多店舗展開企業に聞く―― 2013年の経営戦略

1室1,000万の投資で売上げ40万~ 50万円が基準
直営とFCで積極的に店舗数を拡大

27歳で二代目として業界参入、今年で19年目を迎える。業界が低迷している中、店舗数を急激に拡大、現在、23店舗・計623室を経営。関西圏をベースにしていたものの昨年、2012年は関東(埼玉、行田・本庄)に2店舗をオープン。全国展開を図るべく、奔走しているPAGグループ、矢部嘉宏会長に今後の展開、経営戦略を聞いた。

2012年度の状況と「ラブホテル」の考え方

――新年を迎えたわけですが、2012年の結果と2013年の抱負をお聞かせ下さい。
矢部  2012年の売上げについては、 昨年オープンしたホテルもありますので、一律に対比することはできないのですが、ほとんどのホテルで良かったですね。とくに、後半の秋以降の売上げが良かったということです。
 私ども、PAGグループは関西圏をベースに活動してきました。従いまして、一昨年のいわゆる3・11の「東日本大震災」の影響というのは、なかったように思います。ですから、各ホテルとも昨対との数字は出せるのですが、この3年間で殆どのホテルで改装・リニューアルを行なったために、クローズしていた客室もあったわけですから、若干、意味合いも違ってくるのかな、とも思っております。しかし、各ホテルとも売上げは上がっています。
 さらに、昨年6月に埼玉の行田(通称・持田地区)と本庄(関越高速・本庄児玉IC)に出店しました。関西圏から出たこと、関東に出店したことは、私がこの業界に入って19年になるわけですが、初めてのことです。これも何かの縁でしょうね。

――全23店舗の中で、新法ホテルが6店舗……。
矢部 これらの、いわゆる新法ホテルは、兵庫県ということです。私としては、全て4号営業ホテルでやりたかったのですが、ご存知のように兵庫県ですから。ただ、地域全体が新法ホテルですと、お客様がフロントで従業員と顔を合わせるということの戸惑いというのは、ないですね。しかし、多くはないのですが大阪の私どもPAGの会員で、兵庫に行った場合、フロント受付で、まごつくようなことはあるようです。
 私は基本的には、4号営業ホテルですね。この種の、レジャーホテル・ラブホテルの根幹は、4号営業ホテルと思っております。他の人と顔を指すことなく、いつでも入れて、いつでも出られる。そして非日常空間、異日常空間。これが、ラブホテルです。この数年、どうでしょうか。4号と新法ホテルのデザイン的差がありますか? 4号の特性を活かした部屋創りデザインになっていますか? もちろん、所轄行政の指導もありますが、とても残念です。私のホテルの多くは、いわゆる郊外・田舎ですから、なおさらなのかも知れませんがね。
 それと、改装・リニューアルの状況をみると、どうでしょうか。10年以上も改装をしていないというホテルが、少なくはないように思います。それがために、ラブホテル特有のニオイ・汚れ。例えば、バスタブでも剥げているホテルもありますよね。各種タオル、ガウンのヨレヨレ。これで、お客様が来るでしょうか。楽しい空間になっているでしょうか。
 もちろん、改装後の意見もいろいろ耳にします。「改装しても全然お客様が増えない」「改装の意味がない」「改装資金がない」……。しかし、そうでしょうか。もし、改装もしないで現在の状況を続けるならば、客数は減ることはあっても、増えることはないでしょう。さらに、ホテルの劣化・老朽化が進めば、ホテルの不動産としての価値も失われ、ますます負のスパイラルになると思います。私のところは、長くても10年以内。通常は、売上げを確認しながら、6年から10年以内で改装するようにしています。

PAGの活動と業界の現状

――業界の現状と今後、そしてPAGは……。
矢部 二代目として、業界に参入してから19年目に入るということは、先ほど申し上げましたが、この数年、さまざまな相談が入ってくるようになりました。それまでは、直営のホテルだけでしたが、運営指導を依頼され、運営委託を頼まれ、投資家・金融機関に相談され、という具合に進んできましたら、店舗数が急増したわけです。昨年、オープンさせた埼玉の2店舗も、それらの例です。
 そこで、私の、PAGの基本的な「ラブホテル経営」の方程式的なものに触れてみたいと思います。私のホテルの多くは、言うなればB級・C級の立地です。郊外あるいは、田舎ともいえます。さらに、多くのホテルが集合している集積地ではなく、野中の一軒家が少なくないですね。これは、ラブホテル経営者の考え方からは、違うかもしれません。なぜなら、多くのラブホテルは集落を形成し、お客様の回遊を誘導するわけですから。ですから、私どものホテル立地は、B級・C級なわけです。もちろん、業界の歴史を認識していれば、集積地の意味合いも理解できます。例えば「出合い茶屋」「お手引き茶屋」の発祥は神社・仏閣周辺であり、ラブホテルは繁華街に隣接しているわけです。
 ところが、私が買収する、経営してみたくなるホテルは、業界でいうところの、1か月1室、40万~ 50万円の売上げが望めるか、否かということが基準になります。さらには、この売上げをつくる、ということです。これらのホテルを1室に付き、1,000万円で仕上げます。1室500万円の買収額とするならば、20室のホテルは1億円です。ここに1室500万円で改装します。1室300万円で買収したのならば、700万円の改装費を、700万円で買収ということなら、300万円の改装費ということです。どうあっても、20室のホテルならば、2億円以内で仕上げ、40万~ 50万円の売上げをつくる、ということです。
 この1か月1室40万~ 50万円の売上げという考え方ですが、私の考え方は異なります。私は、週で考えます。しかも、1か月を4週で計算し、1週の売上げを10万円とします。そうしますと、4週×7日で、1か月は28日になります。残りの2、3日は余分の日ということになります。
 また、なぜこのような買収額・経営が可能か、ということになりますと、大きくは二つの理由があります。
 一つは、先ほど「ニオイ・汚れ」のことを話しましたが、これらのホテルの多くは、30 ~ 40年前にオープンしたホテルが多いということです。いわゆる新風営法が施行されたのは1985年です。今から、ほぼ30年ほど前です。もっとも多くのホテルが建設された時代でもあるわけです。これらのホテルが、現在どうなっているかは、業界の方々はご存知でしょう。適時の改装・リニューアルを怠ったホテルは劣化し、老朽化しているわけです。したがって、不動産価値としても、評価は高くないということになります。
 もう一つの理由は、金利の問題です。加えて、返済期間の問題ともいえます。かつて金融機関は当業界に対して、融資の返済期間は、7年から10年以内が多かったと思いますが、今日では12年、15年、ある金融機関にいたっては20年という返済期間もあります。したがって、1室1,000万円で仕上げて、40万~ 50万円の売上げで可能ということになります。
(文責・湯本隆信)