[特別インタビュー]男のエロ、女のエロ ~女性向けAVは、何が違うのか?~

 男性と女性では、エロの感性が違う。ラブホテルにとって、今後、女性のエロの感性を捉えたホテルづくりは重要だ。では、女性のエロの感性とは何か。女性向けAVレーベル「SILKLABO」のプロデューサー・牧野江里氏にインタビューした。

女性が好むAVとは

――女性向けのAV(アダルトビデオ)レーベル「SILK LABO」を立ち上げられた経緯からお聞かせください。
牧野 大学の映像学科を卒業し新卒でAV会社に入社。当初、ADとして制作に携わりました。でも、女性の視点からAVを見ると「そんな都合のいい女がいるわけないだろ!」と。AVというのは、女性に対する男性のファンタジックな妄想の世界ですからね。一方、現実世界では「自分の彼女はオナニーなんかしない」と言い切る男性もいて、これもAVとは反対の妄想といえると思うのですが……。
 そんななか、他業種とのコラボで作品をつくろうということになって、女性が経営する女性向けのアダルトグッズショップに話を聞きに行ったのです。そのショップでは、グッズだけでなくAVも結構売れていた。ただ、女性受けしそうな作品をセレクトして販売していても、内容には満足していないと言われた。「どれもこれも、どうして顔射で終わるの。こんなの嫌だよ」といった声も寄せられているというのです。
 そこで、女性の視点で女性のニーズに応えるAVをつくりたいと会社に提案。「女性向けのAVは売れない」といわれていたのですが、「予算を付けるから、好きにつくってみなさい」ということになった。さっそく社内の女性スタッフを集めていろいろ意見を交換。でもAV会社の女性と一般の女性はセックスに対する意識がかなり違うだろうということになって、約250人の女性モニターからも意見を聞きました。 
 すると「彼がAVを見て潮を吹かせようとする。でも痛いだけで嫌だ」といったセックスに対するさまざまな不満の声が出てきました。ちなみに、AVの男優さんは徹底的に深爪して痛くないように潮を吹かせています。爪の伸びた素人さんが真似をしたら痛いだけです。気をつけてくださいね。もちろん、セックスの不満を述べた彼女たちもセックスは好きだし気持ちのいいセックスをしたい。それなら、女性が嫌だと思うことを排除したAVをつくってみよう、ということになったのです。

――どのような内容だったのですか。
牧野 セックスのハウツウと、官能的なドラマと、2本つくりました。一般にAVは月2,000本売れれば成功といわれていますが、ほぼそのペースで売れ、とくに官能ドラマは、累計で1万2,000本のヒット作となったのです。ちょうど『an・an』のセックス特集の付録DVDを制作した時期であり、それがプロモーションになった。でも、販路はネット通販だけということも考慮すると、女性のAV需要は小さくないと確信できました。

――女性向け作品で男性向けと違うところは。
牧野 男性がAVを見てオナニーをするのは当たり前。でも女性にその文化はないわけです。AVを見て興奮させる、さらに商品として成立させる、けっこう難しいところがあります。
 基本的には、日常のセックスで欠けている部分を埋める、女性が「もっとこんなセックスがしたい」と思っている部分を表現していくということです。
 男性向けAVでは、女性の身体を見せるために、男優さんがかなり無理をした体位も少なくありません。とくに“ハメシロ”というのですが、抜き差し部分を撮るために、たいへんな格好で奮闘しています。でも、女性はそういったカラミを求めない。もっとラブラブ感のある密着したカラミを求めるのです。
 男性は、極論すれば、オッパイと性器のカットがあればいい。余計な要素を入れれば早送りされてしまう。でも、女性は「どうしてこの2人がセックスをするに至ったか」その過程の描写を求めます。それがないと満足してもらえません。この違いが大きいですね。だから、男性向けAVではまず見られないコンドームの装着シーンなども、あえて入れています。

女性は何歳になっても「乙女」

――これまで制作した作品数は。
牧野 10月時点で、DVDが34タイトル、ネット配信専用が30タイトルです。現在は、内容によって3つのレーベルでリリースしています。「SILKLABO」は、セックスのカラミはしっかりあるが前述のような女性のニーズを踏まえた内容。「COCOON」レーベルは、いわば初級編でもっとソフトな内容。「UNDRESS」レーベルは、上級編でロマンチックさを備えながらも非日常的なシチュエーションの刺激的な内容です。

――セックスの嗜好は、やはり多様化していますか。
牧野 現在の男性向けAVのバリエーションはまさに多種多様。でも、ファンタジーの世界ですから、現実的なセックスの嗜好とイコールではないと思います。いわゆるフェチのバリエーションも多彩ですが、女性の場合、例えば腕フェチといっても、腕そのものではなく、その腕の持ち主がタイプでなければ、満足してもらえない。ですから出演男優もイケメンを集めて、“エロメン”と呼んでいます。

――購買層は。
牧野 予想以上に幅広いですね。18歳以上、50代、60代の女性も少なくありません。また全体の1割くらいは男性です。にっかつロマンポルノのファンだった高齢者もいれば、過激さよりもラブラブ感がいいという20代、30代の男性もいます。

――女性は、年代によってエロの感性に違いはありますか。
牧野 女性は何歳になっても「乙女」です。エロメンたちのサイン会などを開くと、50代、60代の女性が、女子中学生が憧れの先輩を見るようなキラキラした瞳で彼らを見つめていますから。そのサイン会も、秋葉原のアダルショップで実施したときなど、早朝から行例ができました。その光景に私も驚きましたが、ショップを訪れた男性客が、何ごとかと驚いていました。

――ラブホテルに対しては、どのようなイメージをお持ちですか。
牧野 一人暮らしなので、あまり利用はしないのですが……郊外のホテルを利用したとき、客室は広いし露天風呂もあるし、それで宿泊料金は2人でなんと7,500円。シティホテルよりもずっと魅力的です。ただ、都心のホテルはどうしても狭い。ドアを開けてすぐベッドだったりすると「セックスするだけ!」という感じで、男性はやる気満々だからいいのでしょうが、女性はちょっと……。気持ちが盛り上がるための過程がほしい。ラブラブ感が高まるような仕掛けや演出があると嬉しいですね。

――SMなどの設備に対しての女性の見方は。
牧野 一般の女性にとっては、SMを好むか好まないかの前に、やはり清潔感ですね。知らない女性が使ったかもしれない三角木馬には跨りたくないです。新品なら一度使ってみようかと思いますが……。とくに肌が直接触れるような設備は、とにかく清潔さがわかるようにして提供してほしいです。

――最後に、今後、どのような作品を。
牧野 女性にも多様なニーズがありますから、ジャンルを広げていきたいと思います。また、女性の購買者からは「私も、彼とこんなセックスがしたい」との意見がたくさん寄せられています。男性と女性で、AVやセックスの嗜好が違うというところで終わったのでは、男女が平行線のまま。男女がお互いに気持のいいセックスができるきっかけになるような作品をつくっていきたいですね。

PROFILE

SILK LABO プロデューサー
牧野 江里
(まきの・えり)
1984 年、静岡生まれ。2006 年にAVメーカー・SODクリエイトに新卒で入社、ADとして作品制作に携わる。2009 年に女性向けAVレーベル「SILK LABO」を立上げ、女性向けAV 制作に専念。『an・an』セックス特集付録のDVD 制作も担当。昨年は、女性のAV 観やセックス観をまとめた『女子の保険体育』(宝島社)を出版。
掲載 LH-NEXT vol.18(2013年10月31日発刊)