<速報>2012年夏季の営業状況~季刊『LH-NEXT』編集部

<速報>2012年夏季の営業状況~季刊『LH-NEXT』編集部

 9月に入っても厳しい残暑が続いていますが、今夏の営業状況はいかがだったでしょうか?
 季刊『LH-NEXT』編集部では、8月末に、全国の主なホテル経営企業に今夏の状況をヒアリングしました。昨夏は、1月の風営法政令改正、さらに3月の東日本大震災の影響が大きく、売上の動向が読めない、分析できないというホテルが少なくありませんでした。
 しかし、今夏の状況をヒアリングしていくと、この数年続いた売上低下傾向とは異なる新しい動きが見えてきました。
 そこで、今回のヒアリング結果をまとめて、報告します。

 今夏の状況を総括すると、
①前年比プラスの結果を示すホテルが増えてきた。この数年の売上低下傾向が底を打ち、回復傾向に転じたとみるホテルも多い。
②ただ、供給過剰が著しく同時に料金低下の進んでいるエリアでは、売上低下傾向がさらに進んでいる。
③今春以降、改装の動きが活発化し、ある程度のコストを投じた改装で大きく売上げを回復するホテルが各地に見られはじめた。

 昨年以降、廃業するホテルも多く、また平日休業・週末のみ営業するようなホテルも出てくるなど、厳しい環境の地域も少なくありません。
 しかしながら、2008年のリーマンショック、2009、2010年の風営法政令改正問題、2011年の東日本大震災、と毎年のように新たな厳しい逆風に晒され、身動きできないなかで売上低下が続いてきた状況から脱し、厳しい環境ながらも前向きに“動いた”ホテルは結果が現れる状況になってきたと言えそうです。

 以下、具体的な状況をみてみましょう。

■A社(関東中心に複数店舗)
8月は、1店舗を除き前年比プラスで推移しており好調。
好調店舗は前年比110%程度。エリア内で高料金ながら組数増のホテルもある。デリヘル利用の多いエリアは低料金ホテルに利用者が集まっているが、一般客は、安さよりも魅力あるホテルを利用する傾向が復活してきたように感じる。

■B社(関東中心に複数店舗)
全体では、7月は前年比若干のマイナス。8月は前年並みで推移。
今年に入ってから、前年を下回ったのは7月だけ。昨年は政令改正と震災の影響で売上を低下させたが、今年は一昨年レベルに回復してきている。
都内は前年比110%以上の好調な店舗が多いが、若者層の多いエリアは、料金にシビアで苦戦傾向。HPへのクレーム書込み内容などレベルが高くなっており、誠実な営業への取り組みが不可欠になっている。

■C社(東日本中心に複数店舗)
全体では、8月はほぼ予測通りで前年比若干のプラス。
この数年続いた売上低下傾向は、底を打ったと思う。
ただ、単価低下はまだ続き、組数増加で売上維持を図っている状況。適正な単価が取れる営業が求められている。

■D社(全国に複数店舗)
8月は好調。全体では前年比プラスで推移。
売上減から増へ転じるホテルが増えてきており、約半数が前年比および前々年比を上回る状況にまで回復してきた。
設備変更やサービスの組合せで客単価アップに取り組むとともに、立地環境に合わせて単価重視か組数重視かを明確にした営業を進めている。

■E社(東北で複数店舗)
8月は好調で、各店舗とも前年比プラスで推移。
昨年の東北エリアは、大震災の被害が少なかった地域では復興特需で好調な集客状況をみせていたところも多かったが、ここにきて供給過剰の地域では値下げ競争が進み、厳しい状況になってきている。

■F社(九州で複数店舗)
7、8月は、前年比で微減。
周辺も前年比若干のマイナスというホテルが多い。建物・設備の老朽化と値下げが進むことで、客離れと単価低下がまだ進んでいる。厳しい経営環境とはいえ、客単価の得られるホテルづくりを目指したい。

