[リニューアル対談]<デザインの視点・運営の視点>・・・シティ・ビジネスとの 競合に打ち勝つ

 市場縮小の経営環境下において、集客力を回復させ利益が確保できるリニューアル(=新しい魅力の創出)とは何か。デザインと運営の視点から探る第5回目の対談。今回はシティ・ビジネスホテルとの競合に打ち勝つために何をすべきか、検討していただいた。

好調なシティ・ビジネス新規出店も相次ぐ

――年末から来年にかけてまた外資系シティホテルの開業が相次ぎ、2015年は第3次ホテル戦争といわれています。同時にビジネスホテルチェーンの新規出店も進んでいる。以前から指摘されてはきましたが、ここにきて真剣にシティ・ビジネスホテルとの競合も考えなければならない状況になっているのではないでしょうか。
嶋野 外国人観光客の増加もあり、シティ・ビジネスホテルは好調な稼動状況です。とくにシティホテルは、日本人のカップルにとっても、以前に比べ利用しやすくなっている。外資系の進出で格式が高いイメージからお洒落なイメージになり、料金もネット予約サイトなどでかなり割安で利用できるようになった。敷居が低くなっています。
関口 シティホテルは女性にとってやはりプレミア感があります。そのうえネットでの当日予約なら1万円台から利用できる。レジャー・ラブホテルの特室に泊るか、シティホテルに泊まるか。確実に競合にあるといえます。
嶋野 シティホテルのフロントロビーではアロマの素敵な香りが漂い、客室には一般家庭にはない高品質なベッドや寝具、リネン……。カップルにとって魅力的な非日常空間です。一方、レジャー・ラブホテルからは、どんどん非日常性が失われている……。

――高単価の優良顧客ほど、シティホテルに奪われる可能性が大きい……。
嶋野 多くのレジャー・ラブホテルが宿泊組数を減少させていますが、都市部ではシティホテルに奪われていることも一因ではないでしょうか。
 基本的に、設備やデザインを含めて客室を総合的に見れば、レジャー・ラブホテルのほうが快適で楽しいはず。多くの経営者もそう思っているでしょう。ただ、せっかくの最新のVODも大きな浴槽も多彩な食事やアメニティも、徹底した清掃による清潔感も、しっかりと告知しないと、お客様に伝わらない。その結果、若い女性などは、レジャー・ラブホテルの特室よりも新しくてお洒落なシティホテルに行きたいと思ってしまう。

――ビジネスホテルとの競合は……。
関口 ビジネス用途と、カップルのラブ用途は、全然違います。多くのビジネスホテルがデイユースを実施していますが、それほど利用されているようには思えない。確かに、最近のアパホテルなどは、高品質なベッドや大画面テレビなど、客室内も魅力的になってきてはいます。しかし、予約して宿泊者名簿に記入してといったわずらわしさを考えると、まだレジャー・ラブホテルの優位性が高いと思います。

――しかし、たとえば新宿・歌舞伎町。今後2年間でワシントンなど数軒・2,000 室近くがオープンする。これは歌舞伎町の現在のレジャー・ラブホテルの客室数とほぼ同数。さらに各地の大都市でも新規オープンが相次ぐ状況です。
関口 対ビジネスホテルを考えたとき、問題はレジャー・ラブホテルの老朽化です。定期的に改装が施され設備も整っていれば、ビジネスホテルが近隣に進出しても簡単には客は奪われないでしょう。しかし10 年以上も改装をしていないと、どうしても汚れや臭いが目立ってしまう。現在の利用者は、設備よりも新しさ・清潔さを選ぶと思います。
嶋野 最近は、ビジネスホテルでも浴室がガラス張りだったり、ベッドライナーを置いたりするところも見られる。レジャー・ラブホテルにとっては、まず老朽化対策。そして、シティ・ビジネスホテルにはない演出をもっとしていかなければならないと思います。大きな追加投資ではなくても、そういった演出はできるはず。以前は、狭い客室や浴室でも面白い演出のあるホテルがありましたが……。
関口 浴槽も、FRP の岩風呂や、なかにはスイカのデザインの風呂があったり……。他のホテルにはない面白さを打ち出そうと、一生懸命なホテルがたくさんありましたね。
嶋野 そういった楽しさを印象づける演出も、もっと必要だと思います。

