「HOTEL BELLE GRAVE」経営者と設計者に聞く

ラブホテルの利点を確保しながら開放的なリゾート感と運営力で総合力を高めて集客力を強化
ベルワシントングループ/㈲丸文産業 代表取締役 伊藤多津治
㈱イデア綜合設計 代表取締役 田中正寛

 静岡県浜松市に6月29日にリニューアルオープンした「HOTEL BELLEGRAVE」は、4号営業ホテルの利点を活かしながら開放的なリゾート感のあるホテルづくりが推し進められた。改装の考え方と改装内容を、経営者の㈲丸文産業代表取締役・伊藤多津治氏と設計担当の㈱イデア綜合設計代表取締役・田中正寛氏に伺った。予算配分の優先順位を十分に検討して臨む

――ベルワシントングループのホテル事業の経緯からお聞かせください。
伊藤 愛知県豊川市で1970年に8室のラブホテルをはじめたのがスタート。その後、客室の増加、改装、新店舗の追加を進め、現在は愛知・豊川の「BELLE WASHINGTON & Ortista」( 38室)と「BELLE La TouR」( 41室)、静岡・浜松の「BELLE GRAVE」(51室)の3店舗を経営しています。
 私は2代目で、ホテル事業に携わったのが25年前。以前は、改装を施せばすぐに結果が伴いました。でも、この数年、市場環境が悪化し売上低下傾向が続き、改装しても結果が出るのに時間がかかるようになった。しかし、売上低下を食い止め回復させるには、やはり改装が不可欠だと思います。

――今回の改装の経緯は。
伊藤 BELLE GRAVEは8 年前に新築したホテルです。全面改装にはまだ時期が早い。当初は、コストを抑えた客室内装の変更を計画していました。そこで、田中先生に相談して、改装内容を検討し施設をチェックしていくと、さまざまな問題点が出てきたのです。
田中 一部、臭いと湿気のこもった客室があったのです。海岸に近いことから塩害と湿気によるダメージが進んでいました。この対策をしなければ建物自体の劣化が進んでしまう。お客様の目に見えず、集客力に直結しない部分に多額のコストが必要となる……。
伊藤 それなら当初予算を超えても、大きく売上回復につながる本格的な全面改装をしたほうがよいという結論に至ったのです。

――塩害や湿気の対策とは。
田中 吸気口に塩害対策用のフィルターを追加し換気システム自体を変更し湿気対策を施しました。ベルワシントングループのホテルは、清掃のレベルも非常に高い。それでも湿気は臭いを生みお客様の不満につながる。同時に結露によって建物や設備の寿命も縮めてしまいます。

――改装の方向、内容は。
田中 経営者にとってはできるだけ予算を抑えて効果を出したい。これは当然です。しかも短期的に効果を出すとともに中長期的視点も必要。予算配分の優先順位、変更箇所の取捨選択が重要です。
 客室内は、追加改装がしやすいですから、今回はコストを抑制し既存造作を活かしながらのイメージ一新を図りました。ポイントは照明と家具です。狭角発光のLEDで明暗を付ける演出を施し、質感の高い家具で統一しました。一方、TVの大画面化は60インチの導入を11室にとどめる等々、細かく費用対効果をシビアに検討していきました。
伊藤 一方、浴室の魅力はレジャー・ラブホテルにとって非常に重要です。既存の浴槽を活用しながら新たな魅力の追加をしていただきました。
田中 このホテルのリゾート感の象徴になっているのが7室に設けられた露天風呂。しかし、海岸からの風や砂を防ぐためガラス壁等で囲われていたのです。清掃やメンテの負担は増えますが、それよりも露天の魅力を最大限に打ち出そうと、それらを開放しました。また通常の浴室に関しても、調光ダウンライトとマイクロバブルの追加などで、魅力の強化を図りました。
 その他、充実した飲食サービスも特徴でしたので、その訴求力を高めるために11室にダイニングテーブル・チェアを導入。他の客室もソファ・テーブルを以前よりも高くして食事がしやすい環境を整えました。
伊藤 当初、違和感があるのではないかと危惧したのですが、見た目の印象もよく、従来の低いソファ・テーブルに比べ実に食べやすくなりました。

――共用部もかなり変更された……。
田中 ファサードは、イメージを変えるとともに動線も変更。従来も入・出の動線は分離していたのですが、それを明確にしました。開放的なリゾート感のあるホテルとはいっても、やはりプライバシーの確保は不可欠です。
 また、ロビーやエレベータホール、廊下も、造作の追加と照明の演出でイメージアップを図りました。
伊藤 入口から客室までの共用部の雰囲気は、やはりお客様の印象を大きく左右する重要な空間だと改めて実感できました。
田中 外観は、壁面を明るい色に変更し、ライトアップも変更しています。改装をお客様に知らしめるために外観のイメージ変更は必要です。
伊藤 夜間に田中先生と建物周囲を回りライトアップの状態を確認していったのですが、照明の角度等を1つ1つ数センチ単位で調整の指示をされていた。細部へのこだわりの積重ねが最終的な効果につながると思いました。

今後、求められるのは総合力の向上

――このホテルは4号営業ですが、4号ゆえの利点として重視したのは。
伊藤 2011年の風営法政令改正時に4号営業の届出をしましたが、プライバシーの確保を活かしたいというのが第一の理由です。客室内については、立地を活かし、寛いで長時間滞在できる開放的なリゾート感を提供する方向を推し進めたいと思っています。
田中 ホテルによっては、4号営業だから可能な性的な設備等が集客上、有効なホテルもあります。しかし、このホテルにはその方向はそぐわない。 
 現在のレジャー・ラブホテルの集客力には、空間デザイン、設備、オペレーション、サービス等々、総合力が求められます。このホテルは、まさに総合力で勝負する方向です。
伊藤 なかでも清潔感の徹底と確実なメンテナンスで不備のない空間、設備を提供していくことが最も重要だと思っています。お客様の心理として、何か1つ不備を見つけると、どんどん悪い部分に目がいく。最初の1つの不備を出さない丁寧な運営を持続することが重要だと思っています。
田中 以前のような高稼動は難しい時代です。となれば、単価が重要。適正な単価でお客様に納得・満足してもらうには、やはり総合力のレベルアップしかない。それは、宿泊施設のボーダレス化が進むなかで、有名ブランドのシティホテルに対抗していくうえでも必要です。シティホテルに優る空間や機能、レジャー・ラブホテルだからできるプライバシー確保の構造や運営、それを再確認してホテルづくり・運営に取り組むことが、今後のレジャー・ラブホテルが需要喚起していくうえで必要だと思っています。
伊藤 改装後に値上げを実施し客単価は8,000円前後。このエリアではかなり高い。それでも集客も伸び順調に売上回復が進んでいます。とくに露天風呂のある客室料金は高額設定ながら好調な稼動を示しています。高単価でもお客様が納得。満足して利用してくださる取組みが重要だと思います。

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