NEXT世代インタビュー4

コンピュータのソフト開発からホテル事業へ

――貴社がホテル事業をはじめられたのは。
 飲食店をしていた父が、32年前にこのホテルをはじめました。改装や名称変更を経て、現在は地上5階建て30室の「HOTEL RIZE」として営業しています。実は、このホテルは私と同い年なんです。

――ホテルとともに育った……。
 いえ、私がホテル事業に入ったのは3年前で、それまではまったく関わっていませんでした。大学時代の4年間、ずっとアルバイトを続けていましたが、自社のホテルや飲食店ではなく居酒屋の「わたみ」でしたし、就職はコンピュータのソフト開発会社。そこでは4年間、グループウエアの開発をしていました。
 そして、自社の飲食店を居酒屋から焼肉屋に業態変更しようとしていた時期にソフト開発会社を退職し、丸昌に入社したのです。父とは進路に関する具体的な話をしたことはありませんでしたが、将来は事業を継ぐことになると思っていました。本当は、2年くらい営業職も経験したかったのですが……。その焼肉屋に携わって2年後、ホテル部門の責任者が退職することになって、ホテルを担当することになりました。

――では、ホテル事業には、まったくの白紙状態で入られた……。
 はい。まず3か月ほど、父の知人のホテルで研修させていただきました。
 この研修が、初めての現場体験でした。正直、驚きもあれば抵抗感もありましたね。そもそも客室の清掃は1人でやると思っていたくらいですから。それに利用後の客室は、とんでもなく汚れていたり乱れていたり……。
 自分の部屋の掃除はしていましたが、限られた時間で、しかも商品としての客室をつくるための清掃というのは、まったく違うと認識させられました。

――現在、ホテルでの仕事内容は。
 支配人として現場に入っています。基本的にホテル事業は私に任されているのですが、やはり大きなコストのかかる補修やメンテナンス、あるいは契約等の際には、父に関わってもらっています。

――ホテルの面白さとは。
 日々の運営のなかで、嬉しいと感じるのは、常連のお客様から意見をいただくときです。お褒めの言葉もあれば、細部のアドバイスや不具合の指摘などもある。帰りがけにフロントで声をかけてくださるのですが、これは本当に嬉しいですね。飲食店の場合は、お客様の顔が見えるので、満足度が表情でわかるわけです。レジャーホテルでは顔がなかなか見えないだけに、直接、感想が話してくださるというのはとてもありがたいことです。

スタッフとのコミュニケーションを重視

――ホテルのスタッフ体制は。
 スタッフ数は28人。そのうち9人が社員です。1軒30室のホテルということを考えると多いとは思います。しかし、ホテルの基本である清掃やメンテナンスをきちんとやっていくためには、経費はかかっても人的なゆとりが必要だと思っています。ただ、組数が減少している現状を考えると、今年は、若干の見直しをしなければならないかもしれません。

――スタッフの管理や接し方で、とくに注意していることは。
 社員とは、ミーティングも含めて頻繁にコミュニケーションを図っていますので、意思の疎通はできていると思います。同様に、パートスタッフともフランクに話をして、悩みや相談にも個別に対応しています。やはり、スタッフ1人1人のモチベーションが大切であり、その基本は経営者とのコミュニケーションだと思います。
 ただ、やはり人それぞれ特徴があり几帳面で清掃もすごく丁寧に仕上げる人もいれば、スピードはあるが見落としのある人もいる。チーム編成の仕方も難しいですね。また、スタッフが定着しているときはいいのですが、入換りがあると、やはりたいへんです.

――売上げの状況は、いかがですか。
 12年前に大規模改装をして、1室1か月100万円を超えた時期もあったようですが、ピーク時に比べると現在は2割程度は低下しています。休憩の時間帯の調整はしましたが値下げをせず、客単価は一昨年までは9,000円台を維持してきたのですが、昨年は、宿泊客減少の影響もあって8,000円台になっています。昨年は、月によって好不調の波が大きかったですね。休憩も昼が多かったり、夜が多かったり……。正直、お客様の動きが分析できなかった1年でした。

――全国的に売上げが落ち込んでいますが、その理由をどうみていますか。
 当たり前のことですが、先行き不透明な経済状態では、やはり衝動的なお金の使い方は減らざるをえません。とりあえず貯金。そして、昨年は家電品などにエコポイントがあったので、そちらにお金が流れたということもあると思います。
 ただ、レジャーホテルは、多くのお客様の実需に支えられている業態ですから、決してなくなることはない。ですから重要なことは、当社のホテルを利用したいと思ってくださるお客様を1人ずつ確実に増やしていくことだと思っています。

――今後、どのようなホテルづくりを進めていこうとお考えですか。
 現在の経済状況を考えると多額の投資による大規模改装は難しい。また、確実に集客アップにつながる設備も見当たらない……。ただ、リラクセーション系では、あまり大掛かりでなく魅力的なものがありそうですので、現在、検討中です。また、Wi-Fiなどによるインターネット環境の整備もしていかなければならないと思っています。

――サービス面では。
 従来、イベント的なサービスは、年2回、クリスマスとバレンタインくらいだったのですが、私がやりはじめてから徐々に増やしています。また、飲食の充実も図っていきたい。ただ、最近増えている飲食の無料サービスには抵抗があります。備品や消耗品については、たんに数を増やすよりも品質にこだわったものを提供していくことを基本にしています。
 父は、過剰サービスには反対で、それよりもこだわりのある品質のよいものを提供していくことが大切という考え方です。私も同じ考え方なのですが、父のほうが、品質へのこだわりのレベルが高い。私が、いいなと思っても、父はB級品は出すな、と。年代による価値観の違いもあるのですが、サービスについては父とはよく議論しますね。

プライベートよりホテルの現場

――今回の政令改正問題については、どのように感じていますか。
 当社ホテルは4号営業ですが、4号にしろ類似ラブホテルにしろ一般のホテル・旅館にしろ、法律上の括り方でしかないと思っています。ですから、マスコミで批判的な報道をされても、後ろめたさはありません。温泉旅館もリゾートホテルもレジャーホテルも、カップル客にとって利用の仕方は同じです。宿泊業の業態としてどの範疇に入るかよりも、このホテルをどのようにしてお客様に気に入ってもらえるようにするか、そのほうが重要だと思っています。

――現在、専務の肩書ですが、今後、社長を継いだときに、どのような経営者を目指しますか。
 もちろん事業は拡大したいと思っていますが、1つ成功したからといって同じものを展開しようとは思いません。多業種での展開を目指したい。ただ、飲食店は仕入れのスケールメリットを考えると、もう1、2店舗はほしいですね。ホテルについては、現状では、私自身、2号店のイメージができていませんので、当面はこのホテルに集中します。

――現在、ホテルの現場にも入っていると、なかなかプライベートな時間を取るのは難しいのでは。
 昨年から経理も担当していますので、プライベートな時間はますます少なくなっています。でも、優先順位を考えると、現在はホテルの現場が最優先です。とにかく、1人でも多くのお客様に「このホテルに行きたい」と思ってもらえるようなホテルづくりに、もっと取り組んでいきたいですね。
――丁寧な運営の高品質なホテルに新しい魅力をどのように加えていくのか、期待しております。

PROFILE

文 博信(ぶん・ひろのぶ) ㈲丸昌 専務取締役
1978年東京生まれ、32歳。コンピュータソフト会社を経て、5年前に㈲丸昌に入社。
自社飲食店を2年間担当した後、3年前から「HOTEL RIZE」(埼玉・大宮、30室)の経営を担当。
掲載 LH-NEXT vol.7(2011年1月31日発刊)