老朽化対策が大前提新しい魅力の創出も必要

――レジャー・ラブホテル側にもシティ・ビジネスホテルの利用者を取り込もうとする動きもみられますが…。
嶋野 実際に1人で泊っても、ビジネスホテルよりも快適で便利だとは思います。しかし、現状のイメージではビジネス客を取り込むのは難しいでしょう。でも“ 大人の隠れ家” といった方向のホテルづくりをすれば、可能性はあると思います。
関口 ビジネス用途を考えると、客室内にクローゼットやデスクも必要になる。また今後、外国人観光客がさらに増えると思いますが、外国人の受入れはフロント対応などの面からも現状では難しいでしょう。
嶋野 シティ・ビジネスホテルは、オリンピック招致が追い風になるのは間違いない。しかし、レジャー・ラブホテルは、単純には喜べないと思います。風営業種の取締や、消防法、旅館業法等の規制の強化も予測されます。安心・安全面のコンプライアンスがさらに求められてくるといえます。

――女子会などは……。
関口 魅力は大きいと思います。中部地方のホテルですが、週に1、2件の利用ながら1人8,000 円で10 人の利用といったケースもあり、売上に大きく貢献しているようです。ただ、首都圏では、イメージの問題より前に多人数で利用できる広い客室を有するホテルが少ない……。
嶋野 女子会プランを打ち出していても、実際にはあまり稼動していないホテルが多い。しかし、女子会プランを打ち出すことで、にぎわい感を創出できる。“ 女性にとって魅力のあるホテルですよ” という印象を与えることができる。打ち出し方次第で、ホテルのイメージアップの効果は大きいといえます。

――シティ・ビジネスホテルとの競合が予測される地域で、今後レジャー・ラブホテルに求められることは……。
関口 繰り返しになりますが、老朽化対策が大前提。汚なさを感じさせる宿泊施設にはお客様は来ません。とくに清潔さへのニーズが強い現代の女性には選ばれない。これは、ビジネスホテルでも同じでしょう。
嶋野 その老朽化対策ですが、コスト抑制を優先して、自分たちでクロスを選んで貼り替える。確かにキレイにはなるのですが……。
関口 客室空間がトータルにコーディネートされていないと、やはり、ちぐはぐでチープなイメージの客室になってしまいます。
 統一のとれた現在的なデザイン、そして什器・備品等の品質や清潔さが同等であれば、レジャー・ラブホテルは、プライベート性が重視されていて、チェックインの利便性もあり、もちろんラブニーズも考慮されているわけですから、カップル客にとっての魅力は、他の宿泊業態には負けないはずだと思います。
嶋野 シティ・ビジネスホテルかレジャー・ラブホテルか、どちらを選ぶのか迷うような状況ではなく、カップル客にとっては“ レジャー・ラブホテルのほうが断然いい” と思ってもらえるホテルづくりが必要だといえます。しかし、現在の利回り優先の取組み方では、なかなか、そういった圧倒的な優位性を打ち出す取組み方ができない。
関口 この数年の厳しい市場環境もあって、高単価で集客できる魅力的なホテルをつくろうという意識が希薄になっているように感じます。確かに、エリアの上限を大きく超える売上をあげるのは難しい時代。でも、ある程度のコストをかけて改装したホテルは、確実に売上が伸びていることも事実です。
嶋野 近年、アーティストや企業とのタイアップでデザイン性の高いコンセプトルームを展開するシティホテルも見られます。高級感だけでなくアミューズメント性の部分でも非日常性が提供されはじめてきています。レジャー・ラブホテルも、進化し変化していかなければ、時代に取り残されてしまいます。
関口 コストを抑えた表装変更で古臭さを解消しただけでも売上は回復しますが、やはり中長期的な視点から考えれば、新しい魅力を打ち出し高単価で集客できるホテルづくりが求められると思います。外資系シティホテルや客室の内容にこだわった新しいタイプのビジネスホテルとの競合に打ち勝っていくうえでも、そういった根本的な取組みが必要ではないでしょうか。

■連載バックナンバー
[リニューアル対談④]<デザインの視点・運営の視点>・・・ローコストリニューアル
[リニューアル対談③]<デザインの視点・運営の視点>・・・客室空間の再検討
[リニューアル対談②]<デザインの視点・運営の視点>・・・立地特性の変化への対応
[リニューアル対談]<デザインの視点・運営の視点>・・・現状の問題点と対応策

PROFILE

㈱トラスター 代表取締役 嶋野宏見
(しまの・ひろみ)
関東を中心に23店舗を運営受託。コンサルティングにも対応。ホテル歴20年以上のキャリアを活かした運営手法で顧客満足と利益確保を両立。
㈱Hale Design 代表取締役 関口達也
(せきぐち・たつや)
1996年に現設計事務所を設立し、堅実な設計と柔軟なデザインで関東を中心に数多くのラブ/レジャーホテルを手掛ける。一級建築士
掲載 LH-NEXT vol.18(2013年10月31日発刊)