「神田村対談」vol.1

店主 湯本隆信 vs 二代目オーナー T氏

 この“不況”は、いったい何時から始まったのか。
 08年秋のいわゆる“リーマン・ショック”以降、09、10年には「政令改正」問題があり、この3月には、「大震災」が発生した。経済は急激な右肩下がりとなり、消費者の行動は委縮し、一方で若者達の趣向は多様化しつつある。そのような中、レジャーホテル業界は今後、どう進むのか。「神田村対談」第1回目は、30代半ばの2代目オーナー、関東で10数店舗経営している、T氏に話を聞いた。
 なお、T氏の希望により、匿名とさせていただいた。

~今、売上低迷の中、業界は大きく変容~

湯本 Tさんは、30代半ば。いわゆる2代目で、この業界に入って10年ちょっと。都内を始め、関東で10数店舗のホテルを経営されているわけですが、この数年間の業界の動きをどのように捉えていますか。

T氏 この数年間だけを見ても、業界は大きく様変わりしつつあると思います。経営的には「売上の問題」、「法的な問題」。この法的問題というのは、先の「政令改正」であり、今後は「労務問題」も無視できませんね。これらは、いわゆるこちら側、つまり経営者側の問題ですが、私がもっと気掛かりなのは「利用者側」、お客さまの変化、動きですね。

湯本 といいますのは・・・。

T氏 極論してしまえば、今、若者たちのレジャーホテル利用率は急激に低下しているということです。特に、男性の若者です。私のところのホテル、都内を始め関東ですが、利用者の年齢分析をすると、この数年間、年々、30歳前後の利用者は減少してきているという、データもあります。このことが、心配ですね。

湯本 それは、経済事情ですか。あるいは近年よくいわれるところの“草食系”との関係ですか。

T氏 もちろん、この“失われた10年”なのか、“20年”なのかわかりませんが、その不況の時代ということもあるでしょう。それと同じように業界にとって“不幸”なことは、若者達、とりわけ男性の女性離れです。草食系なら、まだいい方ですよ。

湯本 女性離れ・・・。

T氏 今、若者の間に、「ヒモテ」という新語があります。

湯本 「ヒモテ」? ヒモ?

T氏 違います。「否モテ」です。つまり、女性に「モテてる」ことを始めから“拒否している。否定している。”ことなのですね。「そんなカッタルイこと、ヤッテられないよ」という具合です。こうなると、どうしょうもないですね。この前段階が「草食系」ということでしょう。
 私のところの従業員に、私と同年齢に近い、アルバイトの男性がいます。彼は1ヶ月10万円程の支給です。仕事もよくやってくれるので、ある日「正社員にならないか」と話したら、彼は「10万円あればやっていけるので、このままやらせてください」とのことでした。彼の場合、一人っ子で、都内で両親と住んでいる。寝る所と食べることには困らないわけですよね。そうであるなら、結婚も望まないし、ブラブラしていられる。この方が、“カッタルイ”と思うのですが。
 この種の人間が増えていることも、現実ですし、「業界にとってどうなのかな」と考えさせられますね。

湯本 その「我」・「欲」というのは、時代によって変化するわけですが、この数年間で大きく変貌していることも、事実ですね。中年未婚者も増加傾向にあるようですから、価値観の相違といえば、それまでですが。
「不況・少子高齢化・NON SEX」。業界にとっては、宜しくない環境といえます。そうなると、ますます需要と供給のバランスが崩れてくる。つまりは、施設(ホテル)過多ということになってきますが、さらに加えて、原発問題から生じた「インバウンド(訪日旅行者)」の激減が「シティホテル・都市ホテル」の稼働率を下げ、利用料金を大幅に下げている。それらホテルの動きも気になるところでもありますね。現実を直視する必要があります。

