多店舗展開企業に聞く―― 2013年の経営戦略/JHTグループ 専務取締役 柳川博一

1室売上げを最重視した出店戦略で多額の投資を短期返済し次の出店へ

新宿・歌舞伎町で7店舗(259室)を展開するJHTグループ。厳しい市場環境ながら、各店舗とも高レベルの売上を持続し、昨年4月にはビジネスホテルを購入し業態転換した「Designer’sHOTEL&SPA PASHA RESORT」をオープン(vol.12掲載)、好調な立上がりで1室1か月100万円超の高売上げを実現している。同社の事業展開の考え方、高売上実現の戦略を聞いた。

2012年の既存店の売上げは前年比5%のアップ

――新年を迎えたわけですが、2012年の結果と2013年の抱負をお聞かせ下さい。
柳川  昨年オープンした店舗を除いた既存6店舗でみると、前年比で約5%のアップ。ただ、一昨年は3、4月が東日本大震災の影響で落ち込みましたので、この2か月を除いた比較では約3%のアップ。前々年比では約1%のアップという状況です。
 地方の郊外立地などは不況感から脱しきれない状況も多いと聞きますが、都心部では、昨年は堅調な状況に戻りつつあると感じています。柳川 店舗によって異なり、客単価は8,000 ~ 13,000円、稼動は2.2 ~4回転といったところ。客単価は微減ながら組数増で売上げを押し上げています。料金の値下げをしなくても、サービスタイムの延長、そして財布の紐が堅くなったお客様が時間にシビアになった、等々から延長売上げが減少し、客単価の低下につながっています。

――前年比増の要因は。
柳川 都心部のホテルの集客は、景況感に大きく左右されます。少し上向きになると繁華街自体にお客様が集まる。そのなかで、JHTグループのホテルの認知度と信頼が高まってきたことが大きいとみています。情報誌やネットでグループとしての宣伝に注力し、さらに5年前に「PASHA」を、昨年に「PASHA RESORT」を新規出店したことも、グループの認知度向上につながっていると思います。同一エリアで新規出店すれば自社競合にもなりますが、グループ全体の集客力にはプラス
の影響を及ぼしています。
 ただし、1店舗で悪い印象を与えると全体に波及してしまう。それだけに、お客様の印象を左右する、清掃と接客には各店舗でとくに力を注いでいます。そして、訴求力のある新しい商品をつねに探し出し無料貸出しに追加する、あるいはWi-Fiなどの新しい設備も順次追加していく。同時に、改装とは別に、ソファやクロスの張り替え、塗装の塗直しなどは、ほぼ3年周期で実施しています。これは重要です。このメンテを怠ると集客は加速度的に落ちてしまう。メンテ費を懸けて売上げをできるだけ維持する、メンテ費を節約し売上低下をまねく、数年後には両
者の売上げの差はとりかえしがつかないほど広がっています。

ピーク時に1室100万円が新規出店の判断基準

――同一エリアで全店舗とも高単価。独自の店舗展開ですが……。
柳川 自社で土地建物を所有し半永久的に自社で運営していく。これを前提にホテル事業に臨んでいます。
 そこで、新規出店の際に最重視するのが1室売上げです。目安はピークで1室1か月100万円を売れるかどうか。そして、事業収支で投資額が10 ~13年で回収できるかどうか。さらに、将来の資産価値を考え都心繁華街の近接地であること。この3つの条件がクリアできれば、投資額が大きくても新規出店に踏み切ります。この事業に携わって20年になりますが、この考え方は当初からまったくブレていません。

――その理由、背景は。
柳川 レジャーホテルは利益率の高い事業です。しかし、初期投資が大きく、中長期的にみれば維持費や修繕費がかなりかかる。さらに20年以上経過すれば設備・配管を含めた大規模改装が必要。その改装にかかる費用は、繁盛店か否かに関わらずどのホテルもそう差はなく、ほぼ同様かかります。
 そういった視点からみれば、例えば、同じ築年数で同じ購入額で、1軒は200坪/ 40室/1室売上50万円、もう1軒は100坪/ 20室/1室売上100万円、という2つのホテルがあれば、私が選択するのは後者です。
 総売上げは同じで、5~ 10年の事業計画にもそれほど違いはないはず。ただ、長期的に改装等も考慮すれば客室が2倍ならコストも2倍になってしまう。また、私は、売上げは5年で2割減少、10年で4割減少という見方で事業計画を立てます。100万円の売上なら10年後でも60万円、まだ余力があります。さらに、1室売上が高ければ利幅も大きく借入の返済も短期で済み、返済しながらキャッシュフローも得られます。

――単純な数の拡大は求めない……。
柳川 当社グループがこの10数年で投資した金額を考えると、新規出店した店舗数・客室数は極端に少ないといえます。新築が多く各店舗への初期投資額は大きい。でも実際に借入れは10~ 13年で返済し、新規出店のサポートになるキャッシュフローも得られている。金融機関からも良好な財務状態が評価され、それが、いい物件があれば新規出店に臨める背景にあります。 もう一つ、個人的な経営者としての資質の問題になりますが、私自身に、緻密な営業で難しい物件を再生させる経営能力はありません。それを自覚したうえでの事業戦略ともいえます。

――出店の際、ホテル自体において重視していることは。
柳川 やはり内装・インテリアの魅力は集客上、非常に重要です。同時に、長期的に所有・運営していくことが前提ですので、耐震や設備配管など目に見えない部分の耐久性も重視します。

今後、市場は縮小しても業態として衰退はしない

――2013年の業界全体の見通しは。
柳川 政権が交代し景気対策への期待感もあって株価も上昇。業界全体もこの数年の低迷から持ち直しの方向に向かうのではないかと思います。ただし、先行き不透明な部分は多く、それが持続するかどうかはわからない……。
 5~ 10年の中期的スパンでみれば、若者人口の減少や若者層のセックスレスの問題もあり、市場自体は縮小の方向に進むと思います。二極化もさらに進行し、ホテル売買や運営受託の動きも進むでしょう。ただ、店舗数は減少しても、業態として衰退はしないと思います。将来的に建物形状や営業形態が変わり立地が変わっても、この業態は存続していくと思います。

――そのなかで貴社の戦略は。
柳川 今年以降も、基本的に従来同様の取組み方です。都心繁華街で、1室100万円を売れる立地に10 ~ 13年で投資が回収できる物件が見つかれば、新規出店をしていく。これまで歌舞伎町内での展開でしたが、渋谷、池袋、上野、五反田など、他エリアでも前述の条件に合えば出店していきます。

――今後のホテル自体の内容は。
柳川 当社グループは、4号営業は1店舗で他は新法。4号店舗も全面改装時には4号を外す考えです。一つには、将来の事業承継において、4号営業では相続税の納税猶予制度が使えないこと。もう一つは、私自身、アダルトグッズや性的な設備等がなくても、高売上げは可能だと思っています。以前の4号店舗のような性的な設備・演出があると、逆にホテル側からお客様を限定してしまうことにもなりかねない。ですから今後も、カップルのお客様に「日常生活から少し離れた空間で素敵な時間を過ごせた。このホテルに来てよかった」と思っていただけるホ
テルづくりを推し進めていきます。そのために、清掃・接客・メンテナンスを確実に実施し、時代のニーズに合った設備・サービスを常に取り入れていく。これを続けていきます。