表取締役・松本暢氏、ホテル事業部統括部長・江澤武史氏に聞いた。

安定した収益確保をベースに投資を短期回収し次の投資へ

――貴社ホテル事業のスタートは。
松本 飲食業や不動産業を展開していた母体企業が、25年前に収益性の高さに着目してレジャー・ラブホテル事業に参入。10年ほど前からホテル事業を拡大すべく多店舗展開に本格的に取り組みはじめました。私自身は、ホテルマンを経て当社のゴルフ場を担当していたのですが、その拡大方針に伴ってホテル部門を担当。当時の3店舗から順調に店舗数が増加でき現在は11店舗となっています。

――この10年、売上低下傾向が進む中で店舗数を拡大……。
松本 10年ほど前から消費者の消費行動や価値観が変わりはじめホテルもその影響を受け始めたといえます。しかし、私自身は、ゴルフ場でも飲食や接客、サービスなど、いわばお客様への心配りの付加価値を強化して集客力を伸ばしてきた経験がありました。レジャー・ラブホテルにおいても同様の考え方で臨んだのです。それまでの装置産業からサービス産業としての取組み方……ハードの魅力に加え、企画力やサービス力も含めて利用者に訴求力のある価値を打ち出していったのです。
 ハードとソフトの両面からお客様のニーズを満たすホテルづくり・運営をすれば、厳しい市場環境下の現在でも、やはり他業種にはない高収益をあげることができる事業です。当社の基本は、取得・改装の初期投資を5年程度の短期で回収し、その後の5年で収益を蓄えて次の投資を行なう、という取組み方。そのためには中長期的に安定した収益確保が前提条件となります。

――具体的には……。
松本 同じ長野県内とはいえ、立地やホテル自体のポテンシャルによって客層もお客様のニーズも異なります。地域の、そのホテルのお客様のニーズを捉えた取組み方が必要です。例えば、昨春に取得し改装オープンした「AtoZ塩尻北」は3階建・28室のホテルですが、2階フロアは料金を抑え回転重視の方向で、初期コストを抑えるべく自社の建築事業部が対応。一方、3階フロアは高単価・高品質の方向でコストをかけデザイナーズルームとした。地域のニーズから、いわば1店舗で2つの客層に訴求力のあるホテルづくりを行なったのです。

――貴社の各ホテルの客室は、バリエーションが多彩なことも特徴ですね。
松本 “キレイ”なだけでは当たり前。プラスアルファの魅力がなければ集客力にはならないと思います。やはり客室空間には、驚きや面白さのある“異空間”が必要です。近年は、多くのホテルが同じような客室内装になってきているだけに、異空間の訴求力は高いと思っています。
江澤 「トレーニングジム」「ドキドキ診察室」「放課後の教室」といったテーマルームや、空間演出を施した露天風呂、シミュレーションゴルフや酸素カプセル、キッチンなどを備えた客室もあります。お客様の2~3割が支持すると思われるものは採用していく方向で臨んでいます。
松本 また、カップルのラブニーズへの対応はやはり重要です。しかし地方では、例えば本格的なSMに特化すれば支持する客数が限られてしまう。地方ではそこまでセグメントできない。女性も抵抗感がないように“あからさま”さを排除した演出が必要です。

良好な職場環境をつくり魅力的な飲食とサービスを提供

――サービス面では。
松本 飲食にはとくに力を注いでいます。地方のホテルにとっては集客と売上の両面から重要な要素です。
江澤 シーズンメニューなどで新鮮な魅力の提供にも力を注いでいます。今秋は3種類(カプリチョーザ、旬のきのこピッツァ、シトラスケーキピッツァ)の新作ピッツァを提供。その他、信州牛のプレミアムメニューや、居酒屋メニューなど多彩なオリジナルメニューを揃えています。月ごとに曜日別オススメメニューをつくりリーズナブルな価格で提供する店舗もあります。

――飲食提供にはスタッフ教育も必要。
松本 私が参入した当時、手間のかかる飲食やサービスは不要と考えるホテルも少なくなかった。そこで、まず店長に対しての意識改革から始めました。「お客様への心配りが伝わるサービスがあってはじめてお客様は満足しリピートする。昔のように待ちの商売ではなくなっている」と。店長の意識が変わると現場スタッフの意識も変わる。そうなると職場環境がよくなり、新人スタッフも自然に育っていくようになります。
江澤 当社ホテルでは、貸出品や販売品も含めて、お客様が欲しいと思うモノはすべて揃っている状態を目指しています。お客様からのオーダーでホテルにないモノがあれば、スタッフが近隣のコンビニ等に買い出しに走る。そういった運営で臨んでいます。

――現在の売上の状況は。
松本 既存ホテルは、1室1か月40万円台~ 60万円台です。全国的に売上低下が進んだこの数年もほぼ安定した状況で推移。一方、新規店舗では、昨春に取得・改装した「AtoZ塩尻北」は、前年比30%以上の売上の伸びを示しています。
 昨今、レジャー・ラブホテルの利用者減少が指摘されています。若者人口の減少や経済状況など、地方は大都市圏よりも厳しい状況にあり、供給過剰の状況は否めません。しかし、ホテルの利用者減少に関しては、社会的要因も確かに大きいのですが、それ以上に個々のホテルの商品力が問われていると思っています。
 メンテナンスと清掃で常に整備された客室で、随時、新しい異空間を提供し、心配りが伝わるようなサービスを実施していく。それによって、地方でも十分に事業計画に沿った経営ができると思っています。ただし、大都市圏のような高売上は難しい。商圏の市場状況を的確に把握して、現実的な事業計画で臨むことが求められます。

――今後の展開は。
松本 大都市圏の売上は魅力ですが初期投資額が大きくリスクも大きい。地方でも改装と運営の仕方で、売上を大きく伸ばせる店舗が少なくありませんから、現状では地方での店舗拡大を進めていく考えです。また、当社は内部に建築部門があり、企画や販促物制作を担うIT部門もあります。それらを活用することで効率的な運営ができますので、今後は直営展開に加え、運営管理の分野にも取り組んでいきたいと思っています。

〈掲載:LH-NEXT vol.22(2014年10月31日発刊)〉