T氏 そうです。他の業界でもそうだと思いますが、よく「うちは対前年で、これくらいで止まっているよ」みたいなことをいわれますが、今年は対前年で5~10%減ぐらいかもしれませんが、では一昨年、さらにその前年と比べたら、一体、どの位ダウンしているのか。もう一度、洗い直してみる必要があるでしょうね。

湯本 そのためには、まず利用者の分析が必要でしょう。殊に、“新法から4号ホテルになって”どうなったのか。“新法ホテルのまま”でどうなったのか。ある地方では、行政が“4号に”届出をさせてくれない。したがって、「モーテル構造」でありながら、利用者がいちいち車から降りて「鍵と金銭の授受、宿泊者名簿の記入」をフロントで行っている。こうなると、ストレートにガレージに行ける「4号ホテル」に行きたくもなるでしょうね。特に、人口の少ない地方では。ただし、この4号ホテルとて、野立て・誘導の「看板」のことを考えれば、いささか憂鬱でもありますね。もっとも、ある地方では「4号営業店と看板問題」が御座なりになっている所もあるようですが。
 さらに分析してほしい項目があります。
 それは、“貴方のホテルは1ヶ月で新旧の入れ替えが何組ありますか”ということです。永遠に現在の利用者が来店してくれればいいのですが、一般的には1ヶ月で新旧の入れ替えは、10%前後になるでしょう。多いところでは、15%位になるはずです。10%であるならば、月に2,000組の来場があるホテルでは、200組ということになります。客単5,000円とすれば、100万円ですね。「新」の利用者が来場しなければ、月に-100万円ということです。年に-1,200万円ということになります。「新規」の利用者が来なければね。まぁ、こんなことはないでしょうけど。さらにいえば、月に数回来店してくれる利用者が来なくなったら、もっと大変ですね。一方、ホテルの“好立地”というのは、ご存知のように沿線から一本入った所です。“出口産業”ともいわれる所以ですね。したがって、「看板」が設置できないということは、致命的ともいえるわけです。

T氏 そのために、「4号」に申請しなかったホテルさんも、あるほどですね。金融との関係もありますが。

湯本 「看板」は、昨年の12月31日に撤去。それ以降、届出やら大震災、東京電力圏内では「計画停電」などの問題で十分に集客分析はされていないと思いますが、今後、「看板」の重要度はますます高まってくるでしょうね。

T氏 立地特性から考えれば、当然ですね。

湯本 このような状況の中で、御社としては、どのような集客戦略を考えていますか。

T氏 集客戦略というほどのことではないですが、今、時代の流れ・利用者の分析が終わったところですね。
 冒頭申し上げました「否モテ」の問題。これは、こんなことがいえませんか。つまり、これを年代別にみますと、このレジャーホテル・ラブホテルの初代の方々の多くは、いわば“凝りに凝ったラブ”の世界を造ったわけです。一人でシコシコと。そして40、50代の二代目の方々は、この初代の“ラブ”を消しにかかっている。「我々はもっとちゃんとしたホテルだ」みたいな。そして、仲間内で、ある意味では、穏やかに過ごしている。それが悪いということではないですよ。全てが全てでもないですし、もちろん、時代・環境・経済・文化等は異なるわけですから。私も二代目ですが、むしろ三代目的考えですね。三代目は、そういう“仲間”的付合いも、ましてや夜中まで飲むこともない。二代目のような付合い、考えは求めてないですね。一般的には。それこそ、「否モテ」の世界に入る訳です。これは、この業界だけではなくて、一般社会でもそうでしょう。この、30代半ば以下の若者達は、“仕事は仕事、遊びは遊び、自分は自分”という発想で、いわば群れたりはしないわけです。従って、一般のサラリーマンは上司に仕事の帰りに“一杯行こうか”といわれても、嬉しくも何ともないわけですよ。トットと帰るだけですよ。自分の世界に。それが、三代目のスタイルでしょうね。

