『新ラブホテル経営論』発刊 ――著者・嶋野宏見氏に出版の背景を聞く

関東を中心に30店舗の運営管理・コンサルティングを展開する㈱トラスター代表取締役・嶋野宏見氏が『新ラブホテル経営論』(テイダン・ラブホテル叢書/2,000円+税)を上梓、5月31日に発刊となった。嶋野氏に、出版に至った経緯を伺った。

衰退か進化・発展か、今という時代は分岐点

――『新ラブホテル経営論』を出版された経緯は。
嶋野 私は、現在、㈱トラスターというレジャー・ラブホテル運営管理会社で、関東を中心に30店舗の運営管理・コンサルティングに携わっています。最初にラブホテルの運営に関わったのが、1985年のいわゆる新風営法施行の直前でした。以降、数多くのホテルの経営・運営のサポートに取り組み、気が付けば、業界歴が間もなく30年になろうとしています。
 業界は、この数年で大きく変化しました。不況とデフレの進行、若者人口の減少およびセックスレス化、さらに2008年秋のリーマンショック、2009~2011年の風営法政令改正問題(2009年3月に改正が発表され11年1月に施行)、そして2011年3月には東日本大震災……、この数年は、過去に例のない猛烈な逆風に晒されてきたといえます。その結果、売上が前年比10%減少、20%減少といったホテルが見られるようになり、「10年前に比べて売上が半減した」といった経営者の嘆きも聞かれるようになってしまったのです。残念ながら廃業や売却を余儀なくされるホテルも増加しています。
 これまで、レジャー・ラブホテルという宿泊業態は、不況にも強い安定した高収益事業とみられてきましたが、近年は、業界内外から「儲かる商売ではなくなった」という声も聞かれるようになってきました。
 しかし、私は、このレジャー・ラブホテルという宿泊業態が、このまま衰退していくとは思っていません。この数年の厳しい市場環境下でも、売上を維持してきたホテル、売上を伸ばしてきたホテルが存在することも事実です。事業を拡大してきた多店舗展開企業もあるわけです。とはいえ、今という時代は、今後、この業態が衰退に向かうのか進化・発展に向かうのか、その分岐点にあると感じています。私自身、レジャー・ラブホテルに対して「お客様が喜び、事業者が儲かる」、素晴らしい事業だと思っています。それだけに、今後、この業界が再活性化し、さらに進化・発展していってほしい。そのために私自身の30年の経験やノウハウが役に立つのであれば、活用していただきたいと思ったのです。
 また、2012年から季刊『LH-NEXT』誌で、設計者の関口達也先生(Hale Design)との連載対談「リニューアル対談~デザインの視点・運営の視点」を行ない、さらに、テイダン・湯本隆信社長とも、お会いするたびに業界の現状やいま求められる運営・経営手法等について、喧々諤々、議論を重ねていました。その流れのなかで、私の考える、いま求められる経営・運営の在り方を1冊の本にまとめようという思いが生まれ、今回の出版となりました。

