NEXT世代インタビュー5

ホテル事業に携わって10年、4年前に社長に就任

――貴社がホテル事業をはじめられたのは。
加藤 当社の現在の会長である父親が、昭和60年頃に1号店を千葉・船橋に開業しました。当時、産廃事業や自動車販売業、ガソリンスタンド等を営んでいたなかで、さらに新しい事業を模索し、ホテルにするかボウリング場にするか迷ったそうですが、ホテルを選択。そのホテルが成功し、その後、多店舗展開を進めていったのです。
 現在、埼玉で3店舗(「K-WAVE」春日部・40室、「K-WAVE R」越谷・34室、「K」さいたま・40室)、千葉で2店舗(「K-Slit」船橋・40室、「KSEA」松戸・20室)の合計5店舗を経営しています。

――加藤社長がホテル事業に入られたのは。
加藤 当初、父親の産廃事業会社の経理事務をしていたのですが、10年ほど前から、週に1回程度、ホテルの経理事務等も手伝うようになったのです。そのうち、ホテル事業をみていた叔母が体調を崩してしまいホテルを手伝うことが多くなり、気が付いたら、いつの間にか、毎日、ホテルの仕事をしていた、という経緯です(笑)。

――ホテル事業に対して、抵抗感はありませんでしたか。
加藤 当初から、特に抵抗感はありませんでしたね。私には、兄が2人いるのですが、産廃事業や自動車販売業などをすでに継いでいて、結局、ホテル部門は私が任されることになり、平成19年3月に社長に就任しました。

――ホテル事業に取り組むうえで、会長と意見が合わないといったことは。
加藤 ホテルの仕事が中心になってからは、毎週のように各地のホテル巡りをしました。他社の店舗で修業したこともありませんでしたから、他の店舗がどうなのか、とにかく自分の目でみることから始めなければならないと思ったのです。他店を見ることは、清掃について、サービスについて、等々、かなり勉強になりました。客観的に見て、当社店舗の清掃レベルはかなり高いと思いましたが、各種イベントも含めてサービス面では遅れていると感じました。ホテルの立地や周辺状況によっては、今後、各種サービスも取り入れていかなければならないと思ったのですが……。
 そもそも会長のホテル事業に対する考え方は、立地と価格を最重視するというもの。駅前の集客しやすい立地に新築で開設し、できるだけ低価格で多くの人に利用してもらう、という考え方です。清潔さや快適さは重視しますが、さまざまなサービスに手間とコストをかけて料金がアップしてしまうのであれば、サービスなしでできるだけ低価格で提供したほうがいいというわけです。
 しかし、私は、売上げをつくるうえで単価も重要、ある程度の単価を確保するためには、サービス等の付加価値も必要という考え方。最初から、最低限の料金設定をしてしまっては、集客力が低下していったときに対処できなくなってしまうわけですから。価格とサービスについては、会長と意見が分かれ、ずいぶん議論しました。 
 結局、私が引き継いでから、各店舗の改装を進め、改装に伴ってサービス面の強化も図り、単価を若干アップさせることで、売上げを改装前より上げることができた。それで、ようやく私の取り組み方が認められました。ただ、実際に自分で取り組んでみて、会長の立地選定の目の確かさを再認識しました。ホテル事業では、やはり立地は非常に重要ですね。

――ご自身で最初から立上げた店舗は。
加藤 松戸の「KSEA」は、2年前に既存ホテルを購入し、改装してオープンしたホテルです。物件選定からホテルづくり全般を自らやってみたかった。そこで、周辺にはないホテルをと考え、設計事務所も関東のホテルにはないテイストのデザインをする関西のデラックスダブルデザインに依頼。関東のお客様にはかなり新鮮さを感じる客室にできたと思います。同時に、これまでの当社のホテルは、基本的に全室同じつくりで料金も均一でしたが、このホテルでは特室を設けました。特室には、キャミソールワンピースの部屋着を置いたり、シャネルのバニティバックに入れた化粧品一式を貸し出したり、シャンプー等もボディショップやラッシュの商品を提供したり、細部のサービス強化も図っています。お客様からは、選択肢が広がったという面からも好評を得ています。

