[特別鼎談]今、問う。 「業界の現状と今後」

レジャー・ラブホテル業界の現在

湯本 私にとって、ご両人は公私に亘ってのお付合いをさせていただいております。その時間は20年も30年にも及ぶものです。そんな仲ではありますが、本日は業界の今日的問題、今後について、テイダンならぬ鼎談でお願いできればと思っておりますので、よろしく、お願いします。
 さて、現在の「レジャー・ラブホテル」の経営者の多くは、いわゆる二代目の方々が主流となってきておりますが、一方で各ホテルの「売上」の変化も大いに気になる部分でもあります。現状を、どのようにみておりますか。
脇田 いわれるように、売上の格差はどんどん広がってきているように思います。これは、少子化・若者の“風俗文化”・経済環境の変化、これらが、この10年の間に大きく変わったということでしょう。その変化に経営者側が対応できていない、ともいえると思います。さらにいえば、経営者側に変化が生じているということです。
湯本 経営者側に変化? 二代目ということではなくて?
脇田 今の経営者の多くは、先ほどいわれましたように、多くは二代目です。しかし、そこに「投資家」の存在が台頭してきているわけです。この「投資家」の存在は、一度は、10年ほど前に撤退しました。それが、「ラブホテルの証券化」の時代でもあったわけです。それとは別の形で、「投資家」が、再度登場してきているわけです。そのことによって、業界の絵図が変わってきたこともあると思います。
湯本 「投資家」の経営・管理する「レジャー・ラブホテル」とこれまでの経営者というのは、別もの?
脇田 まったく、別です。「投資家」というのは、目先の、直近の「利回り」を求めるわけです。5年も10年も待って、売上げを上げるということは考えておりません。「今、投資した資金がナンボの利益を生むのか」ということです。
古賀 したがってそこには、改装であれ、設備投資あれ、再投資ということは考えられません。改装したとしても、表層改装くらいでしょう。
脇田 1カ月・1ルームの売上が、100万円であっても、20万~30万円であっても、いいわけです。利回りがよければ。今年に入って、「円安」になりましたね。そうすると昨年に比べて、「投資家」が求める「年利」は、12%くらいまで下がってはいますが、彼らが求める「利回り」は、17%なり20%といったところです。
湯本 しかし、20%も回るなら、「売り物件」(ホテル)はそう簡単には……。
脇田 ないですよ。ですから、「ホテルの価格」というのは、今現在の「利回り」で決まるともいえるわけです。もちろん、ホテルから別の業態、たとえば介護施設やコンビニに転用ということになれば、また違う価値観がでてくるということです。
湯本 「レジャー・ラブホテル」の所有・運営形態も、この10数年で大きく変わってきている。
脇田 そうです。大きくは、3つに区分することができるでしょうね。1つ目は、「所有して、営業する」というものです。これは、従来からの基本的なパターンですね。2つ目は、「所有しないで賃借する」というものです。この場合、運営受託会社が固定費で借りる、というものです。3つ目は、「所有権・営業許可はオーナーさんが持つ」というもので、運営受託会社は「運営・管理をする」というだけのもので、運営会社は売上ではなく、利益の何%かを受けるというものです。
湯本 運営会社に委託する。2つ目や3つ目のパターンですが、これらが増加してきた背景は、どのような理由が考えられますか。
脇田 経営者の高齢化。さらには、時代に対応した経営ができづらくなってきたこと。そして、「投資家」が増加してきたことによって、経営・数字に強い、「運営会社」がでてきた、ということになるでしょうね。