魅力の原点を見直し、負のスパイラルから脱却

――レジャー・ラブホテルの現状をどのように見ていますか。
嶋野 この数年、「何かしなければならない」と思いながらも、急激な売上低下や風営法の政令改正なども絡んで「身動き」できずに売上低下が進んでしまったホテルが少なくありません。しかし、多額の追加投資ができなくても、ハードとオペレーションの両面から改善を施すことで売上を回復できたケースが多数あるのです。また当社が管理していないホテルでも“ここをもう少し変えれば売上が上がるのに”と思うケースもたくさんあります。
 時代とともに市場環境は変わります。消費の意識・行動も変わります。レジャー・ラブホテルのお客様のニーズは、変化する要素と変化しない要素と両方あります。それらを踏まえ、現在のお客様が、自社ホテルを利用しなくなった理由は何か。利用してもらうためには何が必要なのか。それを見極めて問題点の改善と 魅力の強化に臨めば、売上は回復します。ホテルを繁盛させる方法論はたくさんあります。
 私自身、いま強く感じているのが、この数年、多くのホテルが「お客様に喜ばれる」ことよりも「利益の確保」を優先する状況が続いたということです。必要な追加投資をせずに、必要な経費を削減し、それで当面の利益を確保しようとしてしまった……。それが負のスパイラルに陥ってしまった大きな要因だと思います。いまこそ、レジャー・ラブホテルの魅力の原点を見直し、お客様に「レジャー・ラブホテルって、やはり楽しいところだよね」と思っていただく。それによって売上を回復し利益を増加させ、その利益により新たな魅力を付加していく。この至極真っ当な取組み方を、市場縮小時代にいかに実現していくか。それが、現在の低迷状態から脱し今後の進化・発展につながっていくカギだと思っています。
 よく運営会社は「経営者とWin-Winの関係を構築します」と言いますが、私は「お客様と運営会社と経営者の3者がWin-Winの関係になる」取組み方が必要だと思っています。あくまで「お客様に喜ばれる」ことがすべてのスタート。これは、客商売の原点です。それを再認識して経営の発想、方向を切替える。そこから、いまやらなければならないことが明確に見えてくると思います。
――ありがとうございました。

■ 『新ラブホテル経営論』内容

第Ⅰ章【運営・経営の新機軸】
●ラブホテル市場の現状……ラブホテルは儲かる商売ではなくなったのか?/利用者減少の理由(説得力のある〝言い訳〟/ホテル離れの本当の理由)/客層の変化をどのように見るか/需給バランスの崩壊、そして負のスパイラルへ
●ラブホテルの変遷……時代のニーズに対応し存続してきた歴史/客室空間の変化~現代人のニーズは何か/経営者の変化~二代目に求められる資質とは/社会的なイメージの変化~一般消費者の抱くイメージとは 
●ラブホテルの売上・利益の現状……売上低下の理由・背景/ラブホテルの経費考~削減してはいけない経費とは/立地が変わった~現在の好立地とは/収支の実態~1室1カ月20万円では継続できない 
●今後求められる新機軸……時代の変化への対応~いま取組むべきことは何か/収益構造の変化への対応~供給過剰下での重視点は何か/追加投資の考え方~求められる的確な予算配分 
●売却という選択と取得再生……売買の現状~売り手と買い手の隔たり/売れる物件・売れない物件~その違いは/取得ホテルの再生~取得費と改装費 
●運営管理会社の役割……所有と運営の分離~家業から企業へ/運営委託か賃貸か/    お客様と所有者と運営者~3者がWin-Win に 

第Ⅱ章【リニューアルと運営力】
●リニューアル:限られたコストで最大の効果を生む手法とは……リニューアルの意味・目的・効果/投資額の見極め方~予算ありきでいいのか/限られた予算での優先順位/経営者VS 設計デザイナー~リニューアル効果を最大に発揮させるために/マーケティングの重要性~勘からデータへ/4号営業ホテルのリニューアル~4号営業らしさの演出を/旅館業法営業ホテルのリニューアル~カップルの心理を捉える/プチリニューアル~考え方と実施手法/リニューアル効果を高める告知戦略 
●オペレーション:現場の運営力が売上をつくる……運営力でどこまで売上を伸ばせるか/現場の運営力(清掃・メンテナンス/フロントの接客・応対/イベント企画)/サプライズとホスピタリティマインド/人材の確保(人手不足・人材不足/教育・育成/労働環境の改善とコンプライアンス)/運営力の背景にあるもの 

第Ⅲ章【業界の今後を探る】
●嶋野宏見<㈱トラスター代表取締役>/インタビュアー:湯本隆信<㈱テイダン代表取締役>ロングインタビュー……業界史から見る現在/運営管理会社を問う/運営管理会社の本来のあり方/求められる「責任と義務」/レジャー・ラブホテルの経営・運営の基本/嶋野ラブホ経営塾/レジャー・ラブホテル出口論 

付録【レジャー・ラブホテル年表】 

≫≫『新ラブホテル経営論』ご購入の申込みはこちら
http://www.teidan.co.jp/news/whats-new/20140531.html