■G社(神奈川で複数店舗)
7月は前年並み。8月は前年比プラスで推移。
エリア全体でみると今夏の集客は芳しくない。しかし、改装したホテルには確実に利用者が集中している。

■H社(北陸で複数店舗)
この数年、前年比マイナスを続けてきたが、昨夏に若干プラスに転じ、今夏は、前年並み。
平日は常連客の利用が多く状況は従来と変わらない。週末が減少しており、とくに新たにラブホを利用するような若者層の新規客が減少しているように思われる。
現在、改装しても組数の大幅な増加はない。しかし改装しないと組数は維持できない。ローコストでも改装や設備の変更・追加を続けることが必要だと思っている。

■I社(神奈川で複数店舗)
8月は、前年より若干のアップ。
今春以降、弱電設備の変更など、利用者にとっての利便性や魅力の強化を進めている。
以前のピーク時の売上に比べ2~3割減の状況だが、今年は、ほとんどの月で前年比プラスの売上げを示し、この数年の売上低下から横バイあるいは微増に転じたとみている。
すでに、料金を安くしても集客力にはならなくなっている。手間とコストをかけて魅力の付加を続けることが必要と思う。

■J社(関西で複数店舗)
7、8月とも予想以上に厳しく、前年比で2ケタ台のマイナス。
ホテル集積エリアはとくに厳しい。客数が減少し空室が多いことから、利用者は料金を比べて安いホテルに流れる傾向が続いている。
不振店舗の淘汰があまり進まず、規模の大きなホテルの料金値下げも進み、供給過剰下での厳しさがさらに強まっている。

■K社(関西で複数店舗)
7、8月とも、前年比で10%前後のマイナス。
市内よりも車利用の郊外店舗が厳しい状況。
オリンピックの放映が深夜だった影響も大きい。オリンピック期間中は歓楽街の人出も減少していた。
供給過剰のなかで料金値下げと無料サービスが一般化し、ホテルの価値を自ら落としているように思えてならない。適正な単価で集客できる、ホテルの価値をいかにつくるか、これが最も大きな課題だと思う。

■L社(中部で複数店舗)
8月のお盆期間は、前年比で約5%のプラス。お盆特別料金を実施したが、組数も確保できた。
中部地域全体をみれば、売上低下が底を打ったとは思えない。供給過剰状態はまだ2、3年は続くと思う。低価格路線もまだ続くと思われるが、単価を確保できなければ事業の将来はない。適正な単価で集客するためには、やはり客のニーズに応えるホテルづくりをしてリピーターを確保していくしかない。

■M社(北海道で複数店舗)
8月は、前年比98%。組数は維持できたが、宿泊が減少した分だけ単価が低下。
札幌市内のホテルは売上低下傾向が下げ止まったように思われる。ただ、郊外はまだ前年割れが続いている。とはいえ、マイナス幅は2、3%程度と小さくなっているところが多いように思われる。
札幌への観光客は、昨年は大震災と原発事故の影響で大幅に減少したが、今夏は海外も含めて回復しており、ビジネスホテル等は好調。

■N社(都内で複数店舗)
7,8月は前年比5%程度の伸び。
今年に入ってから、ほぼ同様の状況が続いている。
リーマンショック以前に比べると、まだ2割前後は低い売上状況ながら、今年は、この数年の売上低下傾向が下げ止まり、回復傾向に転じたと感じる。

        ※
 今回のヒアリングを通して感じたのが、明らかに「新しい二極化が進みはじめている」ということです。

 確かに、供給過剰で料金も低下し厳しさがさらに進んでいるエリアもありますが、今回のヒアリングで売上回復を示したホテルの多くは、立地特性の変化や客層・ニーズの変化を捉えて、ハード・サービスの両面から新しい魅力づくりに積極的に取り組んでいるところでした。
 今夏は、「経費削減から魅力強化」へ方向転換するホテルが増えはじめ、それが結果に現れていると言えそうです。

季刊『LH-NEXT』編集長・多田義則