二極化の中での、ホテル経営

古賀 したがって、現在の「レジャー・ラブホテル」というものは、完全に「二極化」している、ともいえるわけです。
湯本 運営・管理の在り方で……。
古賀 そうです。脇田さんがいうように、1つ目のパターン「所有して、営業する」経営者の方々というのは、少しでも売上を上げるために大変な努力をしている方は少なくないわけです。これは、ホテル経営のみならず、一般の会社とて同じことでしょう。毎日、自分のホテルに行って、店長・従業員から報告を受け、設備・システムのチェック。「ホテルの経営」というものに、“熱”がある。これが、「レジャー・ラブホテル」の本来の経営であったわけです。もう少し具体的にいえば、「その誘導看板」の位置は運転者から見て適正なのかどうか。来年4月から増税になるわけですね。そうすると、看板の料金表示をどうするのか。客室内の設備・システムは正常に作動しているのか。バスタブは傷んでいないか。いくらでもチェックするところはあるわけです。
 ちょっと余談ですが、多くのホテルが好きな、いわゆる「ホテル屋さん」は、“モノづくり”が大好きな経営者が多いですね。
脇田 そうそう。“モノづくり”大好き人間。これこそ、ホテル経営の本質ですかね。
 手先が器用で、つねにチョコマカ、チョコマカ動いている。ある時は、お客さま目線で、ある時は経営者の目で、そして支配人・従業員の目で、ホテルを見ている。そして、第三者から見れば、どうでもよさそうなものに、拘っている。これが、「レジャー・ラブホテル」のオーナーの本来の姿です。
 さらに余談になりますがね。同じ清掃であっても、「経営者・支配人(店長)・従業員」の三者の遣り方、目の位置というのは、まったく違ってきます。本来の経営者は、“モノづくり”の心をもった清掃になり、支配人は管理するだけの清掃であり、従業員はいわれただけの清掃でしかないわけです。したがって、今の二代目の方々も若いうちに「他人のメシ」を食べていれば、もっともっと“モノづくり”が解る経営者になると思います。
湯本 それが、2つ目・3つ目になると、違ってくる?
古賀 今現在の利益を求めるわけですから、余分な投資・出費は極力しないということです。
湯本 そうしますと、改装・リニューアルに対する考え方も自ら変わってくる。かつて、「レジャー・ラブホテル」業界というのは、5~7年で大きな改装をしていた。そのことによって、集客・売上を維持し、さらには拡大していた。ところが……。
古賀 今は、そのような改装例は多くはありません。もちろん、今日でも「建替え」要請はありますが、「建替え」なり「新規」というのは、少ない事例でしょう。この約10年を振返ってみても、理解できるでしょう。10年以上も改装も、リニューアルも、さらには設備・システムさえもそのままでしたら、利用者・お客さんは増えますか。ホテルという施設が、ますます劣化・老朽化していく中で、新規のお客さまはいうに及ばず、リピーター客さえ、どんどん足が遠のくでしょう。たとえば、かつて好立地といわれた郊外のホテル集積地。10店舗なり、20店舗なりが固まっている“ホテル街”ですね。これらの“ホテル街”で、どこのホテルも改装・リニューアルをしなければ、多くのホテルが陳腐化し、その“ホテル街”は魅力がなくなり、ますます疲弊するということになるわけです。
 かつて、私が博多で始めた頃、新風営法の噂もあって、「もう、ラブホテルはダメだ」という空気が流れていました。しかし、調べてみると各ホテルは、「ホテルの空間」になっていないわけです。まるで住宅空間の延長でした。所轄の警察に聞いてみても、「新規ホテル」に反対しているわけではないですね。コンプライスを遵守すれば、いかようにも建設することは、可能なわけです。現在のホテルは、あまりにも劣化させすぎだと思います。
湯本 しかし、リーマンショック以降の経済事情、現在風俗文化の変更。そこに発生した需要と供給のアンバランス……。
古賀 確かに、その問題はあります。厚労省データによれば、「相手がいない男性は6割、女性は5割」といわれています。また、別のデータによれば「ラブホテルに行ったことのある女性は4割」しかいない、ともいわれています。裏を返せば、それほど魅力のある「レジャー・ラブホテル」としての空間が、あまりにも少ないともいえるわけです。一辺倒の、ワンパターン化された空間づくりから脱して、時代を俯瞰した、地域マーケッティングをし、経営者と利用者の両面からのセグメントが求められるということです。
脇田 改装・リニューアル時においては、「償却」との関係も、大きな問題です。
古賀 そういうことです。売上との関係からみれば、どう「償却」し、税対策をするかということです。そのことにおいて、かつては5年、7年で改装・リニューアルを行ってきたともいえるわけです。もちろん、売上げの中から、改装費・リニューアル費もキープされていましたが……。
脇田 「投資家」が所有するホテルは、「販売商品」としてのホテルであって、「償却」はしていない例が多くあるように思います。
湯本 さらに、改装時にも生じるであろう、ホテルの「耐用年数」に関して問題点はありますか。
古賀 1970年代後半から1980年代前半は、多くのビル型のホテルが新築されていますね。これらのホテルが、30年前後を経過して、まるで違った二つの顔を見せています。改装を依頼されて解るのですが、躯体の「下地」を見ると、まるで「ホテル使用」になっていないところが、少なからず現れてきます。「配管」しかりです。まるで、マンションの延長のように創られているわけです。これらを、いわゆる「業務用」としての建物にするためには、通常「改装」の3倍も、4倍もの資金が必要になってきます。長いスパンで経営しようとすれば、まずは「躯体」がどうなっているのか、「下地」はどうなっているのかを調べる必要がありますね。
 一方、ホテルとして設計された施設は、「下地」・「配管」等がしっかりしていますから、「改装」費用も少なく、時間のロスもなく仕上げることが可能です。そのことを、少なからず理解しておくことは、建物の所有者としては、必要でしょうね。

