[特別インタビュー]消費税増税、 経費増加への対応策

㈱プロシャン 取締役 吉田 健 

 昨年の電気料金値上げに続き、円安の影響からの各種仕入の値上げも聞かれはじめている。さらに来年4月には消費税が増税となる。仕入経費もさらに3%増加するわけだ。この数年、経費削減で凌いできたなかでのさらなる経費増加は、ホテルの存続に関わる問題だ。直営4店舗、運営受託24店舗、コンサルティング2店舗を展開する㈱プロシャン取締役・吉田健氏に、経費増加、消費税増税への対応を聞いた。

円安影響で各種仕入の値上げも予測される

――昨今の経費増加の状況は。
吉田 昨年、電気料金が約15%値上げされました。当社ではLED化を進め、外構はほぼ完了、館内もかなり進んでいます。これにより電気料金は値上げ前とほぼ同額となっています。ただ今年の8月は猛暑。とくに旧式の単相200Vエアコンを使用しているホテルの電気料金は、LED化していても前年比3~4%の増加。これだけの猛暑ではやはり空調は節電できません。
 その他、重油価格はリアルタイムで変動しますが10年前に比べると3倍程度に値上がりしています。一方、各種の仕入れ商材については、現状では、一部食材を除き、まだ値上げには至っていません。しかし円安の状況を考えると、今後、重油を使うリネンや輸入素材を使った商品等、値上げが予想されます。

――人件費はいかがですか。
吉田 今秋の最低賃金は、約2%と過去最大の引上げでしたが、近年は多くのホテルが最低賃金以上の時給ですので、影響はあまりないと思います。それよりも、以前は、24時間勤務で隔々勤の日給月給といった特殊な給与体系が多かった業界です。これを労基法に則り残業代、深夜手当等を付加すると、15%前後の増加となる。すでに多くのホテルが対応していると思いますが、労基法のコンプライアンスは今後ますます求められますから、これも削れない経費増加といえます。

――NHKの受信料は。
吉田 これまでは店舗ごとの個別折衝で受信料を支払っていましたが、正式な事業所割引で支払えば増額となる。納得できない設定とはいえ、放送法という法律なので遵守の方向です。協会が折衝を行なっているので、それに同調して対応していきます。

消費税増税で経費もさらに増加

――さらに来年4月には消費税が増税となる。貴社の対応は。
吉田 料金は外税表示の予定です。8%の次に10%が控えている。内税では、すぐにまた料金変更をしなければならなくなります。
 また、各種仕入れ経費も、消費税の増税分が増加となるわけですから、内税で料金変更なしでは、やはり無理です。とはいえ内税で増税分を上乗せすれば、利用者からは値上げと思われかねない。利用者にとって、外税であれば透明性がありますから、納得して支払っていただけると思います

――精算時の手間がかかりませんか。
吉田 1円単位は切捨てで対応することになると思います。自動精算機も1円、5円は払い出せませんが、外税に対応できるようです。フロントでの料金徴収もコンピュータで料金が表示されるので、1円単位がなければそれほど煩雑さが増すことはないでしょう。

――円安影響、コンプライアンス、そして消費税増税。経費増加のなかで削減できる経費はありますか。
吉田 この数年、各ホテルは経費削減のさまざまな努力をしてきました。これ以上、人件費や備品・消耗品等を削減すれば、サービスが低下し、集客・売上の低下を招くと思います。残っている分野は、手間はかかりますが、在庫を最小にする努力くらいではないでしょうか。

――経費はますます限られてくる。そのなかで重視する経費とは。
吉田 ホテルには、化粧も必要、ホテル自体の体調管理も必要。しかし、優先順位は体調管理だと考えています。水の出が悪い、空調がよくない、臭いがある、といった衛生関連設備に関するクレームは致命傷になります。それだけにホテルの体調管理に関するコストは、優先的に確実にかけていかなければなりません。

借入を長期に変更しキャッシュフローを確保

――必要なコストの確保は。
吉田 そのためにも、キャッシュフローの確保が重要となります。納税後のキャッシュフローを考えると、借入を長期に変更して月々の返済額を減少させるという手法が有効です。当社では、昨年から関連ホテルの融資の借換えを進め、確保したキャッシュフローでホテルの体調管理を万全に整えるという方向で臨んでいます。

――どのくらい違いますか。
吉田 わかりやすくするために、詳細を省いた仮定の数字で説明しましょう
(詳細は『LH-NEXT vol.18』・39頁を参照)。
<前提条件>
・ 総投資額3億5,000万円(3億円を10年返済で借入、5年経過)。
・月売上=1,000万円(税別)。
<月返済額と納税後の現金>
・ 利回り17.1%(経費率50%)の場合の年間利益は6,000万円。
・ 月返済額が300万円なら(元金250万円+利息50万円)、年間返済額は3,600万円。
・ 年間利益6,000万円-年間返済額3,600万円で、現金残は2,400万円。
・ 利息は経費になるので、納税対象の利益は、年間利益6,000万円-年間利息600万円で、5,400万円。税率を42%とすると納税額は2,268万円。
・ 納税後の現金は、現金残2,400万円-納税2,268万円で、132万円。
              ※
 利回り17.1%という優良ホテルでも、月返済額が300万円では、納税後は132万円の現金しか残らない。利回り13.7%では赤字になってしまう。
 そこで、返済を長期化して月返済額を減少させると、月返済額が200万円であれば、利回り17.1%なら納税後でも1,332万円、13.7%なら636万円の現金が残る。100万円なら利回り6.9%でも納税後の現金が残ることになります。
 わかりやすくするために、オーナー法人の経費、建物・設備の減価償却費、返済利息の変動など、現実には関わってくる数値を省略した試算です。各種の節税対策も除外しています。それでも長期返済に変更して月返済額を減少させる効果の大きさが分かるのではないでしょうか。

――長期への借換えは簡単ではないでしょうが、金融機関に交渉してみる価値はありますね。
吉田 今後、アベノミクスや東京オリンピック招致で景気は上向くと思います。しかし一般消費者がその恩恵を受けるにはまだ時間がかかる。それまで、さまざまな経営努力でホテルの体調を万全に整える経費を確保する。さらに現在、健康体のホテルであれば、いま仕掛ければ、大きな効果につながる時期ではないかと思います。

〈掲載LH-NEXT vol.18(2013年10月31日発刊)〉