在庫管理への取組み

 近年、利用者ニーズへの対応を重視しアメニティ等を短期間で新商品に変更するホテルも見られる。さらに各種のレンタル品が増加し、飲食の充実によって冷蔵・冷凍庫内の食材も増えている。ホテルで在庫を管理する商品の品目数は、年々、増加傾向にあるといえる。
 しかし、小規模ホテルのなかには、現在も在庫管理を納品業者に任せているところも見られる。経費を有効に活用し、経費削減と利用者ニーズへの対応を進めるうえで、提供している各種用品備品等の動きを把握するために在庫管理は重要だ。
 そこで、現在、東北および関東で10軒の運営受託・コンサルティングに取組んでいる、㈱マークス代表取締役・氏家正裕氏に、在庫管理の取組み方を聞いた。

◆適切な在庫管理でニーズの変化に対応

 小規模ホテルのなかには、人手の問題もあり、在庫管理を納品業者に任せているところもみられます。「用品備品等の在庫額はそれほど大きくない。在庫管理をするために手間と人件費をかけたくない」といった見方もあります。また、在庫切れが発生しても「各業者さんが早急に対応してくれるから営業に大きな支障は出ない」ということもあります。
 しかし、以前、運営の相談を受けたホテルを訪れたところ、客室にマッチが置いてあり、ライターへの変更を提案したところ「在庫が大量に残っており、使いきるまではもったいない」と変更できなかったことがありました。名入れ商品の場合は、ある程度の数量を発注しないと割高になってしまうという事情もありますが、商品を変更したいときに、在庫が大量に残っていて変更できないという状況は、やはり避けなければなりません。
 用品備品のなかでも、歯ブラシやカミソリ等は、そうたびたび変更することはありませんが、近年ではアメニティや入浴剤などは、利用者ニーズの変化に対応すべく、短期間で変更するホテルが増えています。
 一方、食材に関しては、多くのホテルで飲食の強化を進めており、在庫品目は増加傾向にあるといえます。ホテルの場合、どうしても少量多品目になるため、在庫切れで欠品となってしまうケースも少なくありません。欠品になれば売上に影響します。さらに、頻繁に欠品を出せば信頼感を失いかねません。
 加えて、各種レンタル品も増加傾向です。ホテルで在庫を管理する品目は以前に比べて増加しています。それに伴い取引業者の数も増えています。ホテルの在庫管理はより煩雑になってきていますが、それだけに適切な管理が求められているといえます。

◆在庫管理の仕方と効果

 ただ、厳密に在庫管理を行なったからといって、経費が大きく削減できるわけではありません。
 用品備品の仕入れ額は、多いところでも売上比5%程度でしょう。食材の仕入れ額も、飲食売上が総売上の10%程度だとしても原価はその半分以下です。在庫管理でそのうちの1~2%のロスを防いだとしても、わずかな金額です。しかし、在庫というのは、現金を眠らせていることです。キャッシュの有効活用を考えれば、在庫量を適正にしておくことは非常に重要です。
 在庫管理には、コスト発生時の仕入ベースで行なうか、棚卸ベースで行なうか、2つの方法があります。1年間で見れば、大きな違いはありません。ただ、仕入れベースでは、2~3か月に1回の発注もあるため月単位の把握が難しくなります。当社では、1か月単位で売上・経費・利益を把握するために、棚卸ベースで管理しています。
 当社が運営に関わるホテルの例をみてみましょう。
 このホテルは、客室数42室/月利用組数2,400~2,500組/月商約2,000万円です。棚卸表に記載されている用品備品および食材の商品数は500品目を超えています。イベントキャンペーン用の単発仕入れや現在は使用していない商品など約100品目も含まれているので、実質は約400品目。納品業者数は12社です。5月末の棚卸の結果を見ると、4月末の在庫額が約125万円、5月の仕入額が約160万円、5月の使用額が約192万円、5月末の在庫額が約93万円です。
 適正な在庫の数量というのは、ホテルによって異なるので一概には言えませんが、このホテルでは、レギュラーで使用する商品については1か月~1か月半使用できる数量の在庫を基本に考えています。ただ、スポット的に低単価で仕入れられる商品などの少量仕入商品も少なくありません。
 発注から棚卸までの流れは、発注→納品(納品書で数量確認、納品書を本社へ送付)→商品配置(リネン室や倉庫スペース)→出庫(高額品は担当者、通常品は各スタッフ/ホテルによっては使用時に出庫数を記入)→月末に棚卸→棚卸表で数のチェックと商品の動きをチェック→棚卸表を本部へ送付、といった流れです。
 当社では、会計事務所とのスムーズな連携のために棚卸用のPCソフトを使用していますが、通常のホテルならエクセル等で十分に対応できます。
 当社が手間をかけて棚卸をする目的を整理すると、
①運営受託企業ということもあり1か月単位で厳密な経費管理をするため。
②適正な在庫の数量で臨むため(眠らせるキャッシュ量を最小に。利用者ニーズを捉えるべくレスポンスのよい対応をするため)。
③無駄な経費を発見して削減するため。
④集客・売上に必要な経費を発見して強化するため。
 といったところです。
 当社では「客室消耗品」「食事」「冷蔵庫商品」「サービス品」「清掃用品」「コンビニ商品」と分類していますが、各ホテルで利用しやすい分類をして、分類ごとに数字を確認していくと変化がより見えやすくなります。
 実際に棚卸に臨むと、おそらく最初は数が合わないことが少なくないと思います。しかし、続けていくと、商品の動きの変化が確実に見えてきます。それによって、経費削減の工夫や強化すべき経費が見えてきます。さらに、ホテル側で棚卸を含めて確実な在庫管理を実施することは、従業員の経費意識を高めることにもつながります。
 厳しい経営環境下で、限りある経費を少しでも有効に活用するために、手間はかかりますが、適切な在庫管理が必要となっているといえます。

PROFILE

㈱マークス 代表取締役
氏家正裕
(うじいえ・まさひろ)
1971年、仙台市生まれ。建築会社を経て、2001年に仙台市に新築ホテルを立ち上げ、業界に参入。現在、運営受託に取組み、東北および関東で10軒を運営受託・コンサルティング
掲載 LH-NEXT vol.17(2013年7月31日発刊)