企業として組織を強化し、店舗拡大を進める

――運営面で力を注がれていることは。
加藤 会長から引き継いで、まず感じたのが、無駄な経費が多かったということ。コストを抑えてできるだけ低料金でという方向性はあったものの、やはり細部のコスト管理は経営者自らが行なわないと難しいといえます。そこで、まず備品やリネンの単価をすべて見直しました。さらに、人件費比率も30%台後半。清掃に力を入れていたのでスタッフ数も多かったのです。これもシフトの効率化を図り、20%台後半まで抑えました。他の経営者からは、20%程度にといったアドバイスもいただいているのですが、人件費を抑えて客室の品質が低下しては意味がありません。品質を保つには、そこまで抑えることはむずかしいと思っています。

――若い2代目として既存の従業員との関係は。
加藤 支配人さんたちは、ほとんど私より年上で、キャリアも長い。ホテル運営の方向も変えていこうとしている。戸惑いも大きいと思います。私の考え方を理解してもらい、本社と現場の情報を共有することが必要ですから、週1回の本社会議、月1回の支配人会議等を実施するようにして、意思の疎通を図っています。

――プライベートはどう過ごされていますか。
加藤 プライベートの時間は取れていますが、いまは、プライベートよりも仕事のほうが面白いですね。そのせいか……まだ独身です。

――1月に施行となった政令改正に対しての対応は。
加藤 4号への変更を基本に対応を考えました。4号に変更するデメリットも検討しましたが、今後、必要ならいつでも4号を廃し新法に戻すことはできる、でも4号の既得権は、いましか得られないわけです。

――4号に変更したホテルの内容は変えていきますか。
加藤 当社店舗は駅前立地で認知されやすいとはいえ、4号になると広告宣伝が規制される。これが一番の問題です。そこで、ネット分野での宣伝に力を注ごうと、ツイッターによる情報発信を始めるとともに、ホームページもスマートフォン用を作成中です。

――客室については。
加藤 男性の社員からは、4号のメリットを活かして、いわゆる「性的好奇心に応じる設備」も取り入れたほうがいい、という意見もあるのですが……検討中です。男性にとって嬉しい設備でも、多くの女性にとってはどうなのか……。ラブホテルに非日常空間が求められることは分かりますが、それは宿泊施設としての快適性が実現されたうえでのことです。現状では、快適性や清潔感の追求にもっと力を注ぎたいと思っています。

――各店舗の売上げの状況は。
加藤 全国的に売上低下の傾向が続いているといえますが、当社ホテルは、改装した効果が大きく、この数年は順調に前年を上回る業績をあげることができました。ただ、3月の震災以降、やはり売上げは低下しています。地震の直接的な被害は一部ボイラーが停止した程度で、営業に支障は出ませんでしたが、5店舗のうち4店舗が計画停電の地域に入っていました。この影響は大きかったですね。

――今後の貴社の展開は。
加藤 今後、店舗数はもっと増やしていきたいと思っており、現在も物件を探しています。しかし、私一人ですべて管理するような取組み方では、5、6店舗が限界です。店舗展開を進めていくうえでは、やはり企業としての組織化が必要です。現在の店舗の運営レベルの向上に加え、組織の構築にも力を注いでいこうと考えています。
――女性の視点を活かした店舗づくり、そしてさらなる店舗展開に期待します。

PROFILE

加藤 美智子(かとう・みちこ) 加藤商事㈱ 代表取締役
1975年生まれ。父親の産廃事業会社を経て10年前からホテル事業に携わり、2007年に代表取締役に就任。
現在、埼玉・千葉で5店舗を経営。
掲載 LH-NEXT vol.8(2011年4月30日発刊)