湯本 そのスタイルが、年齢層としてホテルの利用者にも通じるということですか。それは、よく理解できます。30代のみならず、40、50代でも見られますから。もっといえば、ある地方のオーナーさんが嘆いていたのですがね。「今の若者は、車に興味をもってないよ。従って、自動車免許もとらないわけ。そうなると、郊外のホテルは、今後どうなるのですかね」と仰ってましたが、まさに、価値観の相違、欲望の変化・基準の違いですかね。
 ところで、現在の、さらには今後の集客については・・・。

~今後の集客方法は・・・~

T氏 まずは、二つに分けて考える必要があるでしょうね。それはいうまでもなく、「新法ホテル」と「4号営業ホテル」です。そして、どちらも共通していえることは、“法遵守”は、いうまでもないということです。この2月以降においても、東京・池袋、新宿歌舞伎町で、あるいは関西でも、「新法ホテル」に対して、査察・摘発がありました。このことは、当ブログにもでていましたが、これは論外なことですね。なぜなら、それぞれ対象になったホテルの状況は、「新法ホテル」なのに、「錠(鍵)の授受と金銭の授受」をフロントでやってなかった、ということでしょう。考えられない行為といえるでしょう。

湯本 まったくですね。何億も投資しているビジネスなわけですから、基本的なことは・・・。理解できません。
 それで、「新法ホテル」における集客は・・・。

T氏 立地によって、都市部なのか郊外なのかによっても異なりますが、問題はフロントの対応のあり方でしょう。一部の「新法ホテル」さんは、フロントを極力隠して、例えば“顔が差さない”ようにしていますが、あまり賛成ではないですね。むしろフロントを前面的にオープンにして、カウンターの上に部屋で使う、バスルーム・露天風呂などで使う小物・アメニティグッズなどを多めに置いたらどうなりますか。

湯本 利用者の気持ちが“モノ”にいく。心理ですね。シャンプーなんか数種類、それぞれカゴに入れて置く、そして利用者に選ばせる。フロント係りとの“間”が解消されますね。

T氏 そういう工夫が必要ですね。他愛のないことですが、如何に和ませるかですね。部屋の中は、いわゆる“ラブ化”はできないわけですから。ただどうでしょうか、まだまだ、“商品としての部屋”になっていないホテルさんも少なくないのは、残念ですね。
 「4号ホテル」の場合は、かつて初代のオーナーさん方がやったように、徹底して“ラブ”にすべきと思っています。もちろん、条例を無視することは賛成しませんが。それと、「看板」が撤去されているわけですから、それに変わるツールが必要になりますね。

湯本 そのために、弊社はホテル検索「LH-HOTEL」NAVIを開発したわけです。お陰さまで、大へん好評ですよ。この開発コンセプトは“行きたい時に、すぐ行ける”ですね。NAVIでルート案内をしてくれる。どんなに沿線から外れているホテルでも、カーナビ同様、ホテルに辿り着けるというものです。携帯でもスマートフォンでも使えますよ。

T氏 今年の家電量販店の主力商品はスマートフォンですから、おもしろいですね。

湯本 冒頭に挙げたように、業界はますます激化してくることになるでしょう。今回の「政令改正」で新たに「4号ホテル」となった店舗数は、2,758ホテル(警察庁)になります。改正前が3,692ホテル(平成22年)ですから、計6,450店舗ということです。もちろん、この中には先の大震災で、半壊・全壊のホテルも含まれてはいますが、少なくはない数といえます。ちなみに、「新法ホテル」は2,000~2,500といったところでしょう。
先の見えない不況の時代、若者の生態に見られる現状。それぞれのホテルが、より以上の分析・対応が迫られているということですね。

T氏 既成概念を改めないかぎり、次の時代にはいけないでしょうね。マーケットが急変しているわけですから。

湯本 そうですね。続きは、またそのうちに。

レジャーホテル・ラブホテル経営の情報発信基地
(株)テイダン 店主 湯本隆信