今後「レジャー・ラブホテル」に求められるものとは……

湯本 この10月、「最賃」(最低賃金)が全国平均2%アップ(14円)しました。近い将来は、時給1,000円の時代が来るでしょう。また、来年4月からは「消費税増税」で、5%から8%になります。この「消費税」は2015年には、10%になることが、予想されています。これらの経費増は利益の圧縮・圧迫でもあるわけですが、経営・運営されていて、どう対応しますか。
脇田 結論を先にいえば、「値上げ」しかないでしょう。このデフレの20年間。とりわけ、この数年間は、この「レジャー・ラブホテル」業界は、「ダンピング合戦」という「負のスパイラル」の中にいたわけです。さらにいえば、この業界の利用料金は10年も20年も前からの料金と変わっていません。経費は上がっているにも関わらず。これは、「商売」としては、いかがなものかという思いがあります。この「消費税増税」を機に、値上げをすべきです。もちろん、地域・競合関係・環境等々の違いから全て同じ論では括れないでしょうが、この「増税」は、多くの利用者も納得して頂けるでしょう。なぜなら、先日の『読売新聞』の調査では、「消費税増税」に56%の人達が賛成をしているのですから。料金を値上げしなければ、自分の首を絞めるだけです。
古賀 業界を正常・適正なものにするためには、値上げをし、安心・安全な快適な空間を提供し、若者達を覚醒させる必要があるでしょう。
湯本 1カ月1ルーム、20万~30万円ほどの売上のホテルはどうしたら……。
脇田 どうあれ、何もしなければ、ホテルは時間とともに劣化し、陳腐化していくことは明白です。そうなれば、20万~30万ではなく、10万~20万円ということになるでしょう。その時に売却を考えても、買う側からみると、改装費用が増大になっていくわけですから、なおさら売却額は低下していくわけです。現在、多くの金融機関あるいは、それに準ずる融資機関は、買収金額は融資しますが、改装費用まではなかなか十分には、対応してくれません。
湯本 料金の低いホテルの中には、いわゆる「デリ」の需要も無視はできないでしょう。
脇田 確かに、それはあります。しかし、「レジャー・ラブホテル」に係わらず、「シティホテル」や「ビジネスホテル」とて、同様です。先般、東京でも「レジャー・ラブホテル」の集積地である鴬谷で、この「デリ」の摘発がありました。この摘発は、2020年の東京五輪とは直接的には関係ないでしょうが、今後、五輪に向けての摘発は増加するでしょう。そんな時に、「デリ」の依存度が高ければ高いほど、その反動も大きいといえます。十分に注意する必要があるでしょうね。
 「レジャー・ラブホテル」における売買については、繰返しますが、相応の理由がないかぎり、「利回り」の低いホテルは、それだけの価格しかないということです。今後、この動きに変更はないと思われます。
古賀 二極化の中で、どのような形態のホテルがあってもいいと思います。しかし、今後、10年20年この業界で続けて行こうとするならば、休憩で5,000円以上、宿泊で8,000円以上は納得して頂ける「空間・設備・備品・サービス等」であるべきでしょうね。「安かろう、悪かろう」の時代は、終焉を早めることになるでしょう。2015年は、「第三のホテル戦争」といわれています。今後、2020年の東京五輪に向けて、外資も含めた「シティホテル」「ビジネスホテル」はますます増加することになると、予想されます。加えて、「カジノ」が成立することになれば、宿泊施設は一変します。
湯本 したがって、今から「レジャー・ラブホテル」の特性を生かした施設づくりは必要なわけです。
 二極化の中で、どう問われているかは、業界全体の問題でもあるわけです。生き残りの為のサバイバルが、この「消費税増税」を機に始まるように思います。

PROFILE

古賀志雄美
(こが・しおみ)
61歳。1975年、独立。一級建築士として、古賀設計を設立(のちに㈱KOGA設計となる)。独立後、九州で10店舗のホテルを新築後、1983年、東京に進出。以来、業界の設計・デザイン事務所の“雄”として、今日に至る。
脇田克廣
(わきた・かつひろ)
1987年、不動産会社のレジャーホテル事業部の責任者として業界参入。1992年、㈱トータルプランニングを立上げ、代表者として独立。休業ホテルを賃貸で借り、本格的にホテル業を始める。以降、フロントシステムの開発・運営受託・コンサルタント・直営・ホテル売買と、その活動範囲は広い。
掲載 LH-NEXT vol.18(2013年10月31日発刊)